第六話「縁結びの崩壊」
三連休「鹿」キャンペーン2日目開幕!
「探していますが、やはり範囲が広すぎます」
「うーん……鹿だけだとさすがに限界か……」
琴子は次の一手を打つ。
大きく息を吸うとそのまま大声で呼ぶ。
「すずめさあーーーーーーん!!!!」
ちなみにこれを人間が聞くとただの「きゅうーーーーーー!!!!」という鳴き声に聞こえる。
琴子の呼びかけで一斉に30羽ほどのすずめが集まる。
「すずめさんたち!神社のなでなでうさぎが失踪した。見つけたらすぐに知らせてほしいの!お願いします!」
「かしこまりました」
すずめたちは依頼を受けるとすぐさま四方八方に飛び立った。
「お願い……見つかって……」
琴子の願いも虚しく、3時間探してもまだ見つからなかった。
「ミコ様、やはりあの方たちにご依頼をするほかないのでは……」
「ミコ様、私もそう思います」
日和と葵が共に琴子を見つめる。
琴子は覚悟を決めた表情をすると、大声で呼んだ。
「狛犬たちよ!ここに集え!!!!」
そういうと、数秒もたたないうちに狛犬総勢20体が集まった。
なでなでうさぎは実態が主に魂、つまりその正体は精霊のようなもの。
それでは、と琴子は同じ精霊である狛犬に召集をかけた。
「狛犬さんたち、神社のなでなでうさぎがいなくなりました。一緒に探してほしいんです」
「仰せのままに、ミコ様」
狛犬たちは頭を下げてお辞儀をすると、一斉に各地域へと探しに行った。
「お願い、見つかって……」
しばらくして、狛犬の一体が琴子のもとへ戻ってきた。
「ミコ様、それらしきうさぎの精霊がおりました」
「ほんと?!」
「しかし帰りたくないの一点張りでして……」
「帰りたくない……?」
何があったというのか。琴子はそのなでなでうさぎがいる場所へと向かった。
琴子が到着するとそこには一羽のうさぎがいた。
白いふわふわの毛で覆われてぼわっと輝いている。
「なでなでうさぎさん……?」
「はい……?」
なでなでうさぎは琴子を見つけると、軽く会釈をする。
「ミコ様、恐れ入ります」
「なでなでうさぎさん、神社の神主様が困っているんだけど帰りませんか?」
「嫌です」
「どうして嫌なんですか?」
「だって……」
琴子はじっとなでなでうさぎの言葉に耳を傾ける。
「だって……、みんな可愛いとばかりいうから嫌なのです!!!!」
「は…?」
琴子は思わず口が悪くなった。
「僕は男です。なのにみんな可愛い、可愛いばかり。僕はかっこいいと言われたいんです!!」
「ええ…………」
琴子は思わずあっけにとられた。
まさか失踪の理由が「かっこいいと言われたかったから」とは思わなかった。
「でも実際、なでなでうさぎさん可愛いし……」
「もうこりごりなんです!!可愛いは!!僕はかっこいいとみんなに言われたい!!」
琴子はどうしようかと考えたが、どうにもいい解決案が思いつかなかった。
「そこをなんとか、戻っていただくわけには……」
「嫌です!!もう我慢の限界がきました!!僕は帰りません!!」
「困りましたね、ミコ様」
「このままでは神主様の願いを聞き届けられません……」
「うん……」
すると、琴子たちの近くで女子高生の声がした。
「もう!ほんまになんなん?!いつもいつもノート貸して貸してって、自分で書けばいいやん!」
「だから、書いてても聞き逃しちゃうねんって!別にいいやん減るもんじゃないし!!」
「その言い方と態度がまた腹立つねん!!」
よく回りを見渡すと女子高生だけではなく、若い男女のカップルも喧嘩をしていた。
「もう!さっき通った女の子じろじろみてたやろ!」
「見てないって!!誤解やってゆったやん!!」
「嘘つき!もう知らん!!」
縁結びのご利益が解けかけているためか、町の人々の仲が悪くなっていた。
琴子はまずいと悟りながらもこの事態にどうすることもできないでいた―
明日で完結!!