第五話「なでなでうさぎの失踪」
三連休「鹿」キャンペーン開幕です!!!!
普通の女子高生「神崎琴子」は交通事故でこの世を去った。
転生先はなんと鹿だった。
だが、町では鹿は「神獣」として敬われており、琴子は神獣の中でも最高位の「ミコ」に転生していた。
ミコは唯一の人語を理解できる存在であり、かつ自然と会話することのできる存在だった。
これは、琴子がミコとして人間の願いを叶える物語―
「……コ様……ミコ様……」
琴子の耳に何かを呼ぶ声がする。
その声は次第に大きくなる。
「ミコ様っ!」
「っ!」
日和の声に琴子は飛び起きた。
「ミコ様、もうお昼でございます」
「ほえ……??」
琴子は呆けた顔で日和を見るがまだ焦点が定まらない。
「ミコ様……そろそろ起きてくださいませ。人間の方が朝からお願いに来ておいででしたよ」
「ほわ~……う~ん……おはよ~」
大きなあくびと伸びをすると琴子は日和に挨拶をする。
「おはようございます、ミコ様」
「なんてお願いしてた~?」
「それは私たちにはわかりかねます。ミコ様に聞いていただかないと」
琴子は起き上がり、着替えを済ませていう。
「でも、朝来てたんならもうお願い聞けなくない?」
なんとも無責任に琴子が言う。
「大丈夫です」
後ろのほうから葵が返事をする。
「え?」
「きちんとその様子を録画しておりますので」
録画デッキとリモコンを持って葵が言う。
「へ、へえ~」
(なんてハイテクな神社……)
琴子は心の中で思いながら、再生される録画画面を見つめる。
画面の中にはどこかの神主のような人間が映っていた。
「ミコ様。どうかお願いです。盗まれたなでなでうさぎを見つけて神社にお戻しください。お願いいたします」
神主らしき人間はそのように願うと貢物を置いて去っていった。
「これは、町の北にある神社の神主様ですね」
日和が願いを言いに来た人間の情報を言う。
「北にある神社か、なでなでうさぎって?」
「なでなでうさぎは縁結びのご利益がある神社のおすすめスポットの一つです」
「縁結びのご利益か……それが盗まれたのか」
「そうみたいですね」
「よし、とりあえずその現場に行ってみるか」
「かしこまりました、私たちもお供いたします」
こうして、盗まれたなでなでうさぎがある神社にいくことになった。
神社―
「なでなでうさぎの場所は……」
鹿に変身して神社の境内を散策する。
神獣となると、皆見かけるたびにお辞儀をして道をあけてくれる。
やがて、なでなでうさぎのスポットらしきものがある場所にやってきた。
赤い座布団と台座はあるが、なでなでうさぎは確かにそこにはいない。
「確かになでなでうさぎいないね……」
すると、琴子が何かを見つけた。
「これ……なんだろう」
鹿の前足で台座の上にある紙切れを取る。
「ミコ様?どうなさいました?」
「え?この紙切れなんだろうと思って」
そういって紙切れを日和と葵に見せるが、二人には見えていない様子だった。
「見えてるの……私だけ……?」
「はい」
「はい」
声を揃えて日和と葵が言う。
「え……何それ、こわ……」
恐る恐る紙切れを見るとなにやら文字が書かれていた。
『さがさないでください』
「さがさないでくださいだって。……あれ?じゃあ盗まれたんじゃなくて自分で出て行ったの?」
「そのようですね」
琴子はしばらく考えた後、宣言した。
「よおし!とりあえず、神主さんも困ってるし、なんで出て行ったのか探して聞いてみよう」
「かしこまりました」
すると、琴子は得意げに葵に向かって言う。
「葵!いつもの!!」
「かしこまりました」
そういうと葵は指笛を鳴らした。
しばらくして、一頭の鹿がやってくる。
「今日も探してほしい人がいるんだけど……」
「かしこまりました。本日はどのようなお方を探せばよろしいでしょうか」
「この神社のなでなでうさぎを探してほしいの、姿は……うさぎになってるのかな?とにかくうさぎさんを探してほしいの!」
「仰せのままに」
そういうと、一頭の鹿は神社の境内を去っていった。
「よおし!私たちも探すよ!」
「かしこまりました」
「かしこまりました」
琴子は胸を張って叫んだ。
「なでなでうさぎ捜索活動、開始!!」
こうして、なでなでうさぎ探しは幕を開けた―
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明日もお楽しみに(*^^*)
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