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第二話「ミコ」

(どうしよう……! え……私、鹿に転生したの?! 鹿……?! 鹿ってどう生活するの?)


戸惑う琴子のもとに二頭の鹿が近づいてきた。


(え……なんか近づいてきた! な、なに? 挨拶したほうがいいの? 鹿って何語なの?? 鹿語?? え? え?)


琴子がどぎまぎしているうちに二頭が琴子の目の前に来た。

琴子は迷った挙句、自分の中の鹿のイメージで挨拶してみた。



「ぴ、ぴいー……」




二頭からは返事がない。


(やっぱりダメ? 挨拶間違った?)


すると、思いもよらない言葉が二頭から返ってきた。


「ミコ様、どうなさったのですか?」

「頭でも打ったのですか?」



(…………普通に人語喋ったあああああああーーーー!!!!)


二頭は呆れたように琴子に話しかけると、言葉を続けた。


やしろへご案内いたします」

「私たちについてきてくださいませ」


そういうと二頭は踵を返して歩いていった。


(え? ついていったらいいの……?)


琴子はひとまず、二頭の鹿についていくことにした。




――――――――――――――――――――――


森の奥深くを抜け、階段を上った先に古めいた神社があった。

そこで二頭の鹿は白い煙を出した。


(え?なに……?)


琴子がわけもわからずながめていると白い煙の中から男の子と女の子が現れた。


「え?! 人?! あ…人語私も喋れた……」


そこには10歳ほどの小さな男の子と女の子が和服を着て立っていた。

人に見えるがよく見ると、頭の上に獣のような尖った大きな耳が生えている。


「み……み……? 人じゃない……?」

「ミコ様、あなたも早く本来の姿におなりくださいませ」

「本来の姿……?」


琴子はその二人のいう「本来の姿」がわからず、戸惑う。

だが、琴子は直感だけは優れており、二人のような姿になればいいのだと瞬時に理解した。


そう思い、なんとなくイメージして力を込めてみる。


(人型になれ……人型になれ……人型になれ……)


そうイメージした瞬間、琴子は白い煙に包まれ、馴染みのある人型へと変化していた。


「ああ! できたあー!!」


だが、やはり人型であり、人ではなかった。

耳が二人と同じように頭上にあり、ぴくぴくと動かすことができる。

手をひらひらと動かしてみたると袖の長い、巫女装束のようなものを着ていた。


「さあ、中にお入りください」


二人に誘われて、琴子は社の中へと歩みを進める。



社の中に入ると手慣れた手つきで二人のうちの一人がろうそくに火を灯す。


「私は日和ひより、こちらはあおいでございます。これからミコ様のお世話をさせていただきます」


そういうと深々と二人は琴子に向かいお辞儀をした。


「今代のミコ様はあなた様となりました。あなた様にはこちらで神獣の象徴として町を見守っていただきます」

「しん……じゅう……?」

「この町『ナラ』では鹿が神獣として敬われております。あなた様はその最高位、ミコ様でございます」

「ミコ……様?」


琴子は頭がパンクしていた。この町では鹿が敬われるだけでなく自分は最高位ミコ、つまり偉い人らしい。


「ミコ様は人語を理解できる唯一の存在でございます」

「え……でも今普通に話しているけど……」

「それはミコ様が私たちの言葉を理解なさってお話されているだけでございます」

「え……そうなの……?」


琴子が二人と話している今、人間にはただの鳴き声にしか聞こえていないというわけだ。


「あの……具体的には何をすれば……」

「人間の皆様が定期的にミコ様に貢物を持ってこられます。代わりにミコ様には人間の願いを聞き届け、それを叶えていただきます」

「願いを叶える……どんな願いがあるの?」

「行方不明のペットのトカゲが帰ってくるように。や、失くした鍵が見つかるように、などでしょうか」

「え、それどうやって叶えるの?」

「ミコ様にはあらゆる自然と会話するお力がございます。それを駆使し、人間の願いを叶えてくださいませ」

「え……私そんな力あんの?」

「はい」



(最高位のミコ、めっちゃすごいじゃん……)


こうして琴子のミコとしての生活が始まった―─

読んでいただきありがとうございます<m(__)m>

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