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第九話 金魚すくい大会~中編~

「どうしよう、明日?!」

「ええ、明日でございます」

「それに優勝させるってどうやってっ!!?」

「それはミコ様のご采配次第でございます」

「ああー!! そうやって責任逃れしようとしてるでしょー!!」

「いいえ、私たちはミコ様の仰せのままに動きますので」

「ずるい~!!!」


 ミコである琴子が床をごろんごろんと転がって駄々をこねる。

 まるで子供のような仕草をみせるその様子に日和と葵が顔を見合わせて、ちいさなため息をついた。


「では、こういうのはどうでしょうか」


 根負けした日和が琴子にある提案をしようとすると、待ってましたといわんばかりにニコニコ顔で座って日和を見つめる。


「こほん、葵がその子に金魚すくいの極意を指南するというのはいかがでしょうか?」

「ああ! それいい! 葵、優勝狙いに行くくらいだったんだから強いんだよね? 2位とか?!」

「……いです」

「え?」

「3位です!!!」

「ご、ごめんなさい!!」


 傷をえぐることを言ってしまった琴子は猛省し、しばらく黙って日和の言うことに耳を傾けることにした。


「まずはその子の実力次第でもありますが、さすがに何か不正を手伝うわけにはまいりません。ですので、ここは明日までにその子の実力を上げることに注力しましょう」

「そうですね、その子がどれぐらい掬えるのかにもよりますし」

「では、ミコ様。女の子のところへまいりましょうか」

「う、うん!!」


 こうして三人は神社に参拝にきた女の子のところへ向かった。




◇◆◇




 女の子の家は大層立派な門構えで、石畳の奥にはそれはもう地主かというほど大きな家があった。

 琴子は都会育ちであったため、昔ながらの日本家屋でさらにここまで大きな家を見たことがなく腰が引けてしまう。

 そして、神社にきた女の子は一人で庭にある池で泳ぐ金魚で、金魚すくいの練習をしていた。


「あのさ、日和、葵」

「はい、ミコ様」

「誰かな、女の子に『極意を指南する』なんて大それたこと考えたの」

「申し訳ございません、彼女がここまでの実力とは」


 琴子たちは家の壁からこっそりと覗いて女の子の様子を見ていたが、なんと女の子は目にもとまらぬ速さで金魚を掬っていく。

 なんと彼女は3秒に1匹の速さで掬って器に入れている。


「私、金魚すくい大会舐めてたわ。このレベルなの?」

「確かに素晴らしい実力ですが、優勝は確かに難しいラインかもしれません」

「え? これで?」

「はい」


 すると、急に女の子の手が止まり、こちらを見る。


(ば、ばれた! というかこの状況は完全に不審者?!)


 女の子は顔をこわばらせて警戒すると、ゆっくりと逃げる態勢になる。

 まずいと思った琴子は咄嗟に声を出した。


「ごめんなさい! あまりにあなたの金魚すくいがうますぎて、つい見入ってしまったの!」

「……」

「よかったら、コツ教えてもらえないかな?」

「……」


 女の子は琴子の言葉にこくりと頷いたあと、入っていいよと言って琴子たちを招き入れる。

 風が強いため、耳を隠している帽子が飛ばないように手で押さえながら琴子は家の中に入った。


「すごいね、そんなに掬って」

「すごくないよ。こんなんじゃ優勝できない」

「優勝したいの?」

「うん」

「まさか、景品は高級マスカットじゃ……」

「葵は黙ってて!」


 その様子にふふっと笑う女の子。

 よくみたら何ら特別な子でない、普通の小学生の女の子。

 水色のTシャツに短めのスカート、手首にはビーズで作ったのかカラフルなブレスレットがつけられている。


「可愛いね、このブレスレット」

「うん……」

「どうしました?」


 日和が目の前で急に落ち込む姿を見せる女の子に声をかける。

 すると、ゆっくりと女の子は口を開いた。


「引っ越しちゃうの」

「え?」

「金魚すくい大会の次の日、これくれた友達引っ越しちゃう。だから、その友達と一緒のチームで出れる最後の大会」


(そういうことか……。この子は個人戦で勝ちたかったんじゃない、団体戦で一緒に勝ちたい子がいたんだ)


 琴子は女の子の目線に合わせるように屈むと、顔を覗き込んで優しい顔で言う。


「そのお友達もきっと君と同じで一緒に勝ちたいって思ってると思う。でも、それよりも一緒に出て楽しむことも大事にしてみたらどうかな?」

「楽しむ?」

「うん、ちゃんと最後に一緒に闘えることを楽しんでみてごらん。素敵な思い出になると思う」

「……うん」



 そういって琴子は女の子のもとを去って神社へと戻る。


「ミコ様、あれでよかったのですか?」

「うん、あれは私があれ以上何かできることはないよ。あの子が考えてあの子ががんばるしかない。それを明日私たちは見守ろう」

「はい」


 神社へと帰る道の途中で、お寺の塔の陰にゆっくりと日が沈んでいくのが見えた──

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


【一言おはなしコーナー】

葵はどうしてもマスカットが食べたいようです・・・(笑)



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