第一話「転生したら鹿だった」
●お知らせ●
2024年3月29日(金)小学館「それいゆ文庫」様より
こちらの作品を原案とした書籍が発売されます。
書籍版タイトルは『あなたの願いを叶えます ~神獣琴子のよきかな成長譚~』です!
ほぼ書き下ろし&新キャラ登場となっておりますので、
ぜひよろしくお願いいたします!
神崎琴子はある日交通事故で死んだ。
道路に落としたスマホを拾おうと後先考えずに道路に突っ込んでいってしまったのだ。
当然、そこに来たトラックに轢かれ、彼女は17歳の生涯を閉じた―─
次に目覚めると彼女は広くのどかな芝生の上に立っていた。
(あれ……私、トラックに轢かれて……それで……)
彼女ははっきりと自分が死んだことを覚えていた。
死ぬ前にまばゆい光に包まれ、衝撃とともに視界がぐるぐると回り、そこで琴子の記憶は途絶えている。
(私……記憶あるまま次の生に移っちゃったの?)
だが、琴子には今の世界での記憶は全くなかった。
とりあえず彼女は何か自分に関わる情報がないか歩いてみる。
やがて、何かの物体が奥から見えてきた。
それは同じ背丈くらいの獣のような何かで、琴子はゆっくり歩みを進めてみる。
(なんだろう、あの獣? あと、なんか歩くとき違和感あるんだけど、なんだろう……)
そして近づくにつれ、その獣が何かを琴子は理解した。
(鹿だ!)
琴子は鹿を目の前で見るのは初めてだった。
触ってみたい衝動に駆られ、逃げないでと心の中で唱えながら近づく。
(あれ……全然逃げないな……鹿って警戒心ないのかな)
いとも簡単に近づくことができた琴子は念願の鹿初タッチをしようとした。
いや、正しくは出したのだがその手に琴子は困惑した。
(え……私の手……動物の足……?)
しかもよく見ると目の前の鹿と同じような見た目をしているではないか。
(え……着ぐるみ?)
そこで琴子は気づいた。
自分の手が、正確には手足が全部地面につき四足歩行をしているということに。
(え!!!! なにこれ!!!! どうなってんの私!!!!)
驚くべきことに顔を動かさずとも視界が広く後ろのほうまで見える。
(めっちゃ見える……なんで……)
そして琴子は自分の下にあった水たまりに映った自分をみて驚愕した。
(私、鹿になってるーーーーーーーーーー!!!!!!!!)
琴子は鹿に転生していた―─
読んでいただきましてありがとうございます<m(__)m>