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ぬいばな 【現在進行中の話は☞episode3☆ぬいと、歌ってみた】  作者: しばしば
episode3☆ぬいと、歌ってみた
43/51

3-p10 ガチャと石とぬい (1)

 明日は部活のない土曜日だ。

 今日は夜更かしできる。

 ヒデアキはスマホを取り、


「それでは……」


と居住まいを正した。


「ガチャの時間です」


 レコステのアプリを起動する。

 画面上部の片隅に、「ジェムストーン」──通称「石」の数が表示されている。

 戦闘や育成の「ミッション」を通じて石を貯め、30個集めると仲間になるキャラクターカードを排出する「ガチャ」が1回実行できる。


 「ガチャ」で出たキャラクターは戦闘に参加できるようになる。

 10回まとめて「10連ガチャ」をすると強いキャラクターカードを得られる確率が格段に上がる。

 なので1回ずつよりも「石300個を貯めて10連ガチャ」という手段を取るプレーヤーが大多数だった。


 碧生(あおい)はヒデアキの肩に乗ってガチャをしっかり見守る体勢である。

 ヒデアキの石の数を見て、


「80連分か。まあ、ギリギリいけそうだな」


と評した。


「新シナリオのガチャで、かなり使っちゃったからなあ」


とヒデアキは難しい顔をした。


 レコステのキャラは16人。

 同一のキャラクターでも「衣装違い」が現在それぞれ10種類ほど、それぞれ違うカードになっており、強さに差がある。

 今、1週間限定でガチャからピックアップできる「バースデー松神(まつがみ)碧生(あおい)」は、パーティースーツを着て頭に小さな王冠を乗せた格好で、「スーパースペシャルレア」略して「SSR」というランクに設定されているカードだ。育成すれば全キャラの中でも屈指の強さになる。


 一方で、ヒデアキが既に所持している中で「日常・松神碧生」はTシャツにパーカーの、いかにも普段着。また、「トレーニング・松神碧生」はジャージ姿。

 これらは「レア」を意味する「R」のランクのカードで、全パラメーターを最大まで育成してもあまり強くはならない。

 レコステでは「R」が一番下のランクだ。「レアというより、レギュラーなのでは」とヒデアキは常々感じているのだが、一般的なソシャゲ用語に準拠すると、そういうことになるらしい。


 それとは別に「研究室・松神碧生」という白衣姿のバージョンも持っていて、これは「スーパーレア」=「SR」のカード。


 手持ちで言えば、少し前にガチャでゲットした「ハードミッション・松神碧生」が「SSR」だ。カジノに潜入するフォーマルな装いである。これはメインシナリオに関係したキャラカードだから、バースデーのような期間限定でなく恒常的にガチャで引ける。実装されてしばらくは「ピックアップキャンペーン」があって排出率が上がっていた。


 その他にもまだ未取得の、過去に期間限定だった松神碧生のカードが複数種類ある。二度と手に入らないかといえばそうでもなく、時々「復刻ガチャ」が開催されたら、運が良ければそこでピックアップできる。


 ヒデアキの所有カードは、ガチャを頑張った千景と碧生以外はSSRはいない。他はSRで戦闘に臨むことになる。

 メインシナリオの戦闘はハードル低めになっていてSRで勝てるが、日々の育成タスク「シミュレーション」では、一番簡単な「Normal」では確実に勝利ポイントを稼げても、中間難易度の「Hard」での勝率は6~7割程度だった。


 全カードに「ミニストーリー」が付いているからそれ目当てで、戦闘に出さないRのカードも集めているプレイヤーが多くいた。




 千景(ちかげ)がソファの背もたれの上で、


「まずは、俺のガチャ動画を見て気分を高めろ」


と壁に自分のスマホ画面を投影した。

 突如始まったガチャ動画にヒデアキは思わず注目する。

 キランキランしたサウンドエフェクトが何度も鳴り響き、色々なキャラのイラストが次々にポップアップした。

 その中に「バースデー碧生」のイラストがあった。今回のピックアップ目標のカードである。


「10連で2回も。千景君、すごいラッキーだったんじゃないの!?」


 ヒデアキの反応に、千景は満足げだ。


「このあとまた2回来て、無課金100連で完凸(かんとつ)だ。課金しそびれちまったなあ~。まあ、祝儀のつもりで後から石買ったけどな」


 完凸(かんとつ)というのは、「完全突破」を表すネット用語。

 SSRを含む全てのキャラカードは、重複すると「限界突破」で更にパラメーターを上げて強化できるようになる。この「限界突破」にも限界があって、レコステでは4回が限度。そこに達すると「完全突破」の完凸(かんとつ)となる。

 千景は速やかにバースデー碧生を完凸した上、育成アイテムによって全てのパラメーターを最大値まで上げていた。


「碧生君は?」


とヒデアキは肩にいる碧生に尋ねた。


「おれは、100連で2。あとはアイテム使って完凸した。来週は兄さんのバースデーガチャがあるから、課金はその時まで温存する」

「そうだ、千景君の誕生日の石も要るんだった……」


 ショックを受けているヒデアキの肩を、


「心配すんな。金ならある」


と千景が力強く叩いた。


「それより、碧生を早速サポートに設定したからな。ヒデアキも使えよ」


 千景は最強になったバースデー碧生を即座に「フレンドサポート」に設定していた。こうしておくと、「フレンド」として登録しているプレーヤーだけでなく、ランダムで選ばれた見知らぬプレーヤーの戦闘サポート候補欄に表示される。選ばれると「コイン」が手に入る。


「結構使ってもらってる感じだ」


と獲得したコインの数を見て、千景は得意げだ。

 ガチャ初日の昨日から「バースデー碧生」でサポート候補欄に現れるプレーヤーが増えた。ガチャ結果を自慢したい気持ちはみんな同じだ。しかし完全凸に到達した人はほとんどいない。

 誰よりも早くバースデー碧生を完凸かつカンストさせた千景。みんなその熱意に心打たれたことだろう。

 さらに、


「このガチャ動画、記念にユーチューブにアップしたぜ」


 と千景。彼のSNS活動は、レコステ関連の投稿に「いいね」で応援する目的で、ツイッター鍵付きアカウント「観」というのを持っている。

 鍵だから自分からツイッターの発信はしておらず、その代わり気が向くとユーチューブで雑多な動画を世界に向けて放流していた。




 ついに、ヒデアキが「10連」のボタンを押す緊張の瞬間が訪れた。

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