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ぬいばな 【現在進行中の話は☞episode3☆ぬいと、歌ってみた】  作者: しばしば
episode2☆ぬいと鍵付きアカウント
25/51

2-p13 わたあめを作るぬい

【9月9日】


「わたあめを作ろう」という話になった。

 ネットの匿名メッセージ送信システムではなく、レコステのゲームの白虎でもなく、菓子のわたあめのことだ。


「小学校の頃、キャンプでわたあめ作ったことあるよ。(ちゃ)()し回すとブワって出てくる」


というヒデアキの何気ない思い出話に、千景(ちかげ)碧生(あおい)が触発された。

 ネットで調べてみると、「お家でかんたん、わたあめ製造機の作り方」みたいな記事がいくつか出ていた。




 部活を終えて学校から帰ると、既に道具は揃えられて準備は整っていた。

 夜ごはんのあと、わたあめ制作タイムに突入した。

 ヒデアキはツイート用の写真撮影係だ。4コママンガ風にする予定で、マシンを工作するところからぬいの姿を捉える。

 マシン部分の材料は、100均のハンドミキサーと、柄のない茶漉しと、ねじとか針金とかテープとかコマゴマしたもの。

 わたあめの素材はざらめ砂糖が基本だが、


「アメでもいけるだろ。これ使ってみようぜ」


と千景がいつも投げつけてくるアメ玉を供出した。

 ぬいたちはお揃いの白衣を着て工作を始めた。

 茶漉しの真ん中に穴を開け、ネジとボルトを通し、広い口の面を下にして置く。茶漉しのドーム形状のてっぺんからネジが出ている状態になる。そのネジを、虫ゴムのチューブの中に差し込む。

 次に手に取るのはハンドミキサー。

 先っちょをペンチで切って、虫ゴムの、茶漉しのネジと反対側に差し込む。

 これでハンドミキサーと茶漉しが繋がった形になる。虫ゴムがとれないように、ビニールテープでグルグル巻きにする。


「すごい。サクサク進むねえ」


とヒデアキは手際の良さに感心した。

 ひよこサイズの体より大きな工具を、千景と碧生は協力しあって器用に操っている。


「工作は慣れてるからな」


と千景。

 茶漉しにアルミ箔で作った皿を取り付け、落ちないようにフチを曲げてしっかり固定する。ハンドミキサーの先に半球が付いた形だ。

 茶漉しの網目を少し切って穴をあけ、青いアメを砕いて入れた。

 アルミ箔の皿の面をフライパンに置き、熱してアメを溶かす。これはぬいでなくヒデアキの担当。


「これ、ブルーベリーだ。ソーダ味と思ってた」


と気付いた。甘いにおいが立ちのぼっている。

 ぬいたちは空飛ぶタオルに乗って、アメが溶けるのを面白そうに見守っている。


「兄さん。おれ、白いのも作りたい。ざらめでできるか?」

「普通のざらめもあるから、次それやってみような」


 青いアメがいい感じに溶けた。

 すぐ横に、飛散防止の段ボールの囲いがある。

 その中で「わたあめ製造機」と割箸を操作するのは父の役目になった。

 ヒデアキが1人で撮影しながらわたあめを作るのは手が足りないのだ。

 ぬいは汚れ防止で透明ビニール袋に入って、段ボールの壁の上から顔を覗かせ「わたあめ製造機」を見下ろす。


「スイッチオン!」


 千景の合図でハンドミキサーが回転を始める。

 網目の間から水色の雲みたいになった砂糖が少しずつ吹き出てくる。


「やった! 成功だ」


とヒデアキは目を見開いた。

 昔一度経験したことではあるが、こういうのはやっぱり気分が高揚する。水色というのも好きな雰囲気だ。

 手伝いの父も嬉しそうだ。


「すごいね。ホントにわたあめ、できてる」

「でもちょっとずつしかできないんだよなー、これが」


 千景は動画を見て難しさを知っているので、わたあめを搔き集める割箸の動きを見て苦笑している。




 2回目は、碧生の希望に従って白いわたあめを作った。


「さっきよりうまくいったんじゃない?」


とヒデアキはできたてを千切って味見してみた。


「おいしい。安心感のある味だ」

「ブルーベーリーも良かったよ、洒落てて」


というのが父の意見。

 碧生がビニールを被ったまま、すすす……と寄ってきた。


「白いの、貰ってもいいか? 作りたいものがある」


 碧生が小さいトングでわたあめを千切ったり繋げたりして、小さいネコの形にしていた。

 レコステのゲーム内で千景の飼っていた、白虎「わたあめ」を模しているのだ。

 仕上げに最初に作った水色のわたあめを少しだけ取って、目になる部分に付けた。


「できた。わたあめ」

「雪ダルマみたいだ」

「わたあめダルマだな」


 千景も近寄ってきて、自分の小さいスマホでわたあめを撮っている。

 ヒデアキはシャッターボタンを押す。

 藍色の大きな皿の上、白と水色のわたあめが雪のように積もっている。

 写真の真ん中には千景と碧生と、白いネコ。


「文字も作ろう。足りるか」


 碧生がまた小さなトングを動かし始める。


「僕も手伝う。何て書くの?」

「『メッセージありがとう』って」


 ネットの匿名メッセージ送信システム「わたあめ」で声をかけてくれた人に、わたあめの文字でお礼を言う。

 碧生は、


「ん? なんかダジャレみたいになってるか?」


と顔をしかめた。




 苦労して選んだ4枚は、「白衣でマシンを工作するぬい」「ニンゲンが作るわたあめを覗くぬい」「ネコ……じゃなかった白虎を造形するぬい」「わたあめ文字の横で白虎と一緒にカメラを見上げるぬい」

 ツイートしたところ、お礼を言うべき人たちからの反応も上々だった。







【9月10日】


 朝。

 ヒデアキがツイッターの様子を見ようとアプリを開いてみたら、プロモーションでレコステのムービーが流れてきていた。


 ♪ほしの〜ひかり~とどかないばしょ~に……


 千景と碧生が時々歌っている鼻歌だ。

 碧生が横から覗き込んできた。


「ヒデアキ。昨日の返事は、おれと兄さんで送っておく。学校で考えなくても大丈夫だぞ」

「ありがと。レコステ、新しいシナリオが出るんだね」

「うん。久しぶりに話が進む」


 碧生の声に少し寂しさが滲んでいる。

 きっとヒデアキと同じことを考えている。


(お母さんと一緒に見たかったな……)


 母の部屋を覗くと相変わらず父はそこに入り浸っていた。

 祭壇に手を合わせて、ヒデアキは学校に向かっていった。

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