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ぬいばな 【現在進行中の話は☞episode3☆ぬいと、歌ってみた】  作者: しばしば
episode2☆ぬいと鍵付きアカウント
19/51

2-p07 ネタバレを防ぐぬい

 祭壇には既にお茶とご飯が供えられていた。

 ヒデアキは目を閉じて手を合わせたあと、ダイニングキッチンですきやき丼を口にしながらテレビを眺める。

 母の席には陰膳(かげぜん)があった。

 1日秋晴れのよい天気になりそうです、とテレビの中から気象予報士が告げている。

 今日は、学校に行く。他のみんなより少し遅い二学期の始まりだ。

 碧生(あおい)が空飛ぶタオルを使って弁当を食卓に持ってきた。


「アヤトと一緒に作った」


 弁当は既に布のランチボックス入れに収まっている。


「ありがとー。写真撮った?」

「普通の弁当だぞ。撮らない」

「今撮っとこうかな」


 ヒデアキは弁当箱入れに手を伸ばしたけど、千景(ちかげ)が寄ってきて、


「ネタバレしていいのか?」


 なんて言うから考えを改めた。


「教室で『開封の儀』をしよう」




***




 (準備完了)

 心の中で呟いて通学リュックを背負った。

 今日は父が仕事の行きがけついでに、車で学校まで送ってくれることになっていた。

 コーイチローがもうすぐオートロックのチャイムを鳴らす頃だ。

 父が忙しい足取りで部屋から洗面所へ移動しながら呼びかける。


「ヒデくん、先に降りてて」

「うん」


 言われた通りに玄関まで行って、


「……あれ」


 なんだか、違和感。

 静かだ。

 ぬいたちがいない。

 いや、夏休み前はこれが普通だったんだけど。


 (もしかして……)


 背負っていた通学リュックを下ろしてファスナーを開けると……

 案の定。

 千景と碧生と空飛ぶタオルが入っていた。

 碧生は学校の制服にリュック。千景は白衣を羽織って小さなアタッシュケースを持っている。

 同じ形をしたジト目がヒデアキの方を向いていた。

 しばしの沈黙。

 ヒデアキは唖然としたまま声を失っていた。


「何してんだ。閉めろ。ロビーに行け」


と千景が促す。


「い、一緒に行く気だ?」

「当たり前だろ」

「ダメだよ! 学校だよ?」

「なんでだよ」


 千景と、黙ったままの碧生が同じタイミングで瞬きした。

 おとなしい碧生はともかく、千景は好き放題するに決まってる。絶対勝手に色んな教室に行く。

 夏休に忍び込んた時と違って今日はかなりの数の生徒がいるんだから、こんな不思議な生き物がウロウロしてたら見つかる可能性が高い。

 大騒ぎになったら……今みたいに一緒に暮らせなくなるかもしれない。

 ぴんぽーん、と呼び出し音が鳴った。


「コウちゃんだ」


 ヒデアキは呟いてオートロックの画面をオンにする。


「おはよー! ロビーで待ってて。すぐ行く」

「あいあいー」


 コーイチローが応えて解錠された自動ドアをくぐるのがモニターの中に見えた。

 ヒデアキはリュックに向き直る。ぬい兄弟は出て行く様子がない。


「2人は留守番! 江崎先生に見つかったら解剖される!」


 野球部顧問の江崎先生は、いい人だけどマッドサイエンティストだ。


「そいつはヤバいな」

「でしょ。心配で授業とか受けれないから」

「いや、でも俺たちは慣れてるから。見られても捕まったりしねーって」


 千景がまだ食い下がるので、ヒデアキは仕方なく千景と碧生を片手で一人ずつ持って摘まみ出した。


「うわっ! お前、横暴だな」


 ピュンピュンとアメが飛んできて額に当たった。


「あーもう! そんなの投げたって連れて行かないから!」


 ヒデアキはぬい2人を床に降ろすと慌ててリュックを取り上げて、


「あ、タオル……」


 空飛ぶタオルは返してやった。


「お待たせお待たせ。送ってくよ~」


と父がスーツを着て出てきた。

 シンタローが部屋から顔を覗かせた。


「父さん、家の鍵忘れンなよ。オレももうすぐ出るから。帰ってきたらいねーぞ」


 それから、床にチョンっと立っているぬいに目線を移した。


「あれ。ぬいは行かねえの?」

「摘まみ出された」


と千景が被害者ヅラでヒデアキを指差した。


「行かない! 学校は怖いところだよ!」


とヒデアキは凄んだが、


「へー。おもしろそー」


 千景はププッと笑っている。

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