二話 互いの過去
「皇の七守護って…………えぇ!!?」
その大声に、木々に潜む鳥たちがざわめく。
「うるさい。それ以上騒げば魔獣が寄ってくるぞ」
「す、すみません…………でも、本当に……?」
「信じないのならそれでいいが」
「そんなこと言わないでくださいよ! 信じてます! 私が魔法学院にいた頃に、皇の七守護から追放された剣士がいるって騒ぎになってましたもん! あの強さを見れば納得です! ……でも、なんで追放なんか?」
「方向性の違い、だそうだ。元々皇女に好かれていなかったからな。少し文句を言って、任務を放棄したらすぐに追い出されたよ」
「……それはライさんが悪いのでは?」
そう言われると言い返せない。
……が、俺は今でも間違ったことはしていないと思っている。
「魔法学院に通っていたのなら知っているだろう。メルエット王国は格差が酷すぎる。俺は貧乏出身だったから、尚更な」
「だから歯向かったと……なるほどなるほど」
「簡単に話せばそういうことだ。それで、お前の話を聞いておきたい」
「え、私ですか。私なんてそんな話すことなんてなにも」
明らかに様子がおかしい。
「何の用があって、この深淵の森にまで入ってきた。ここの魔獣の強さとお前の強さが比例していなさすぎる。何か用があったと考えるのが普通だ」
「……どうしても、言わないといけないですか?」
「なら俺は帰らせてもらう」
そう言って身体を反転させて帰ろうとすると、
「分かりました! 分かりましたから帰らないで!」
と、マキナは俺を全力で引き留めにきた。
「単刀直入に言います。__私と一緒に戦ってくれませんか」
「単刀直入すぎる。もっと詳しく話せ」
「私、ライさんと同じく貧乏だったんです。もっと詳しく言えば、スラムで育てられたくらいの貧乏でした。でもそんなある日、私に魔法学院の入学許可が下りたんです」
「……どういうことだ?」
「分かりません。ただ学院の人には、ローベルトさんが貴女の学費全てを出している、とだけ言われました。どんな人かも分からない、住んでる場所も分からない、分からない人だらけの人に学費を出してもらって、私は魔法学院を卒業したんです」
「教えてすらくれなかったのか」
「はい。学院側もローベルトさんに口止めされているらしくて、何も教えてはくれませんでした」
なるほど。
だが、まだ話が見えてこない。
「それで、そのお前の過去から、どうして森に繋がったんだ」
「森に追放された剣士がいると聞いたんです。だから__」
その続きの言葉は、怒号と共に遮られた。
「また魔獣か……下がっていろ」
剣を構え、俺はマキナの前に立った。