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81話 つつがなく日々は続き その1

 学校が始まって二週間ほど経つと、本格的に文化祭に向けて動き始まる。学校全体がそわそわして、放課後の教室に残る生徒も増える。

 生け贄として役員にされた俺も、最近は帰る時間が遅くなっていた。


「テツ先輩って、氷雨先輩と付き合ってるんすよね。どこまでいったんすか?」

「お前のその躊躇いのなさは、もはや尊敬に値する」


「そんな、自分は尊敬されるような人間じゃないっすよ!」

「落ち着け。皮肉だから」


 サッカー部が休みだから、今日はエージも役員の仕事に来ている。

 仕事内容は、文化祭期間中の体育館について。設備に不足、故障がないかを確認して、利用団体に確認して回る。


「で、どうなんすか?」

「粘るなぁー」


「そりゃ気になりもしますって。この学校の男、ほぼ全員が気にしてますって」

「嫌すぎる」


「気になりすぎて、一部では阿月哲アンチなるものが生まれてるらしいっすよ」

「とんでもないことになってんな!?」


 アンチがつくのは有名人の証。とでもいうのだろうか。

 嫌だ。別に有名になりたいわけでもないのに……。


「なんでそんなことになったんだよ」

「現実感がないんじゃないすかね」


「氷雨に恋人がいるっていう?」

「はい。だからガツンと、あいつの彼氏は俺だ! っていう動きを見せた方がいいと思うんすよ。テツ先輩は、報われない男達の淡い希望を断ち切るんです」


「うわぁ……」


 亡霊みたいだな。

 まあ確かに、学校の中で小雪といると恨みがましい視線を感じることは多い。一定の反感を買っていることは事実だろうし、


「ま、考えとくよ」


 どこまで進んだかは……自分でも、よくわからん。







 役員の仕事がある日は先に帰っていい。そう言ってはいるが、実際はほとんど待ってくれている。

 メールを送って昇降口にいると、ほどなくしてやってきた。階段を降りる上履きの音で、なんとなくわかってしまうのは末期症状か。


 いつも通りの待ち合わせ。俺を見つけると、小雪は微笑んで近づいてくる。


「お疲れさま」

「…………」


 彼女の頭に、見慣れない二つの山ができていた。

 ぴょこんと小さく、黒く、可愛らしいそれは――


「ネコミミ!?」


 小雪がネコミミ。ネコユキ!?


 だめだ頭が混乱してる。え、ネコミミ? なんで? 可愛い可愛い。ちょっと頭バグりそうなくらい可愛い。


「どう? 似合ってるかしら」

「似合ってるけど、どういう経緯でそれを着けたんだよ」


 普通に生活してたら絶対にたどり着かないだろ。あるとすれば、男側のちょっとアレなお願いとか、そういうお店とか。


「文化祭のお店で着けることになって――だから、最初に見てもらいたかったの」

「なるほど」


 なるほどそれはまた随分と可愛いな。あまりにも可愛すぎて思考が可愛いに汚染されていく。あれ、俺ってこんなタイプだっけ。


「似合ってるなら、安心ね」


 ほっとしたようにネコミミを外すと、鞄にしまう。

 残念な気持ちはあるが、着けたままだと正直理性が保たない。なんかやらかす自信がある。


 危険だ……ネコミミ。


「小雪のクラスは、喫茶店か」


 そういえば、各クラスの申請で見た気がする。ネコミミ喫茶とはなかったけど、コスプレ喫茶的なのがあったはずだ。


 コスプレ。

 小雪がコスプレ!?


 そのクラスのやつら、GJすぎるのでは!?


「どうしたの阿月くん。かつてないほど挙動不審だけど」

「あ、ごめん。俺今ちょっとキモかった……」


「そう? 顔はいつも通りよ」

「内面的な問題です」


 小雪は不思議そうにしているだけで、ちっとも気がつかない。

 俺の彼女さん、純粋すぎやしませんかね。

ネコユキ!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほー、ちょっと付き合ってる感が出てきた(笑) [気になる点] ネコユキ! そりゃ、間違いなくGJだわ!
[一言] ラブコメになってきた。 それだけ環境が落ち着いているということか
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