シャッフル
完全なる見きり発車です。
ゆるゆる行きます。
すごい大地震だったから、目が覚めて周りを見た時にいよいよ地球は滅亡するんだと思った。
だって建物なんて一戸もないし、車だって見当たらない。
見たことのない、よく分からない草が生い茂ってるし、変な虫も飛んでる。
そうだ、家族は無事だろうか。
「お父さん、お母さーん!」
叫びながら歩き回る。周りには沢山人がいるけど、知ってる人は誰もいない。
皆不安そうに、誰かを呼んで探している。
あれ、おかしいな。
うちの近所はこんなに外国人が住んでいただろうか。
よく見ると、外見、服装、言葉、かなりバラバラな気がする。
もしかすると、私はあの地震で死んでしまったのではないだろうか。
それでここがあの世なら納得できる気がした。
死んでしまったとして、これからどうしたらいいのだろう。
誰か、状況がわかる人はいないだろうか。
うずくまっている人、大声で泣き叫ぶ人、ただ一点を見つめて動かない人、忙しなく走り回ってる人、様々だった。
私は近くでうずくまっている人に声をかけてみた。
「あのう、すみません。」
「......遮是佗位?」
日本人かと思ったけど、違ったみたい。
何て言ってるのか、さっぱりわからなかった。
私は、とりあえず言葉の通じる人を探すことにした。
けれど、話しかけた人は皆言葉が通じなかった。
「ねぇ君、日本語話せるの?」
その声に振り返ると、インド人風の男の子だった。
「話せるよ。私、日本人だもの。あなたこそ日本語上手ね!よかった、言葉の通じる人がいて。」
男の子は驚いた顔をする。
「いや、俺もバリバリ日本人だからね。君こそ、ハーフとかなのかな?すごい、日本語の上手な留学生とかかと思ったよ。」
日本人らしくない服装と外見だが、彼は日本人らしい。
それよりも私がハーフ?私こそバリバリ日本人だ。
風が吹いて、誰かの髪が顔にかかった。
近くにいるのは、そこの自称日本人の彼だけ。
では、この金色の髪は何?
私は全身を確認する。
肌が異様に白い。いつの間にか見たことのない服を着ている。目線が、低い気がする。
目の前の彼は不思議そうな顔をしている。
「私に外国の血は入っていないの。私の名前は藤川 亜咲、27歳。ねぇ、私は誰に見える?」
「27歳?」
「そうよ。ついでに言うと、髪も、目も黒いわ。それに私、ショートヘアーなのよ。」
「......俺には、その、君は白人の、そうだな、ドイツ人とか?の女の子に見えるよ。12、13歳くらいじゃないかな。」
「私にはあなたはインド人風の男の子に見えるわ。15歳くらいかしら。」
彼は慌てて、自分の体を確認し始めた。
「え、え、......え?」
彼は困惑したように私を見た。
「これは俺じゃない。」
彼の名前は中原 静真、21歳のフリーターらしい。
もしかしたら、私たちだけではなく、皆中身が違うのだろうか。
これは一体何なんだ。
気がつくと辺りは暗かった。
空に浮かぶのは紫色の巨大な月と、イルミネーションのようにカラフルに輝く星。
ここが地球ではない事は確かだった。