第7話 ミーティング
前回のお話
じゃあな!もっくんは意気揚々と出ていった。
鶏、魚、豚肉そして鶏、魚、豚肉、僕らは解体マシーンだ。
100リルでも心に余裕ができた。
今日はすっきりした寝覚めだ。
昨日ひたすら解体の手伝で疲れてぐっすり寝た。
朝食を食べてから父さんと一緒に家を出てギルドに向かった。
ボード前の依頼ファイルを見ていたマッシュがいた。
マッシュはだいたい黄色いシャツに茶色いズボンだ。シャツはちょっと大き目でズボンは少し丈が短い感じの奴だ。マッシュはここのところ急に成長して身体が大きくなった。そこは素直にうらやましい。
「マッシュ早いな。ミリーはまだ?」
「もう来ている。2階でアカネさんと話してからここにくるって」
そう言われて2階へ上がる階段をみるとちょうどミリーが降りて来た。
「おはよう。オル。そろったわね。今日の研修の前にミーティングよ」
今日のミリーは薄い水色のシャツに濃い緑色のズボン、見習い冒険者にしては明るい服装でそれが良く似合っている。
「モンクレールの他には研修に付き合ってくれる人はいないって。どの冒険者も今は忙しいようよ。アカネさんから私達が研修として受けた方がいい依頼を教えてもらったわ。」
なるほどお父さんも稼ぎ時だっていってたしな。そう言うものか。
「で?何がいいって?」
マッシュが他の冒険者にぺこりと頭を下げてファイルを渡しながら聞いた。
「定期馬車の馬の世話、農家の収穫、商家の荷物運び、とか色々あるわ。色々なんだけど今日はみんなに食堂の手伝いを受けてほしいのよ。」
食堂の手伝い。それも冒険者の研修なのか?
「いくらなの?」
マッシュはそこ?お金は大切だけどな。
「なんと!300リル。ひとりよ、一人頭300リル。」
おお凄い。一人前の研修冒険者の金額だ。
「へへ。実は私の家の食堂なのよ。人が足りなくて従業員募集していたから依頼にして出してもらったよ。だから、この依頼を研修に使ってもらうようにアカネさんと交渉したの。料理ができることや食べ物に関する知識も冒険者には必要だしね。」
凄いな。アカネさんと交渉なんて僕には考えもしなかった。コミュニケーション力の違いってやつですかね。
「賄いつき?」
マッシュはそこ?弁当持ってきているだろ。でも賄いも嬉しいな。弁当だけじゃもの足りない。
「賄いも付けてもらうわ。それでいい?じゃ受付して家の食堂に向かうわよ。」
僕はじゃがいもの皮剥きとカットをマッシュは人参と玉葱の皮剥きとカット、ミリーはキャベツの千切りを昼前までひたすらやった。
「もうすぐお昼だからホールをお願い。」
ミリーの姉さんが顔を出してそれだけ言うとキッチンに戻って行った。
僕らは処理して揃えた食材をキッチンに運び込んでホールに出た。まずはホールの清掃。続いて机と椅子のセッティングをする。ぼちぼちお客さんが来たので中で待ってもらう。
三人ともお揃いの白い割烹着に白い帽子だ。
僕らを目にしたお客さんにかわいい見習い冒険者だと冷やかされながら料理を運ぶ。
今日の定食は肉、魚、豆料理の三種類ある。どれもじゃがいもと人参とキャベツが乗っている。さっきの僕らが切ったやつだな。
「はい。肉、肉、魚ね。」「こちらは豆二皿ですね。」
注文の料理をどんどん運ぶ。キッチンのミリーのお姉さんは足りなくなりそうな料理をどんどん作っていくので僕らは注文通りのものを運ぶだけだ。
昼の定食はどれも50リルで料理を出したら受け取る。お客さんはさっと食べたら直ぐに出て行って、次のお客さんと席を変わる。全く休む暇もなくお客さんが入れ替わりくる。
それでも昼を十分に過ぎた頃にはお客さんが少なくなってきた。ホールはミリーに任せて僕らは皿洗いと食堂とキッチンの掃除だ。
「オル腹へったな。」
忙しい。賄いどころかお弁当も食べられない。マッシュが悲しそうにつぶやく。
「ごめん。私達が来るからっていつもの人が取れなかった休みを取っちゃったの。ここまで忙しいとは思わなかったわ。」ミリーも少し閉口している。
「いやいや。冒険者見習いが100リルもらうんだ。文句はないよ。」
100リル、100リルと僕は頭の中でつぶやく。
「文句ないよ。腹へったけどな。」
マッシュは正直だ。
「あんたたち賄い出すから隅の席で食べな!」
どんどんと置かれた賄いは僕らが運んでいた3つの定食のおかずの盛り合わせだった。
半人前の肉、半人前の魚、半人前の豆料理で1.5人前になってた。
「おおー。大盛りだ。いただきます。」
「うまーい。」
こういった外食のおいしさってのは家で食べる食事とは別の旨さがあるよね。
がつがつと掻き込むように賄いを食べているとミリーがお茶を淹れてくれた。
さすがにミリーは食べなれているのか余裕がある。
家から持ってきた弁当も一緒に食べてしまうとさすがにお腹いっぱいだ。
「あんたたちのお陰で助かったよ。ひとが足りなくて従業員に休みを上げられなかったからね。本当にありがとうね。」
ミリーのお姉さんも一息ついたのか僕らのテーブルでお茶を飲みにやってきた。
「ところでオルスランドくんとマッシュくんは冒険者を目指してるんでしょ?ミリーも冒険者になるって言っているからよろしくね。本当は宿屋か食堂を手伝って欲しいけど最近は絶対冒険者! って聞かないからね。」
「お姉さん。ミリーが冒険者になるってのは家族も認めているんですか?ミリーが言っているだけかと思いました。」
「ちょっとオル!信じてなかったの?」
「だってちょっと前まで綺麗なお洋服がいっぱい買えるお金持ちのお嫁さんになるって言ってなかった?」
「いったいいつの話よ。それは小さくて自分ではお金を稼ぐことができると知らなかった時。今はお洋服は自分で稼いで好きなだけ買えばいいってわかったのよ。」
洋服をいっぱい買うのは変わらないんだな。
「最初は装備だ。」
おっマッシュは本格的だな。
冒険者はC2 クラスから町の外に出ていくのだかそれまでに武器や防具などの装備を揃えなければならない。
「そうね。それはわかっているわ。で、ミーティングよ。いい?できるだけ早くC2冒険者になって稼ぐのを目標とするの。」
「ああ、それはもちろん。で?」
ミリーはそれからしばらく一人で話続けた。僕らは、研修が終わると町のなかで依頼を受けながらギルドのポイントと装備のためのお金を稼ぐ。だいたい二年ぐらいでC2クラスになって冒険者らしい仕事が始まる。それまでの依頼は町の中の人と同じような仕事をする。本格的な冒険者を目指さなければ、自分にあった職場があれば依頼から定職につくのが一般的というか、むしろその方が多い。でも僕らは、ミリーが言うにはミリーも含めて僕らは冒険者になることは決まっているのだから早く冒険者になって町の外での依頼で稼ぎたい。でも早くC2 の冒険者になる条件を知らない。もっと言えば研修がいつ終了するのかも知らされてない。ここをはっきりさせて最短で研修と冒険者見習いを終わらせることを目的とすると言う。
「なるほどね。僕はいいと思うよ。マッシュもいいよね。」
「いいさ。でもそんなに早く稼いでお洋服を買いたいの?」
え?お洋服のため?その質問大事?
「だって早く綺麗なお洋服をいっぱい買ってから素敵な人のお嫁さんになるには若いうちが有利なの!」
え?お嫁さんにはなるのか!っていうか僕らは眼中にない感じですね。
「わかった。」
わかったのかよ。なんだかシュンとしちゃったなぁ。
明日の朝イチのギルドでアケミさんを待ってその辺りをはっきり聞こうと言うことにしてミーティングは終わりだ。
そのあと夕方の接客のおばさんが来るまで食材を洗ったり掃除をして解散になった。依頼完了報告は明日朝だな。