第4話 冒険者研修
前回のお話
マッシュのサインが芸能人のようだ。
ミリーには面白いやつだと思われたい。
5リル貯金箱に入れるまでをお母さんは見ていた。
わくわくして眠れなかった。
お陰でまたおかしな夢を見た。
僕はとても忙しい仕事に就いていて毎日クタクタになるまで働いていた。
部下が仕事に出てこなくなり、これでは帰れなくなるので休んだ部下に電話したら居留守を使われた。
本人が電話に出ているのに電話に出ているのは部下の兄だと言うのだ。
いろいろと情けないと感じたところで、起きた。
電話?電話ってなんだ?知らない機械だ。
「おはよう。お母さん。僕のお弁当作ってくれた?」
台所はもうすっかり暖かくなって良い匂いがお腹をへらす。
「おはよう。って、遅いわよ。さっさとご飯食べて出かけなさい。お弁当はそこよ。お父さんはもう出かけたわよ。」
「え!もう出かけたの?やはり食料確保しておくことになったのか。」
夕べ、戦争になるなら狩りに行けなくなるからギルドとして食料確保しておく必要があると話していた。噂だけでも魔物の肉が高く売れるからしばらく稼ぐことにすると。それに家の食料も備蓄が必要だしね。
「行ってきまーす。」
僕は少し冷めたスープを一気に飲んで、パンを食べながらギルドに向かった。
ギルドでは眠い顔をしたマッシュと澄ました顔のミリーが待っていた。
「遅くね?オルの家が一番近くなのに。おはよう。」
「おはようマー君。ミリーもおはよう。」
「おはよう。髪ボサボサね。寝坊したでしょ。ふふ。」
僕が扉の前に着くと待っていたかのようにアケミさんが出てきた。
「おはようございます。研修は裏庭よ。解体係りのマクガンがいるから指示にしたがって下さい。じゃ1日頑張って!」
ピッと指を裏庭に向けてから拳をグッと作って、アケミさんは笑顔で僕らを追い立てた。こりゃ僕を待っていたな。
「マクガンさんですか?新人研修に来ました。」
マクガンさんは大きな人だった。短髪というか前頭葉が涼しい系だな。冒険者ギルドでよく見るタイプのおじさんだ。
「マクガンだ。ギルドで解体をやっている。午前中はどのくらい動けるか見る。午後は副ギルド長のアケミの指示に従ってくれ。多分お勉強だ。」
僕らは走ったり、走ったり、剣に見立てた棒を振ったり、また走ったりした。
マクガンさんは最初こそ僕らを見ていたものの解体の仕事が入ったからとその場を離れることにした。
「あとは昼になるまで倉庫の荷物運びだ。冒険者は強い魔物から逃げる足と狩った魔物を運ぶ力が大切だ。ああ、荷物運びはコツがあるからな。じゃ頑張れ!」
解体係りはだいたい午前中は暇なはずなのだか、魔物が運び込まれたようで行ってしまった。
裏庭から倉庫に回ると山のような荷物が積んであった。僕らは自分の体重ぐらいありそうな荷物を延々と昼になるまで運ぶらしい。
クタクタです。残念なことに僕が一番力がなかった。女の子のミリーにも負けるとは。ミリーは気が付かない振りをしてくれていた。良い子だ。
昼の鐘がなると倉庫係りのおじさんが運んだ荷物が小麦であったことを教えてくれて、お礼だと弁当をくれた。最後の最後におじいさんの名前がチェストだと知ったところで昼飯だ。
三人とももらった弁当と持ってきた弁当の二つを当たり前に食べた。弁当は一食にしては小さいので二つなんてぺろりだ。
ミリーの弁当に小さな肉が三つ入っていたので一つづつもらった。わざわざ用意してもらったんだな。本当に良い子だ。
午後は眠くて眠くて地獄のようだった。
冒険者の基本的ルールを教えてくれた。
教えてくれたのは受付係りのマーガレットさん。受付は夕方までは暇なので午後の講師をするようだ。
依頼の受け方など本当に基本で父さんが冒険者の僕はほとんど知っていたから更に眠かった。
ミリーの寝息がマッシュより大きかった。
最後に口頭で試験をされた。
三人とも落第だと言われた。
新人冒険者の入門書『冒険者の心得』を全て書き写すまで居残りです。
書き写した物は持って帰って良いとのこと。
どうやら居眠りと書き写すはセットになっているらしく。これで研修の1日が終わった。