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第1話 オルスレン一家の朝

目標100話 主人公のオルスレンが冒険者となって町の外に出るまでがこのお話です。次は冒険者としてのオルスレンの青春を描くつもり。魔法と剣の冒険はそれまでお預けです。いい人だけでできた世界、町の中で幼い3人が成長する。明るい毎日には戦争という不穏な空気が流れる。この話では戦争は雰囲気だけで起こりません。



 何だか小さかった頃の夢を見た。

 兄がいて自転車の乗り方を教えてくれていた。

 楽しくて嬉しくて大騒ぎだった。


「お兄ちゃん。手を放さないでね。絶対だよ。」


 そう叫びながら兄が手を放すに違いないと期待している自分がいた。


 ん?自転車?自転車ってなんだ。車輪が二つ前後についていて自分の足で動かすなんて、、、

 知らない乗り物だ。僕には何だか前世の記憶があるっぽい。ワクワクしながらベットから起きた。


 僕はオルスレン・サリンジャー。13歳。

 小さな町の普通の家の子にしては立派な名前を付けられている。


 父さんが笑いながら立派な名前の理由について話してくれた。


「先々代、爺さんの父さんはちょっとだけ偉い役人だった。今でも一応貴族なんだよ。役職はないけどな。」


 そう言う父さんは算術屋兼冒険者だ。商家で帳簿を見る仕事をしている。その仕事がないときは冒険者として魔物を狩っている。


 隣のおじさんは「いや商家の方も用心棒じゃないか?」って笑って言う。

 母さんは「先々代がお世話をした商家がいまだに恩を感じて雇ってくれてるのさ。ありがたいね。」ってやっぱり笑って言う。


「おはよう。」台所に行くと母さんは朝食を並べていた。


「オルスレン。おはよう。ご飯できてるよ。」


「おはよう。」


「父さん。今日は森に行くの?」父さんはもう食事が終わって出かける準備をしている。



「そのつもりなんだが、一度ギルドに寄ってから、森に行くかどうか決めるよ。」

「母さん。だから一度戻ってくるから弁当はその時でいいよ。」


「あら。お弁当用意しちゃったわよ。そう言うことは早くいってよ。」


「ん、すまん。」


「父さん。ギルドに寄るなら一緒にギルドに行ってよ。」


「ああ。そうだな。お前の冒険者登録するのを今日にするか。」


 僕は13歳になってギルドの仕事ができるようになった。ギルドの冒険者として登録するんだ。登録するには誰か身元保証人が必要で僕の場合父さんが保証人になってくれるってことだ。そして登録すればギルドカードがもらえて町の外に一人で行けるようになる。


「オルスレン。ギルドに登録するのはいいけど。まだ冒険者じゃないからね。いきなり町の外になんて行かないでよ。」


「わかってるよー。心配しないでよ。ちゃんとギルドの研修受けてからだよね。」


 母さんは少しだけ心配性だ。まあ実際今の僕じゃ魔物と戦うなんて無理だけどね。僕はちょっとだけ運動神経が鈍い。それは自覚している。だけど毎日剣の訓練はしている。素振り300回だ。父さんに時々手合わせもしてもらっている。それで剣の腕がイマイチだって自覚させられてるんだけどね。



 僕は朝食をかき込んで父さんとギルドにと家を出た。


「いよう。おはようさん。オルスレンはどこに行くんだ?」


 隣のおじさんだ。おじさんはマシュー。冒険者兼農家だ。農家と言っても猫の額ほどの畑を耕している。それでも自分の畑を維持してるのはすごいことだよ。しかも町の外だから魔物を駆除しながら農地を広げているんだ。


「ギルドだよ。登録するんだ。」


「マジか!公園デビューか!」


「公園じゃないよ。せめて草原デビューって言ってよ。」


「いやいや。草原デビューなんてしないからな。母さんに怒られるよ。登録だけだからな。マシュー煽らないでくれよ。」


「そうか。お母ちゃんに怒られるか。剣の練習してるし、いきなりデビューとかすんのかと思ったよ。」


 隣のおじさんは僕の肩をバンバン叩きながらそう言うと父さんにまじめな顔を向けた。

「聞いたか?」


「んー。どうだかなー。また噂だけじゃないかと思うんだがギルドで確かめてくる。」



 ギルドはこの小さな町の中心にある広場に面している。広場には町の役所や冒険者以外のギルドもある。毎朝市場が立って今もにぎやかに野菜なんかの食べ物を売っている。


 ギルドの扉はだいたい開けっぱなしだ。父さんと二人でギルドに入ると冒険者でいっぱいだった。


「オルスレン。こっちだ。冒険者登録は2階だ。」


 冒険者でいっぱいのカウンターの並ぶ一階の端に階段があり2階に上がる。


『新規登録・登録』と書かれた扉の前に立つ。


「新規登録はここでする。ちなみに登録ってのは他の町のギルドで登録した冒険者が初めてこの町に来たときにその登録をすることだ。憶えておくといい。」


「うん。」

 なんだか緊張してきた。


「入るぞ。」


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