八章 ❸
オレはマリーと王都の東へと向かった。
ここでもいくつかの小さな町や村を通り、二日で東の街ドーマに辿り着いた。
聞いたところによると、ドーマの街はいい狩人が揃っていると聞いた。
余りやることはないのかもしれない。
ブラドとヒルデは幼獣化しているので、何も言われず街に入り軽くぶらついてハンターズギルドへ足を向けた。
ルーノのハンターズギルドと作りは似ているようだ。
受付の女性に声をかける。
「すみません。ギルドマスターにお会いしたいんですが…」
「本日はどの様な御用向きですか?」
「ブルガルド王の勅命で、各街のハンターズギルドを回っているんですけど…」
「あっ、レン様で御座いますか?」
「はい、そうです」
「では直ぐにご案内いたします…「君がレン君か!」
「ギルマス!」
「いや、街に面白い気配が入ったのを確認して追跡してたんだ」
背は俺より頭一つ分低く、黒で装備を統一している。
どっちかというと綺麗系な感じではあるのだが、背が低いのとツインテールにしているためやや可愛く見える。
「そんな事が…あっ。失礼しました。レン=ミングルと申します。こっちは弟子のマリアです」
「マリアです!」
「はははっ!元気がいいね。けど、弟子を連れているとは聞いてなかったけど?」
「ルーノの街で弟子になりました!」
「へぇ〜じゃぁルーノの狩人なのかなぁ?」
「はい」
「面白いね〜。せっかくうちに来たんだし、ちょっと手合わせしようか?実力を知っておきたいんだ」
「はい。けれど相手は誰がやるんですか?」
「私だよ?」
「でも…魔術師ですよね」
「あぁ。そうだよ?」
…一対一だと魔術師は不利だ。
けど…『聞いていた』って言ってたよね。
デュランさんの時もそうだったけど、こっちの情報はある程度渡っているはず。
それなのに試合ということは…。
「分かりました」
魔術師は、高ランクになれば成るほど接近戦を忌避する。
おそらく何らかの手札を持っているはず。
こっちの手札は見られてるのに…。
困ったな…。
◆◇◆◇◆
地下一階の練武場に着くと、既に数人が汗を流していた。
そこに降りてきたギルマスとオレを見ると、ニヤニヤしながら場を開けて観戦場へ移動した。
「始まる前に…えい!」
杖を振り翳すと、練武場の四隅の水晶体が淡く光り輝く。
「さぁ、これで準備万端だよ?」
そう言って、木剣を手渡してくる。
「有難うございます」
受け取って多目に距離を取る。
「では…。はっ!」
飛燕を飛ばす。一太刀だけじゃない、一息に4回程振った。
絶対に何かあるはずだ。
「はっ!」
ギルマスは気合だけで魔術障壁を張った。
(無詠唱!成る程!!)
じゃぁ…
「はぁー!」
特大の飛燕を三つ、時間差で叩き込む。
そして最後の一つに追随しながらタメを作る。
三発目を防ぎ切り、脆くなった障壁を横薙ぎで叩き割ろうとした瞬間。
思いっきり剣が弾かれ、剣に身体ごと持っていかれた。
(こっ…これは!?)
「おやおや?もう気がついたのかい?」
俺は着地してギルマスを見る。
「名前は分からないですけど…名付けるなら反障壁ですかね」
「ふーん…。たったこれだけで見抜くなんてやるじゃないか」
「そして、無詠唱…。これじゃぁ一階の狩人では吹っ飛ばされてお終いですね…」
「それで?終わりにするかい?」
「もうちょっと粘ってみます」
「いいね。若者はそうでなくちゃ。じゃぁ、こっちからいかせてもらおうかな?」
(はっ?)
反障壁を盾に突っ込んできた。
(考えさせない気だな?)
回避しながら、符を取り出し魔素を注ぎ込む。
雷気が収束して弾ける。
「ん?」
ギルマスは魔素を収束した避雷針で雷を撃ち落とす。
(そんなことも出来るのか…)
「君は…剣士じゃなかったのかな?」
「奥の手です」
「ふーん」
(今…反障壁で防がれなかった?)
どよどよと、いつのまにか埋まった観戦場から騒めきが聞こえている。
(練気剣+雷気!)
剣を通して身体中に雷気を纏う。
「はは〜。それがゼオ譲りの技というわけかい?」
符を使って雷気を纏う。これなら、雷気使いと思われる筈…。
そして勢いをつけて、高速の斬撃波に雷気を纏わせて放ちまくる。
今度は、魔素をいくつもの蝿叩きに見立てて撃ち落とす。
(純粋な魔術攻撃でないと防がれるのか?)
そうするとオレには部が悪い。
けれど、ずっとあの状態を維持し続けるのも難しいだろう。
ザスッ
オレは木剣を地に突き刺す。
(雷気…)
バチッ…バチバチッ…バチバチバチッ!
「へぇ…やるじゃないか…。そっちの素養もあるのかな?」
雷気だけで剣を構成し、握りしめる。
(初めてだけどな)
ぅおおおぉぉぉ!?
観客は驚きまくっている。
「行きます。ギア・ファースト」
高速状態で斬りかかる。
かたやギルマスは大気中の魔素を操って刃を作成し、こちらに一撃を入れようとしてくる。
しかも的確にこちらを捉え、追尾もしてくる。
「ギア・セカンド」
スピードを上げる。
振り切って、一太刀入れようとする。
それに対して、魔素の刃を大量に作成して手数で対応される。
「はい!そこ迄です!!」
拡声魔導機を片手に眼鏡の女性が立っている。
◆◇◆◇◆
「あーなーたーはー!何でもかんでも試そうとしない!!」
「えー」
「えーっじゃないでしょう!?折角来て頂いているのだし、あの件も含めて何か難しそうなものを依頼して下さい!」
「そーすると、うちの狩人の経験にならないじゃん」
「別に問題ないでしょう?、自分が息抜きしたいからって強引に手合せに誘ったりしない!」
「だって〜」
「もー。あ、失礼しました。私、ギルマスの補佐をしています。エレナと申します」
エレナさんは俺よりほんの少し背が高く、出るとこは出て、引っ込む所は引っ込んでいて、ザ・女性と言った感じだ。
「あ、どうも初めましてレン=ミングルです」
「私はマリアです」
「はい、宜しくお願いします」
「で、このバカマスがまたふっかけたんでしょう?」
「えっと…実力を見たいって…」
「それがコイツの手口なんです!」
「いいじゃん…」
「あ゛?」
「何でもないですぅ〜」
「あーそういう態度取るんですかぁ?次やったら…補佐辞めちゃおうかしら…?」
「い…いや……」
何だ?何かおかしい。
「ん〜何かしら?聞こえないわ?」
「ご…御免なさい…」
「は〜ん?」
「御免なさい!」
「もっと真心を込めて!」
「ずびばぜんでじだぁ〜ごべんなざ〜い〜」
ぅわ…ギルマスがサブマスに土下座してる…。
「いいでしょう…レンさん。今日の所はこんなところで勘弁して貰えないかしら?」
「あっはい。全然問題ないです。っと言うか勉強になりました…」
「ほら〜」
「伏せ!」
バチッ!
鞭がしなり、地面を叩く。観戦場からヒッっと言う声や、あ〜っと言う声が聞こえてくる。
「ひゃいっ!」
「レンさん…。駄犬はね、甘やかしてはいけないの?お分かりですか?」
「あーはい。肝に命じました」
「いいでしょう…では執務室へどうぞ。そこにあって頂きたい狩人を呼んでおりますので」
◆◇◆◇◆
「でも、レンさんは雷気まで自由に扱えるのですね?流石ゼオ様の…いえ、勇者の『ギア』を会得された方…」
「ははは…」
(死ぬかと思ったけどね?)
地下の練武場から二階の執務室に上がり、紅茶を頂いている。
コンコン。
「オリオンズ・ベルト来ました」
「あら、来たみたいね?」
「入っていいぞ」
(三人か…魔術師、レンジャー、盾役かな?」
「みんな此方が…
「オレはレン=ミングルで、こっちはマリアです」
「マリアです!よっ…宜しくお願いしましゅ!」
…噛みおった…。
「で…では僕から…」
ん、スルーしてくれた。いい人だ。
「僕はマルク。オリオンズ・ベルトのリーダーをしてます。宜しくお願いします」
「俺はユーゴ、このチームでレンジャーをやっています」
「わ…私はガーダーをやっています。レナです」
(ん?女の子がガーダー?スキルか?)
俺が目を見張ったのを読んで、マルクが口を出した。
「レンさんの仰りたい事は分かります…」
マルクが何か悔しそうな顔をしている。
「特に突っ込む事はないよ。で、何をやれば良いんですか?」
オレはエレナさんの方を向いた。
「この子達に稽古…と言うか、手解きをして欲しいのです」
「手解き?」




