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オレをスキ過ぎる姉達がマジで怖いんですが!!?  作者: 低脳イルカ
ブルガルド王国行脚編 ドーマ
89/97

オリオンズ・ベルト❷

カラン♪


 いつもの鐘の音が来訪を告げる。


 ここはブルガルド王国の東に位置するドーマの街。


 その東門の側に位置するハンターズギルドだ。


 沢山の依頼者とハンターが往来している。特に魔族との争い激しく、騎士もハンターもピリピリしている。


 そんなこの街の期待の新人パーティーの一つ。オリオンズ・ベルトが帰ってきた。


 今回も怪我一つ負っていないようでホッとする。


「今日は、サリーさん」


「今日は、マルクさん。依頼の件ですか?」


 直ぐに、オリオンズ・ベルトの受注状況を調べる。


「はい。完了報告です」


 と、出された依頼書を手に取り確認する。


 横に置かれた普通の紙のサイズより、少し大きめの白い台に原紙の依頼書を重ねて手を置く。


 すると微量の魔力に反応して、原子の方のサインの欄に、コピーの依頼書のサインが浮き出る。


 それを見比べ、ドーマのハンターズギルドの印を押し付けると完了だ。


 あとは…


「パーティーカードと、ハンターズカードを良いですか?」


 マルクは既に用意していたパーティーカードと、全員のハンターカードを手渡した。


「お支払いはどうされます?」


「全額パーティーカードに入れておいて下さい」


「はい。畏まりました」


 そのまま白い台に併設している黄色の台に、全てのカードを並る。

 その上に依頼書の原紙を重ねてまた手を置く。


 すると「ぼうぅ」と金色の光が指の隙間から溢れた。


「はい、これで終わりです」


「はー。すっごく簡単になりましたよね〜」


「ね〜。一昔前まではこんな簡単に終わらなかったのにね。


 ムンティスの町の、フォーゲルって言うエルダードワーフの方のお仕事らしいわ」


「へー、凄いですですね」


「何でも無属性概念付与術式とか言う魔法…かな?


 何かそんなものの応用らしいの。


 でも、これのおかげで『転写』とか色々な事を、私のように少ししか魔力が無くてもできるようになってとっても助かってるの」


「うーん。今度いつか行ってみたいな」


「ん〜マルク君が行ったら、もっと良いものを作ってきそうですね?」


「あはは、そんな事ないですよ。


 えーっと…じゃぁこれで?」


「ちょっと待ってください。えーっと…


 今回の件で四等星にランクが上がりました。


 それと、必ず経験値付与を行なって下さい。


 皆さんのレベルが上がっています」


 カードを一枚ずつ確認しながらお返しする。


 経験値の付与は原則、ギルド帰投してからだ。


 入り口付近にある魔石にハーンターズカードを設置して行う。


「はい。わかりました。」


 軽く会釈をしながら、パーティーメンバーの待つテーブルへ移動するマルク君。


 あ〜誰か付き合っている子でもいるのかしら?


 〜・〜・〜・〜


 私とユーゴは中くらいのテーブルに突っ伏しながら、目を閉じている。


 私の方はプレートアーマーをカードに収納してる。


 その為、椅子に立て掛けているアイアンシールドとモーニングスター、そしてレザーブーツのやや軽装になっている。


「はい。姉さん、ユーゴ」


「ん。ありがと」


「サンキュー。マルク」


 薄ぼんやりと光るハンターズカードを手渡しながら次の言葉を添えられる。


「二人ともレベルアップしてるみたいだからレベルアップして、ウチに集合で」


「「うん」おぅ」」


 んー何時もながら気配りの効いた良い弟だ。


(洞窟の時の最後の笑顔は怖かった…。)


「あ、そう言えばアレはどうするの?」


「ん?」


「ほら…」


「あー。アレね。アレもウチでやる」


「んーじゃぁそのまま直行でいいんじゃないか?」


「ユーゴ、一旦帰らなくても良いの?」


 私が心配する。


「良いよ。もうガキじゃないんだし」


「シスター何時も泣きそうな目で見送ってるんだし…


 私達も一緒に行くから」


「ん〜。じゃぁ寄ってくか」


 ユーゴの家は、我が家から歩いて3分の修道院だ。


 ユーゴは孤児で、他に三人の兄弟がいる。


「じゃぁさ!帰りにお菓子屋さん寄って行こ!


 良いでしょ?マルク!?」


「あぁ、そうだね。ウチの子達にも何か買って行ってあげないとだしね?」


「だって、さぁ行こ!」


 ユーゴの腕を掴んで無理矢理立たせる。


「だーっ!行くよ!行く行く。」


 私の力は、パーソナルスキル『怪力』の所為で普段から強い。


 引きずられるような形になったユーゴが


「おま、やめろ!」


 とか叫んでる。


 マルクは横で、口に手を当て歩きながら笑ってる。


 コレが私達の日常だ。


 漸く解放されたユーゴが、


「そう言えば…今日はハワードのおっさんとこ

 寄らなくて良いのかよ?」


「師匠は明日ムンティスから帰ってくるの、だから今日は特に必要ないわ」


「へぇ…なんか意外だな、なんかあったのか?」


「ハワードさんは、鍛治の技術研修に行ってるみたいなんだ」


 マルクが挟む。


「そうなのか?鍛冶稼業にもそういうのあんだなぁ…」


 こんな時のユーゴ、ちょっと考えてるフリしてあんまり考えてないのよね…


「まぁいいじゃない?さっさとレベルアップやろ?」


 入口正面に依頼表。その左側の壁に三つの水晶が置いてある。


 昔、とある公明な賢者アズ何とかさんが『経験値』を一旦魔石に封じる技を開発したそうだ。


 それ以降改良を重ね、あの依頼書に吸収するまでになったそうだ。


 コレのお陰でパーティーにおけるレベル格差が少なくなったり、新人メンバーの集中的なレベリングが可能になった。


 私達オリオンズ・ベルトは、経験値は均等分けしている。


 水晶の前に立ち、カードを台座に置き手を触れると身体中に何かが雪崩れ込んでくる。


 慣れないうちは酔ったりもしたが、今では全然だ。


 そして体の中の枷が外れた感触が、脈動の音になって体全体に響き渡る。


 レベルアップによる開放感だ。


 このレベルアップの直後が、ハンターの中で一番危険と言われているレベルアップハイだ。


 開放感は高揚感へ、高揚感は全能感に直結し、特攻してしまったり、後衛の魔術師が前衛まで出張ってしまって怪我を負うのだ。


 下手をすると死に繋がる。


 一人だけならまだしも、パーティー全体の調和が破壊され惨事と化す。


 なので、現在ハンターズギルドは直接的な経験値の吸収を禁止している。


 勇者とか、英雄的な神懸かったパーソナルスキルお持ちならどうかとは思うけど、私程度のスキルではめちゃくちゃ怖い。


 さて、内容はウチで確認するとして、お菓子屋さんだ。


 あまーい匂いと兎のマスコットの可愛いお店だ。


 中心付近へ歩いて十分。お菓子屋さん『マーチラビット』が見えてきた。


 いつ来てもワクワクする。


 ドアの前に立ち一つ深呼吸をする。


 そんな私に、


「はい、姉さん」


「ん?さっすが我が弟!分かってるぅ!」


 マルクが今回のお宝の銀貨を一枚私の掌にのせた。


 そして、


 方向転換してユーゴに掌にものせた。


「お、おぅ…こんなにいいのか?」


「大丈夫。今回の実入りと合わせて臨時ボーナス出せるぐらいだから」


「済まないな」


「いや、ほんと大丈夫なんだってば」


「リーダーから会計迄やらせてさ」


 ユーゴが申し訳なさそうに頭を下げる。


「まぁー姉さんには任せられないよね?」


「ぷっそれは違いない!」


 あははと笑い合う二人に目もくれず、耳もくれず、マーチラビットのお菓子の園へ一歩を踏み出す。


 ふ…わぁぁぁぁん〜


 はぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜


 毎度感じるこの至福感………


 そして出迎える、三月兎のマスコット!


「はぁぁぁい、いらっしゃーーーーい!


 あら、嬢ちゃんかーーー」


「うん。また来たよ〜」


「何でもあるよ〜?選んでいきな〜〜」


 このお店は小さい頃、まだお父さんの稼ぎで十分裕福に暮らせていた頃よく来たお店だ。


 しかし姉妹が増えるたび、足が遠のいていった。


 そんな私がハンターを始めてから、儲けが出る度に少しだけ自分のご褒美に通うようになっていた。


 マルボロおじさんも、小さい頃の面影を見て思い出し、すぐに色々とサービスしてくれるようになった。


「うーーん。じゃぁ……」


「ちょっと待った。」


「うん?」


 ユーゴが真剣な顔でこっちを見てる。


「な、なによ…」


「レナ、俺じゃぁよくわかんねぇから…その…選んでくれよ」


 あっそういう事ね?


「うんうん。わかった!私に任せといて!」


「このクッキーは外せないでしょ?シュークリーム…あっ!シュークリームは今日中に食べてね?一応飴玉も必要よね?他には…」


 〜・〜・〜・〜・〜


「マルク…レナすげーな?」


「アレが姉さんのストレス発散だからね」


 マルクはニコニコしながらどこか悔しそうな顔をしている。


「おっ?どうした?」


「いや、本当なら男として僕が前衛を張らなきゃいけないのに…こんなパーソナルスキルだったばかりに…」


 いやいやお前『魔人』のパーソナルスキルは、魔術師だったら喉が出るくらいのラッキースキルだぞ?


 因みに魔人のスキルレベル1で得られる『魔道』は全属性に対し適正を得る(但し、得手不得手は別)。


 マルクは元々木属性と相性が良かったが、このお陰で木属性の雷や風に精通し、この歳で同大属合一治癒の大魔法創造に達している。


 そのお陰でどんな負傷も立ち所に癒してしまう。


 法術師も真っ青の腕前だ。


 装備品のテンマンズロッドは少し前に、遺跡探索の宝物庫隠し部屋に眠っていた。


 鑑定をかけると、遥か東欧の嵐のカミサマの使った杖らしい。


 ランクは二等星級、木属雷、木属風、水属雨と更にマルクの魔術師のランクを底上げしている。


 こんな攻撃にも回復にも回れる魔術師はザラにいない。


 更に、戦闘指揮と会計を引き受けて運営にかけても一級品。


 全く、このオリオンズ・ベルトはお前だけで持ってるようなものだ。と俺は思ってる。


 俺のパーソナルスキル「器用」何て一体どうしろと…


 〜・〜・〜・〜・〜


「何二人して暗い顔してるの?」


「えっ?あっ早いな」


「何言ってるの?もうここに入って30分は過ぎたわよ?」


「ほら!マルクも、しゃんとして」


「あ、あぁごめん。ちょっと考え事してた」


「はぁ〜、だから悩み事があればお姉ちゃんにちゃんと言って?」


「あぁ、ごめん」


 いつものマルクに戻った。


「はい」


 一枚のカードを手渡した。


 この中に沢山のお菓子が詰まっている。


 今からこのカードから出されるお菓子を見た時の、子供達の顔を想像するだけでお腹いっぱいだ。


 むふぅぅ〜。


「じゃぁ嬢ちゃんたきてね〜〜」


「はーい」


 さて、今度は街の南東にある我が家だ。


 途中反省会がてら話ながら歩き、すぐに修道会の隣の建物に着いた。


 ユーゴだけ入って行ってすぐに戻ってきたがちょっと浮かない顔をしていた。


 何でだ?お菓子攻撃は効かなかったのかな?


 そして、無理矢理元気を出したユーゴを気遣いながらうちに到着。


 母屋に入って母さんと姉妹達にお菓子渡し、隣の武器庫兼離れに向かった。


 180センチ位の高さの武器庫に、アイアンシールドとモーニングスター、そして鎧棚にプレートアーマーのカードを収納し、中二階に上がった。


 二人とも椅子に座っていて、真ん中に置いてある小さなテーブルに水を入れたコップを三つ置いていた。


「でぇ?どうしたの?」


 単刀直入に切り出した。


 こんなのは時間が経てば聞きづらくなる。


「うん…。今日助けた人達を一時的に修道会うちで面倒見ることになったんだ」


「あぁ…」


「そう…か」


「ちょっと見ていて辛くてな」


「そうね…。」


「仕方ない…とは言わない。


 それは修道会での仕事だから。


 でもユーゴ、酷なことを言うようだけど…」


「あぁ、わかってるよマルク。心配かけちまってすまんな」


「いや、ごめん」


「あぁ…いいんだ」


 …

 ……

 ………


「あーーーーーーー!!」


「「ぅお!」「ぅわ!」」


 二人が何事?っという顔をしている。


「一々辛気臭い!!頑張って早く復帰させてあげればいいじゃない!!以上!!!」


 …

 ……

 ………


「「ぶっ!」」


「「あーはっははははははは!」」


「な、何よ〜」


「「いやー流石姉さん「レナ」だなって」」


「何よ…心配してあげたのに…」


「いやいやサンキューレナ。楽になったよ」


「じゃぁリーダー?」


「では今回の反省はもう済んでるから、次に皆のレベルアップ状況を確認するよ」


「「うん」」


「先ずは僕から…ん〜前回と比べると…MP、木術、陰術、魔人のスキルが一つづつ上がってる」


「「スゴ…」」


「ねぇマルク…」


「姉さん、他のパーティー行けとか…「言うわけないじゃない!!」」


「んっ?」


「うちのパーティーにずっといてね?」


「ブフォッ!!」


 ユーゴは吹き出し、マルクは呆然としている。何か間違ったこと言ったのかしら?


「ハハハッ姉さんに『普通』を求めた僕が馬鹿だった…」


 笑いながらこっちを見た。


「ナニヨソレーヒドイワー」


 一頻り笑われた後、


「じゃぁ…ユーゴ」


「ん〜俺は…小剣、中剣…あれ?全部上がってる?


 でも器用が1になってる!?


 違う!器用が匠になってる!!!


 ラ、ランクBだとぉ!!?」


 ん〜!


「おめでとう!!


 パーソナルスキルがランクアップするの初めて見た!!」


「凄いな…流石ユーゴ……」


「お、おぅ…有難う」


 ユーゴは左手で胸を押さえた。


 そして、両手を見つめながら閉じたり開いたりしている。


 余程嬉しいらしい。


 何だろう…チームメンバーのランクアップは私も嬉しいし誇らしい。


 冷めやらぬ興奮の中、私の番が回ってきた。


「じゃぁ、姉さん最後」


「うん。私は……何も変わってないや…」


「う、うん……」


「そ、そう言うこともあるって!」


「そう…そうよね!!?


 次で絶対決めてやるんだから!!


 見てなさいよ!!ステータス!!!!」


 大絶叫が木霊した。

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