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オレをスキ過ぎる姉達がマジで怖いんですが!!?  作者: 低脳イルカ
ブルガルド王国行脚編 ルーノ編
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七章 15

 俺の目の前で、アイツが笑ってポロポロと崩れていった。


 生前を思わせるような、可愛い笑顔だった。


 周囲のゾンビも、糸が切れた人形のように倒れていく。


 けれど、誰もが和かな顔をして崩れていく。


 誰もかれもが顔見知りだった


 俺に続いた狩人ハンターも、守護騎士達も皆泣き崩れている。


「ぅあ…ああああああっ…」


 所々で嗚咽が聞こえる。


 俺の口からも漏れている。


 全てが終わったのだと分かっている。


 一瞬だが、アイツの笑顔を思い出せた。


 …また掬えなかった。零れ落ちた。


 けれど、あの顔は確かに…俺に向かって微笑んでいた。


 俺は今日一日、ずっとここで過ごしたいという衝動に駆られた。


 だが、俺はこの街のハンターズギルドのマスターだ。


 顔を上げて天を仰いだ。


 涙を籠手で拭い、すぐに駆け出した。


 ◆◇◆◇◆


「義姉さん大丈夫?」


「あぁ…中々しんどかったな」


 ヴェール義姉さんは制限武具アームズを封印して、普通の装備に戻してへたり込んでいた。


 あのヴェール義姉さんが疲弊している。


 とんでもない焔と体力を持ち、魔獣を蹂躙する闘神がだ。


 かなり近場で闇による侵食を受けたからだろうか?


 けれど、今は佛の恩寵の中で全てが安定している。


 未だ、恩寵が途切れないのが凄まじい。


「なぁレンよ」


「何?」


「お前、もうちっと光気の練習やれ」


「でもな〜」


 いまのオレには、真面にあれに対抗できる術がない。


「その娘がいなきゃ、アタシら死んでたぞ?」


「うん」


「で、その娘はなんだ?」


「僕は弟子です!弟子のマリーです!」


 マリーが俺の返答を遮った。


「お前…弟子作るの早いぞ…?」


「いや〜何というか…」


「頑張って弟子にしてもらいました!」


 フンス!っといった顔で希望に満ち溢れた顔をしているマリー。


「…まぁいいさ、今日はスカッと呑んで食って寝たい気分だ」


「今日は付き合うよ」


「当たり前だ」


 ◆◇◆◇◆


 一度報告のためにギルドに戻った。


 ギルドマスターの部屋はかなり混雑していた。


 人的、物的の被害の取りまとめに埋もれている感じだ。


 恐らく明日もこの調子でまともな業務は行えないだろう。


「ヴェールさん、レン君、マリーは今日はもういい。お疲れ様!」


 デュランから聞けたのはこれだけだった。


 外に出て、マリーが袖を引っ張ってきた。


「師匠〜これ止まらないんですけど…」


「はっ?」


 道具袋から取り出した本が、未だ淡く光っている。


「えっと…マリー。それわざとやってたんじゃないの?」


「違うんです。ずっと止まらなくて、師匠からもらったお薬も後一包みしかなくて…」


「成る程、だから効果が継続しているのか…」


 さて、どうするか…。


「何パターンかあるけど、やり方がわからない場合は取り敢えず魔素切れするまで待つか、気絶させるかだなぁ…」


「気絶!?」


 マリーがビクッと身体を震わせる。


「結局、無意識に魔素を送り込んでるんだろうから、そこを断ち切るには意識を立つのが一番という話さ」


「えぇ〜痛いの嫌です〜」


「大丈夫だマリー。流石にここでは使えないけど、痛くない手段があるから」


「えっ?あるんですか?」


 ◆◇◆◇◆


 一旦ヴェール義姉さんと別れ、ハンターズギルドに入り直す。


「あれ?レンさんどうしたんですか?」


「いや、ちょっとね。それより、ギルドの仮眠室借りてもいいですか?」


「あっ、はい。どうぞ。じゃぁ、これに記帳してください」


「じゃぁマリー、これに書いて」


「えっと…レンさんが泊まるのでは?」


「いや、泊まるのはマリーです。今日使った魔術が止められないらしくて…」


「それと仮眠室はどう関連が?」


「寝ると魔素の流出を止められるんです。然も短時間なので、態々家に帰る必要も無くて」


「成る程」


「じゃぁ借りますね」


「はーい」


 ◆◇◆◇◆


 仮眠室はガラガラだった。


 まぁ、これから多くなるのかもしれないけど…。


 カードを出して香炉を現出させ、枕元の机に置く。


 テキパキと快眠薬を調合する。


 マリーがベッドに横たわりながら不思議そうに見ている。


「師匠、それは?」


「眠り薬の一種だ。眠りを誘引する薬草と、快眠を促す香草を混ぜて使う事で、直ぐに眠りを深い所まで連れて行ってくれる」


「凄いですね〜、私の友達にあまり眠れないって子がいるんですよ」


「ん〜あまりこれに頼るのはお勧めしないけどね」


「そうなんですか?」


「よく効く薬ほど中毒性が強くなる。それはもう麻薬と一緒だ」


「えっ…」


「今回は眠りのきっかけだけに使うから極々少量。全くないとは言えないけど中毒性は微々たるものだ」


 香炉に火を灯す。


「それに、それだけじゃないからな」


 毛布越しにマリーのお腹に手を置く。


「師匠?」


 目を閉じてマリーの魄に干渉する。


「あ…れ……」


 マリーは既に、耐え切れない眠気に襲われているようだ。


「よし、成功だな。おやすみマリー」


 オレは席を立つと、部屋には森林の奥のような落ち着いた香りだけが残った。


 ◆◇◆◇◆


「あっ、早いですね?」


「そんなに難しい事してないしな〜」


「マリーさんは?」


「ぐっすりだ。そんなに長く寝てはいないと思うけれど、もし思った以上に寝ていたら起こしてやって」


「はい。頼まれました」


「オレは従魔に町の外の警戒をお願いして、街中をぐるっと見てから下宿してる宿屋の酒場にいくから」


「はい」


 ハンターズギルドを出て、門兵に頼んで街壁に上がらせてもらった。


 ゆっくり目を瞑って、マハと交信する。


 やはり、あの死の国の女王が作り出していたらしく、魔穴は存在しなかった。


 空は曇っているが、まだ夕暮れには遠い。


「あっ!」


 オレはひょいと街壁から飛び降り、ブラドとヒルデを召喚する。


 門兵が、建物二階分の高さから飛び降りたオレの身軽さに驚いている。


 そして、感覚共有でマハ、ブラド、ヒルデに周囲の警戒をお願いした。


 恐らく、今日はもう何事も無いかもしれないが、念には念を入れておくことにした。


 ◆◇◆◇◆


 街は思ったより被害は少なかった。


 共同墓地周辺も取り敢えず平静を保っている。


 もっと怯えがあると思っていた。


 恐らく、溢れてすぐにハンターと守護騎士達が抑えに入り、更に佛の恩寵で浄化された事が功を奏したようだ。


 アンデッドの浄化は、傍目から見ると凄く苦痛を受けているように感じる。


 聖水や、ターンアンデッドの法術を施された時、アンデッドは泣き叫ぶのだ。


 苦痛に耐え切れないという苦悶の表情を滲ませて。


 そんな状況を少なからず経験したことのある人達は、今回の佛の恩寵に様々な疑念を抱いた。


 街を覆う優しさと慈しみ、思い遣りの光の粒子が充満するのに、アンデッドは苦渋の表情を浮かべず、逆に恍惚の表情と感謝の笑み、ものによっては涙さえ浮かべて土に還った。


 アンデッド退治の概念を覆したのだ。


 恐らく、魂の救済が行われず、加えて身体を火葬されない為、魂が行かなければならない場所へ導かれない。


 又は、別の魂が腐った体に入り込み、体が腐りゆくダメージを魂が直接受け取るために、ゾンビなどの不死は絶えず苦しんでいるのだろう。


 つまり、死による魂と魄の繋がりを断ち切れていないのだ。


 生者であれば魂魄の繋がりは必定。


 しかし、死者はそれを断ち切って、あるべき場所へ送らないといけない。


 この世界は何処かおかしい。


 いや、この考えがおかしいのだろうか?


 今後の為に何か一手欲しいところだが、いつも相談していた師匠達があまり表面化しないのは何故だろうか?


 っと、考えても答えに至らない事を悶々としていると、下宿先に辿り着いた。


 そう言えば、今日は義姉さんに付き合うという話だった。


 オレは玄関ドアを開けて、周囲を見渡し義姉さんとカリオさんパーティーを見つけると、片手を上げてテーブルまで歩いて行った。

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