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オレをスキ過ぎる姉達がマジで怖いんですが!!?  作者: 低脳イルカ
ブルガルド王国行脚編 ルーノ編
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七章 14

 マリアは実家の書斎の地下室にいた。


 えーっと…これだ。


 手に取ったものは絵本だ。


 昔見た時は中には何も描かれていなかった空白の絵本だ。


 しかし今、マリアの魔力と自信に呼応してぼんやりと光っている。


 光が溢れるページを開くと、柔らかな光が溢れ出すように感じた。


「お爺ちゃん。これなんだね?街が危なくなったら、ここに逃げろって言ったのはこれのことだったんだね?」


 マリアは絵本を脇に抱え、外に待たせていたヒルデに飛び乗った。


「ヒーちゃん、行こ!」


「ヴォゥ!」


 ◆◇◆◇◆


 ヴェール義姉さんは奮闘していた。


 オレとデュランの二人掛かりで仕留めたギガンテスを、一人で二体受け持っていた。


 しかもきっちりダメージを与えつつ、再生を許さない焔の連撃でかなり押している。


 闘神の二つ名は伊達じゃない。


 誇れるオレの義姉さんだ。


「おら、終わったんならさっさと手伝いな!」


 義姉さんの背中越しに檄が飛ぶ。


 ついつい、握るグレイブに力が篭る。


「シャイニング・ギア・セカンド」


 高速の斬撃が、二体のギガンテスの首元を撫でる。


 スパッ


 っと、音が聞こえそうな勢いで、2つの巨大な首が台座から滑り落ちる。


 ヴェール義姉さんはトンッと足元から離れ、落下物を回避した。


「義姉さんお疲れ様」


「あぁ、レンも中々やるようになってきたじゃないか」


「レン君早いよ…」


 一足遅れてデュランさんが走ってきた。


「デュラン。お前が遅すぎんだよ。ちったぁレンを見習ったらどうだ?」


「そりゃ無理ですよ〜」


 オレと義姉さんは笑った。


 一息ついて三人で談笑していた。


「ウフフフ」


 ゾクッ…誰だ?


「ソコだね」


 ヴェール義姉さんが大刀を一振りして焔を迸らせる。


 焔が闇に阻まれる。


「あらあら、酷いですわぁ」


「アンタが黒幕かい?」


 ヴェール義姉さんは、空気が震えるほどの殺気を飛ばしている。


 しかし、相手は何食わぬ顔だ。


「あら?お名前を聞かせてはくれませんの?」


「どうせここで消えるだろ?」


 真っ黒なバトルドレスを纏った妖艶な女性が、いつのまにか立っていた。


「ンフ。そうはいきませんわ」


 顔の下半分を隠していた扇子を一振りした。


 瞬間、何かが襲ってきた。


 オレはまだシャイニング化しているため何とか避けた。


 義姉さんは焔、デュランは岩を盾に何かを弾いた。


「ンフ、中々やりますわね?」


「レン、見えたか?」


「一応。引く時に偉く撓って戻っていったから鞭の類だと思う」


「っと、うちの愚弟が言ってるが…?」


 そう言うヴェール義姉さんの頰を汗が流れる。


「あら、つまらない。たった一合でわかってしまうなんて」


 こっちは少しつまらなさそうだ。


「ぐっ…ぅぅ…」


 デュランが脇腹を抑えて片膝をついた。


 抑えた手からは血が滴っている。


「あらあら、まだこれからというのに…」


 完全には防げなかったみたいだ。


 しかし、岩の壁と超位モンスターの装備の二段構えでさえ易々と切り裂くのか…。


「デュラン。下りな」


「しっ、しかし…」


「弁えな、魔王クラスだ」


「はい…」


 ん?今…魔王って?


「あらあら、もうばれてしまったのかしら?」


「そりゃあね、まだまだ未熟だが、硬度だけならトップクラスのコイツの装甲を抜いたんだ。それくらいはあるだろ」


「良い推察をされますね?ご褒美です。私は死者の国の女王…」


 足元から黒い霧が地を這うように広がっていく。


 切り捨てたブロサイクロプス、ギガンテス、そして焼いて土塊となったゾンビが再び立ち上がり、形を成していく。


「そしてレン様、貴方に相対する魔王の複製体ですわ」


 ◆◇◆◇◆


「ま、また!?」


「ゾンビだと!?」


「焼き払ったんじゃないのか?」


「違う…これは死霊術で朽ちた体を再構成されています!」


 高位法術師の狩人ハンターが絡繰りを見抜く。


 だが、それだけだ。


「畜生!キリがねぇ!!」


「諦めるな!」


 岩の槍がゾンビを射抜き、串刺にして動けなくする。


 デュランが前線から戻ってきた。


 その姿を見て歓声を上げるが、残念な事に物量で押される。


「くっ…」


「デュラン様!傷を!」


 法術師の一人がデュランの脇腹の治療を始める。


「あぁ、頼む」


 デュランは傷の治療と並行して技を練る。


「一度大技を放って街壁内に戻り防衛に徹しろと伝えろ、完了したらオレに伝えろ」


「「「はい!」」」


 デュランを守っていた足の速い何人かが、勢いよく駆けていく。


 十分後…


「完了しました!」


「よし、絶槍…怒涛!」


 街壁の周囲を、岩の槍がやや外側に向けて弾けるように飛び出す。


「ふぅ…」


「デュラン様!」


「今度は何だ?」


 駆け寄ってきた狩人ハンターを見る。


「街の共同墓地が…溢れました」


 デュランは目を細めた。


 ◆◇◆◇◆


 全く…やりやがる。闇の帯域と定着とはね…。


 流石は死者の国の女王か…。


 レンは光気で闇の阻害を受けないが、アタシにはちょっと重いな…。


 レンが光の聖域とかそう言う技…使えんだろうなぁ…。


 さてどうする?


 このままじゃレンは耐えれるだろうが、アタシはフルリリースしても無理だ。


 そうすればこの戦況はコイツ一体で崩れる…。


 全く面倒な魔王だ…。


 ん…?


 何だい?この感覚は…?


 ◆◇◆◇◆


 くっそ…この霧を如何にかしないとジリ貧だ…。


 何かこの闇を払う一手があれば…。


「ししょー!!」


 オレは一瞬後方に跳躍しながら縦に一回転し、声の方向を見定める。


 マリー!?


 何故きた!?


 けれどこの霧の中何故普通に動けるんだ?


「レン!5分持たせる。あの子のとこに行きな!」


「けど!?」


「行け!!」


「分かった!?」


「フル!リリース!!爛れを押し付ける者!!!」


「ウフフ、漸く本気になってくださいますの?嬉しいですわぁ…」


 業火が装備している全てのモノから迸る。


 そしてそれは形を成していく。


 額、胸、腹、両肩、両肘、両膝。


 各所から生まれ出た九本の蛇が白い焔を振りまいた。


 ◆◇◆◇◆


「マリー!!」


「どうしてここに?」


「師匠!これ…使えると思うんです!」


「何だ?これは…」


「お爺ちゃんの書斎にあった本なんです」


 オレはその本をじっと見た。


「光気が…いや、違う。何か別のものが溢れている」


 受け取ると、光が弱まった。もしや…。


 いや、それは置いといて中に描かれている物語を読む。


 そんなに長くなく、数ページだ。けれど直感できた。


「これはマリーの触媒だ」


「そしてありったけの魔力を注ぎながら本を読むんだ」


「えっ!?」


「大丈夫!さぁ早く」


「はっはい!」


 ◆◇◆◇◆


 街は混乱の坩堝と化していた。


 共同墓地から親しかった人達の遺体が湧き上がってくるのだ。


 守護騎士達も二の足を踏んでいる。


「馬鹿野郎ォ!!」


 デュランは襲い掛かろうとするゾンビを突き刺して、共同墓地の最奥へ投げ入れる。


「甘えんじゃねぇぞ!」


 守護騎士の一人を殴りつけデュランは叫ぶ。


「死者が生者に取って代わるなんざぁ、あっちゃいけねぇんだ!!」


「で、でも、デュランさん…」


 一人の狩人ハンターが指を指す。


 その方向には、一昨年無くなったデュランの愛妻がゆっくりと近づいてきた。


 デュランは声にならない声を上げ、岩針の壁を作り出し、単身突撃した。


 ◆◇◆◇◆


 これは遠い遠い遥か昔の物語。


 ある所に、仲のいい二人の王様がいました。


 一人の王様は、嘆き苦しむ民を自分が佛になって救おうと考えました。


 もう一人の王様は地獄を進み、踠き苦しんでいる人を救おうと考えました。


 一人の王様は、悟りに辿り着き、民を救う力を得ました。


 もう一人の王様は、佛になる資格を得てなお佛にならず、死者を救う大悲の力を得て、地獄の旅を続けています…。


 ◆◇◆◇◆


 オレの中から知識が溢れてくる…


 手を合わせる。


 人間の手の作りから出来る非常に簡単な印形。合掌印。


「オン、カカカ、ミサン…」


 オレとマリーを中心に、大悲の心が光となって現れる。


 スゥッっと深く息を吸い込み。一音だけを正確に吐く。


「カーーーーーーーーーー………」


 光が流れる。


 黒い霧が濯がれる。


 闇の帯域が祓われていく。


 動いていた亡者が歩みを止める。


 それはそれは不可思議な光景であった。


 この世界では見たこともない光景が広がった。


 亡者が涙を流し、歓喜の表情を湛え土塊に帰るのだ。


 光と闇の闘争の世界で、初めて死者の救済が成された瞬間だった。


 ◆◇◆◇◆


「うっ…うぅぅぅ……」


「なんだいこりゃぁ…頗る調子が良くなってきたよ。アンタもそうだろう?死者の国の女王様ぁ…?」


 目の前の魔王から、何回も何回も黒い霧が溢れ出す。


 その度に優しい光が包み込み、結果、闇の帯域が生まれない。


 しかも、息をすることすら難しそうだ。


「一気に決めさせてもらおうか?」


 アタシの九頭の蛇が狙いを付ける。


「くっ…」


「ボッ、「「「「「「「「ボオオオオオオ!!!」」」」」」」」」


 九頭の蛇の口から放たれる白焔の集中放火だ。


「ハハハッ!いい焔だろう?気に入ってくれたかい!?」


「「「「「「「「「オオオオオオオオ!!!」」」」」」」」」


「くっ!」


「「「「「「「「「オオオオオオオオ!!!」」」」」」」」」


「こっのっ!」


「「「「「「「「「オオオオオオオオ!!!」」」」」」」」」


「ぐっ、がぁぁぁぁぁ!!」


 一気に闇を噴出させ、白焔を吹き飛ばす。


 しかし、闇の盾で受け止め切れなかったのか身体のあちこちからブスブスと煙が上がっている。


「今日…は…帰らせて…頂きますわ……」


 もう、ここにいること自体が苦痛なんだろうな。


 魔王の複製品でさえ息も絶え絶えだ。


 でもな…。


「させねーよっ!」


 既に大刀を振り下ろすだけの状態で、眼前に迫る。


「がぁっ!」


 大鎌がアタシの一撃を受け止める。


 しかし、受け止め切れずに吹き飛ばされる。


 よしっ、詰めて…


 アイツはニヤッと笑うと、不安定な魔穴を背後に発生させ吸い込まれた。


「チィ…」


 ヴェールは悔しそうに魔穴を睨みつけ、叩き切った。

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