七章 12
俺とデュランさんが所定について、三十秒もしないうちに爆裂弾の爆発が響く。
俺は距離をとって、飛燕と爪牙の同時攻撃を試み、放った瞬間にギアを使って撤退する。
デュランさんは俺以上に距離を取っていたが、恐らくあれも森槍なのだろう。一歩も動かず、構えもせず、何十もの穴を開け破壊した。
マリーとカリオさんのパーティーは俺の行った通りに事を進め、爆風に巻き込まれつつも無傷でやり過ごした。
誤算は、マリーが思った以上に魔素制御が上達していて、金剛符によって発生した金属の壁の出来が凄すぎたくらいだ。
これなら、マリーが魔術師として機能していれば、たった一人でこの作戦を遂行できただろう。
弟子でいいのか本気で悩むレベルだ。
さて…
最初の指示通り、退避させていた荷車に移動した。
「後はルーノだな…」
デュランさんは心配そうだ。
「いえ、ドレファンさんにお願いしていた事が許可されていれば、恐らくもう終わってるはずです」
「レン。お前何を…?」
カリオさんが聞いてくる。
「助っ人を一人。呼んでおきました」
「助っ人?」
「はい。強力な助っ人です。あーちょっと待って下さい。」
俺は一旦荷車から出てすぐに戻る。
「どうした?」
「まぁ…一応保険です。それじゃぁ皆んな乗りましたね?じゃぁマリー、さっき渡した符を」
「はい!『瞬転』!」
渡した符がボゥっと燃え上がる。
………。
「なんだ?何かの魔術が発動したようには感じられたが…?」
デュランさんが口を開く。
「じゃぁ行きましょうか」
俺はカーテンを開けて外に出る。
「こっ…ここはギルドの練武場じゃねーか!」
カリオさんが声を上げる。
「はい、だからこのメンバーで結晶魔穴を破壊しに行ったんです」
「成る程…口止めか」
デュランさんの一言が入る。
皆んな顔を見合わせていたが、マリー以外は事態を飲み込めたらしい。
「はい。信頼の置けない人にこれを明かすのはちょっと…」
「あの〜師匠…?」
マリーに皆んな注目する。
「ま、あれだ。弟子の面倒は師匠が見るものだしな…」
デュランさんはさっさとギルドホールへ向かう。
「おら、外に加勢に行くぞ!」
カリオさんはチラッとこちらを見て、パーティーと上がっていってしまった。
マリーが今か今かと瞳をキラキラさせている。
「マリー。取り敢えず後で話すから外に行こうか」
「え〜絶対ですよ!?」
もうちょっと察しが良ければなぁ…
◆◇◆◇◆
街を囲う壁から外を見ると異様としていた。
そう、街の外が揺らめいているのだ。俺は分かっているが皆んなが慌てた。
「畜生!間に合わなかった!!こんな事をした野郎をぶっ潰す!!!」
カリオさんが吠えている。まぁ無理だろうけど?
「くっ…一体何が…」
デュランさんも分かってない。まぁ多分焼き尽くしたんじゃないかと…。
周囲を見ると「この世の終わりだ」とか、「神さまぁ…」とか様々に今の状況を悲観している。
「ま、まぁ…大丈夫だと思いますよ?」
「「「「「「「何で!」」」」」」」
「ほら…元凶が来ました……」
デュランさんやカリオさん一同が門を見ると、大剣を担ぎちょっとだけスカッとした表情で歩いてくる闘神がいた。
「おせーぞーレーーーーン?」
「ヴェー…ル…さん?」「姐さん…?」
「ごめん、早く戻ったつもりだったんだけど…」
「あぁ?こんなただのアンデッドに時間なんか掛かるかよ」
「でも結構いたんじゃない?」
「あぁ、一回燃やした後に二回も増えやがってな?制限武具使えりゃもっと早かったんだがな?」
ジロッとデュランを見る。
制限武具は管轄のギルドマスターの許可がなければ纏えない。
「おーぅデュラーン…お前弟子にどう言う教育してんだぁ?」
「えっ…」
「ちょーっと相性が悪いくらいでビビっちまうとは、鍛え方が足んねーんじゃねーのか?」
「あ、あははは…」
「全部、切り刻んで埋めちまえばいいだけの話だろうに…」
確かに…いくらアンデッドといえど、細々に切り刻まれて埋められたら再生は難しい…。
「ま、アタシが全部燃やしちまったがな?」
ガハハハと笑っている。流石は我が義姉である。
「ヴェールさーーーーーん!!
ヴェールさん……あれ?ギルマス?」
「あぁ?」
ダンさんが、慌てて走ってきた。
◆◇◆◇◆
ダンさんが燃えているアンデッドの片付けをしていると、俺達が向かった先から黒く蠢く集団を発見した。
しかし、距離の関係で相当な巨体であると察知し、相談に来たとの事だった。
「ん?方角からすればそれは俺たちが先ほどまでいたところではないか?」
そうだ…これは何かがあの場所で起きている。
(マハ……)
保険として残してきたマハと感覚共有をはかる。
(なんてこった…)
破壊した結晶魔穴から拡散した高濃度の魔素が、積層型の召喚陣を構成している。
(どう言う事だ…って考えてる暇ないな…)
「ヴェール義姉さん!ブロサイクロプス多数!ヤバイのが三体!!ギガンテスだ!」
「全く忙しねえなぁ!!デュラン!制限解除!!」
「は、はい!」
ヴェール義姉さんはデュランさんに向けてシーレッドカードを掲げる。
「承認」
デュランさんの言葉に、シーレッドカードカードが薄く光って応える。
「デュラン!お前も来い!!」
「はい!勿論です!」
「カリオ!お前は避難誘導だ!!」
「はい!姐さん!」
「レン行くよ!」
「うん!あ…マリーも避難誘導手伝ってね!?」
「は、はい!でも!あの!」
マリーが何か言いたげだったが、今はアイツを止めるのが先だ。
「ごめん、あいつを止めてから聞くから!」
言うが早いかヴェール義姉さんを筆頭にデュランさんと俺が続く。
◆◇◆◇◆
既に、
「あーありゃ確かにブロサイクロプスにギガンテスだな…。
まぁ、鬼神に比べりゃどうってことは無い。
さぁ、やろうか…解放爛れを促すもの」
「久し振りだから緊張するが…まぁ、やるか。
解放穿ち尽くすもの」
「なんか…そういうのかっこいい……」
俺だけ決め台詞ないの悔しい。
と思いながら三人が完全装備になる。
「ほーそれがレンの装備か…期待してるぞ?義弟よ〜」
「まぁ…ブロサイクロプスならなんとかいけると思うけど…ギガンテスは…」
「まぁ、今回はドレファン直接の依頼もあって、完全解放も問題ないからな…二体はアタシが相手してやる。ドレファンは一体やれ。雑魚はレンだ。終わったら手伝え」
ブロサイクロプスを雑魚という義姉に疑問を抱きながら、以前のブロサイクロプスの事を思い出す。
よく考えれば一週間やそこいらが遠く感じることに驚く。
(なんか本当に死に急いでいる気がする…)
そして思う。以前倒した時はルーとスーの助けがあった。けれど、今はない。
確かに、この装備と宿るスキル。そして『ギア』。できるかどうかはわからないが色々試してみるしかない。
まだ一度しか発動したことがない。『鬼力解放』。
けど…出来るはずだ。共に戦う覚悟は出来ているのだから。
心の元となる魂、身体の元となる魄。
身体を包む鎧。身体を構成する皮、肉、骨。
魂は一つ所に集まる。けれど魄は違う。
身体の至る所にあり、何時も身体を活かす為に在り続けている。
それは骨の中に存在し、気道を伝って全身に回る。
その魄を高め、増やし、力に頼らず、意志で、肉へ皮へ外へと伝えていく。
包んでいる鎧さえも身体の一部となった時、守る為の鎧は共にある為の一部と成る。
そう、武具が分かるなら武具は進んで能力を開示する。
共に在る為に。共に生きる為に。




