七章 ❾
「ふんふん…そーなんだー…」
「成る程…見れば見るほど奥が深いわ…」
「ドレファンさん…この方々は…?」
顔つきもそうだが何もかもが一緒?違うのは服装だけか。んー双子だよね?
いま、その二人が俺の符を持って眺めたり、魔素を通したりと大忙しだ。
「あー私の部下でね?魔術や法術に関して担当させているんだよ。
私も流石にそっち側には疎くてね?ほら、二人とも挨拶だ。
あー研究対象に夢中になると見えなくなるんだよ…周りが…」
「んードレファン煩い!ちょっと静かに!」
「そうですよ!インスピレーションは突然にやってくるもの…
しかし姉上、私達でも解析はここいらが限界ではないですか?」
「ん?んーーーまぁ…そうかも…?」
「ここは一つ、製作者に直接ご教授してもらってはどうでしょう?」
「なーんか癪だけど…いいわ、聞いてたげる」
なんだ、この上から目線。見た目法術師っぽいけどギャルっぽいんだけど…。
「申し訳ございません…姉上の言葉遣いには目をつぶって欲しいのです」
いや、まぁ…良いんだけどさ…。っと
ドレファンさんの方を見ると、マリーとなんか話している。
あーそう言えばデュランさんがなんかマリーの事で話してたらしいからなー。
「ねー聴いてるー?」
「あ、ごめん…で?」
「なんでこんな古臭い文字なんか使ってるのって話ー」
「あぁそれか。今使われてる共通語では言霊が薄いからさ」
「言霊とは?全く聴いたことのない言葉ですよ?」
「言葉…いや文字に宿る概念や、その言葉を表す時に発する音の羅列の事さ。
今使っている言葉は、一つの文字に意味を持たせるものではなく、何種類かの記号みたいな文字を組み合わせて、意味ある言葉を作るでしょ?」
「まぁ、そうかもー」「ふむ」
「けれど、この古代語は一つの文字に強い意味…もしくは複数の意味ある文字を結合させて一つの文字にしてより断定的な意味を導き出す。
更にその文字を別の意味を表す文字と組み合わせて、更なる言葉を紡ぎ、確定させていたのさ」
「するとー?」
「それが長く使われる事で、一つ一つの文字の持つ意味や音が世界に浸透して世界がそれを認める。
そしてこの古代語は、力ある言葉として世界に影響力、干渉力を持つようになる。
それが…」
「「言霊!!」」
びっくりだな…自分の中になかった『概念』を、分析して自分のものにする理解力と、それを反発なく自分の中に吸わせるだけの包容力がこの二人にはある。
「成る程ー」「分かりやすいのー」
「んー?すると共通語の言霊が弱いからー?」
「それと、共通語の長さかな?」
「何方も当たりだよ。今の言葉は世界に受け入れられにくい上に、時間も経ってないから言霊、つまり世界への干渉力が弱い。
そして、だからこそ符に記述しても小さな力しか顕現出来ず、符に記述する際にとんでもなく長い文章になる。
そうすると、最早『符』ではなく、『書』のレベルになってしまうし、携帯性も悪く、一度で燃え尽きるから対価に合わない」
「うげー」「姉上」
「でもでもー」
「ん?」
「では何故今の共通語が普及したんでしょう?」
「推測ですが…先ず、言霊の有用性に気づかず、符と言うもの…もしくは類似したものを発明出来なかった。
そもそもこれがあれば、こんなに職種に縛られる世界が確立してないでしょうし、もっと便利な世界が出来ていたはずです」
「確かにー」「そうですね」
おっ、ついて来てる。流石、ドレファンさんの部下。
「次に考えられるのは、身も蓋もないんですけど…時間と手間、地位の確立です」
「えっ」「なっ」
「人が増えるにあたって、効率を求めるようになり、多くの国民に素早く理解させる為の手法が必要になる。その時、古代語では古代語自体を覚えるのに時間が掛かり、しかも、理解するときに色々な知識も一緒に覚えたり繋がりの重要性を身につける為、知的レベルが上がってしまう。
しかし、知的レベルを引き上げると不平不満が発生しやすくなる。
その何方も嫌った時の為政者が、苦心して今の言葉の仕組みを作り広めたのではないでしょうか?だって、割り振られた意味すら忘れ去られようとしている簡単な記号のような文字を、横方向に置くだけで意味のある言葉が出来るのですから」
「つ、つまりー馬鹿になるように仕向けたってー事?」
「結果的に…ですが…」
「で、でも…筋は通ってます…」
「ただ、効率よく言葉を覚えさせるには間違いなく共通文字が一番ですよ。
しかし、これから御二方が様々な符を作り、王国の産業とすることができるのなら、古代語の復活もあり得るかもしれませんね?」
「やる!」「姉さん!?」
「あぁ、もう一つだけ」
「何?」「何でしょう?」
「今、あなた方の元に『気石』と言うものがあると思います」
「え…と」
「少し前にドレファン様が持ってきて解析してるヤツよ姉さん」
「あーあれ」
「あれと同じく、符の土台となるモノを貴重なものとする事で、符の耐用数を引き延ばすことができます。
逆に言えば、『気石』にも同様のことが言えます。
なので、安価で対応数の少ない符と、高価だけど数回にわたって使うことの出来る符と言うものもできます」
「成る程」
「あとは、もう気づいてると思いますが、使い手によってその効果は増減します」
「何となくー」「魔素が関係しているんですね」
「そうです。そこをきちんと理解せず、符だけ集めても何の意味もないんです」
「うんうん。分かったー」「おおよそのことは…」
「では、マリーに渡しているものと同じ符を…」
「くれるのー!?」「い、頂いても!?」
「あとは古代語の解読と、台紙に使う素材の選定で直ぐにでも作れるとは思います」
「い、いい人ー!」「ね、姉さん!やめなさい!」
姉に抱きつかれた。
「じゃぁ最後に…」
「「?」」
「お名前は?」
◆◇◆◇◆
姉の方はポーラ、妹はレーナだそうだ。
たったこれだけ聞き出すのにどんだけ時間かかったんだ…。
で、マリーと話をしているドレファンさんに声をかける。
「何の話をしてるんですか?」
「あーレンくん。もう話は終わったのかい?」
「まぁ…概念も理解できてるし、元は古代語、そしてサンプルもあげたので恐らく半月で試作品位なら出来るんじゃないですか?」
「そうか。あの子達は『解析』の特殊能力保持者だからね。連れてきて良かったよ」
なんかホクホク顔だな?
「なんか他に良いことありました?」
「あぁあったよ。彼女は特殊能力保持者だ」
「やっぱりか…」
「気付いてたのかい?」
「薄々は…普通こんなに莫大な魔素許容量を持っている子は人族で見た事ないですし、触媒も既製品が使えない。そうすると…ね」
「そうだね。まぁ気付いてるとは思うんだけど、その原因の一端はお爺さんの彼女に課した特訓かな。それが彼女の特殊能力を刺激して、莫大な魔素許容量を獲得したらしい」
「はえ〜」
マリーは呆けている。
「恐らく彼女の特殊能力はランクCの魔素許容量上昇だと思う。レア度としては低いんだけれど、量が量だけにランクBからB+に属するかな」
「ドレファンさん、触媒の選定とかは出来ないんですか?」
「んー流石に王城じゃないと無理かな。ただね、こういった場合身近で思い入れの強いものが触媒になるケースが多いんだ」
「成る程…」
「それに明日の事も考えれば、今すぐに触媒を探すのではなく、符術との親和性を崩さないようにした方がいいだろうね」
流石ドレファンさんだ、分かってる。
「と、言うわけだマリー。後で王城にも出向かなければいけないし、触媒探しも『作戦』が終わったら手伝うから、今日は体を休めてくれ」
「でも師匠!ドキドキして眠れません!」
「レン君…君はルーノ《ここ》でも弟子をとったのかい?」
「弟子になりたいと言われたので…」
「程々にしないと…」
「き、気を付けます…で、だ。マリー、眠れないならこれだ」
「師匠、これは?」
「まぁ簡単に言うと誘眠香だな。深い眠りに誘う成分の入ったお香だ。
一式貸してあげるから使ってみるといい。明日の朝まで一直線だよ」
「しっ…師匠凄いです!」
ぐっ!
ん?何この肩に乗っかる圧迫感は…。
「レン君…それもっと詳しく…」
いや、もう明日にして…。




