七章 ❻
「なんだ?」
姿を現したのは魔穴。けれど、水晶が魔穴を覆っているタイプだった。
こんなのは見たことがない。強烈な魔素を感じるが…まぁ、当たって砕けろだ。
「ハァッ!」
一閃!袈裟斬りで両断した。
…軽い。あの強烈な魔素からすると何か…。
ん!!!
ゾクッ
俺の中の何かが叫ぶ。ここは危険だと。
今魔穴を両断した場所から強烈な魔素の圧縮を感じる!
「ブラド!駆け抜けろ!!」
言うが早いか、ブラドは駆け出していた。
ブラドも直感で危険と判断したんだろう。
ヒュゥゥゥウウウウウ!!!
魔素の圧縮が加速する!
ポォーーーン
ドォォォオオオオオン!!!
ブラドと共に背中から光に包まれた。
◆◇◆◇◆
「っと、言う訳です」
「レン君…君…よく生きて帰れたね?」
身体の至る所を包帯でぐるぐる巻きにしてある。丸薬で応急処置は施したが、かなり危なかった。
「まぁ、ブラドのおかげですかね?」
「ブラドは君の魔獣だったっけ?はぁ〜しかし、出来れば相談して欲しかったなぁ〜」
ブラドも重傷を負ったが、こちらも丸薬で殆ど回復している。
ハンターズギルドルーノ支部ギルマスデュランは溜息をついた。
「いいかい?もし君の身に何かあってご覧、君のお義姉さん方からどんな仕打ちが待っているか想像もつかないんだよ?もうちょっと、自分の身の安全をね?」
「はっ…はーい」
「で、後二つを壊せばいいのかな?」
「いいえ、三つです」
「それだと計算が合わないじゃないか?」
「再生しました」
「何っ?」
「俺がのたうち回っている間に、他のポイントから魔素の供給が行われて元通りです」
「なっ…。じゃぁレン君が破壊したのは無駄骨だったって事かい?」
「何言ってるんですか、ちゃんと…
❶破壊可能
❷破壊すると十秒以内に魔素爆発する
❸魔素爆発後、他のポイントからの魔素の供給後再生する
❹魔獣が三十体程現れる
っと言うことを確認できました」
「…ん?ちょっと待て、最後の魔獣が三十体程現るってのはどうしたんだ?」
「今回はマリーが吹き飛ばしました」
「な、何?どう言うことだ?あの子にそんな力は…」
「ありますよ。基礎魔術だけですが、使えるようになりましたから」
「いや、基礎魔術だけで魔獣三十体を屠るには相当な回数を放たなければならないだろう?そんな魔素許容量が…」
「ありますよ、彼女には…」
◆◇◆◇◆
「グッ…ッハ…いってーー……」
身体中がズキズキと痛む。
俺とブラドは爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた。
横ではブラドも苦悶を顔に浮かべているが、俺程じゃないみたいだ。
今の俺は、かなりの軽装備で来ていた。鬼神の武具なら何とか耐えきったかもしれない。
「レンさん!」
離れていたマリーとヒルデが全速力で駆け寄ってくる。
腰のポーチから丸薬の包みを四包取り出して、俺とブラドで二粒ずつ飲み込む。これだけで十分回復ができる。
「ッハーーーーー」
「大丈夫ですか?」
「あぁ…問題……あるね…」
俺はマリーの肩越しに、中央の窪地に発生した魔穴から次々と発生する魔獣を見えた。
「えぇっ?嘘ぉ!!?」
マリーも俺の視線に気がつき、昨日のゴブリン以上の質と数の魔獣が上がってくることに絶望を感じている。
「マリー落ち着け!…本当は自分で気づいて欲しかったけど…しようがない!マリー!」
「はっ…はい!」
「これをあげる。火球符を手前にして今渡した突風符を重ねるんだ!そして何方も表面は魔獣に向けるんだ!」
「は、はい!」
直ぐに言われた通りにする。
「後はあの魔獣の群れに照準を合わせて魔素を叩き込んで思いっきり放て!」
「はい!…ふぅぅぅ……」
…おいおい……ありゃ、相当に魔素突っ込んでないか?
「やぁぁぁああああああっ!!!」
特大の火球が暴風を纏って現れる。
そして、とてつもないスピードで突き進み、着弾と同時に火炎旋風を巻き起こす。
ッヴォォォオオオオオ!!!
たっぷり十秒間だった。恐らく、火炎旋風の中では阿鼻叫喚さえ起こらなかっただろう…。
三十体もの屈強な魔物たちは消し炭と化した。
◆◇◆◇◆
「んん…それは符だっけ?それの恩恵ではないのかい?
しかも符によって魔術を使えるようにする何て聞いたことがない…」
「まぁ符術に関しては俺のオリジナル何です。
ある程度使い込んでから、国に提出するつもりだったんですけどね」
「成る程…オリジナルか…。レン君は聖戦士候補だったよね…。
国に提出するのなら、今下手に騒ぎ立てるのは良く無いだろうね。
その符に関することは箝口令をしこう」
「有難う御座います。あと、マリーの成果についてですが、重奏符による効果は大きいと思うんですけど、基本的に符は注ぎ込まれた魔素分の働きしかしませんし、重奏符は消費魔素は一.五倍です」
「なっ?」
「でもマリー君は、今練武場で魔術の練習してるよね?」
「はい。恐るべき魔素許容量です」
「こっ…こんなに使える子だったとは…」
デュランはうっすら自嘲気味の笑みを浮かべた。
「しようがないですよ。適正触媒がわからないんですから。
そして、彼女の真価は適正触媒を手に入れてからでしょうね」
「あぁ、そうだろうね。今のままでは五種の基本術とその重奏符かい?それしか使えないからね」
「はい。なので、彼女には基本攻撃術の火球符、氷弾符、斬空符、土塊符、穿針符の他に、先ほど渡した突風符を始め、雷鳴符、轟雷符、炎流符、水流符、土流符、金剛符を渡す予定です」
「十二枚の符と重奏符か…とんでもないな…さっきの聞いた分の火力だけでも三等星に匹敵するんじゃないのか?」
「ん〜恐らく瞬間的な火力なら二等星にも届くと思ってるんですけどね?」
「そんなにかい!?は〜。レン君、君さ、この一件が終わったらしばらくうちで教師やってみないか?」
「はは、早く終われば考えます。先ずは、片付けちゃいましょう」
「分かった。で、どうする?」
「そうですね…」
◆◇◆◇◆
夕方を待って現在動ける狩人全員が集まるまで、地下の練武場で一人自主練しているマリーを指導することになった。
今も十人程観客はいるが、朝の一件を聞いているのかそれともマリーの変わり様を見てなのか誰も声を上げない。
「お疲れ様」
「あ、レンさん!」
「どう?少しは加減できるようになった?」
「はい!この位までは…」
そういって振り返ると、指先大の火球を飛ばしてみせた。
「ははっ…才能だね…こんな短期間であんなに繊細な魔素制御が出来るようになるとは…」
俺としてもびっくりだ…。
「あ、あのーレンさん…」
「んん?何?」
「し、師匠とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「えっ?俺…どっちかというと近接攻撃系だから、魔術師じゃ無いんだけど?」
「い、いえ!レンさんのお陰でこんなに魔術を使えるようになったんです…。
他の魔術師じゃこんなに…。だから、師匠と呼ばせてください!」
「あ、あー分かった。まぁ、いいや。それで気がすむなら」
「有り難うございますぅ!」
直角の御辞儀かよ…。大丈夫かな…。っというか…余程こたえてたんだな…。
「じゃぁ、弟子になったお祝いにこれをあげよう」
七枚の符を手渡す。
「こ、こんなに?」
「この十二枚の符と重奏符を使えば、攻撃に関しては一級品だろう」
「こっ、こんな…頂けないです!」
「駄目だよ。貰ってくれないと今回の作戦がダメになる」
「えっえぇ?」
「マリーにも一枚噛んでもらわないといけないからね?」
「えぇ!?」
「さて、今回渡した符の特性をさらっと説明しようか…
❶雷鳴符…雷撃を集約し、一撃の破壊力を上げたもの
❷轟雷符…雷撃を拡散し、一撃よりも広範囲にダメージを与えるもの
❸炎流符…炎を拡散し、広範囲を燃焼させるもの
❹水流符…水を拡散し、一気に押し流すもの
❺土流符…土を拡散し、一気に押し流すもの
❻金剛符…金属を拡散し、広範囲に壁を作り出すもの
っというところで、突風符は斬空符と対をなすものなんだ。さっき使った火炎旋風も炎流符とならもっと広範囲を焼き尽くす事が出来るのさ」
「組み合わせ次第という事ですか…」
「そう。今回渡した中で雷鳴符以外は拡散の性質、前回渡した五枚の符と雷鳴符は集約の性質がある。上手く組み合わせる事で、一枚では生まれない効果を生み出すことができる」
「はい!師匠!」
「はい!マリー君」
「これって、三枚重ねとか出来ないんですか?」
「素晴らしい!そこに気付くとは!」
「えへへへ…」
何だろう?このやり取り楽しいな。
「色々な制約や、重ねる順番があるけれどできなくは無い。むしろ、今回一つだけその組み合わせを教えるので、それを使って俺たちを助けて欲しいんだ」
「はい!」
「そして、二枚で行う重奏符を二重、三枚で行う重奏符を三重と呼ぶんだ」




