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五章 ❾ 神牛議会とプラチナカード

 新装備が出来るまでの間、薬師ギルドに入り浸っている。


 恐らく夕方には通常装備が出来上がる。


 どうも、防具の方が重症だった様で、組み直しも含めて全体的な改修を行っているとのことだった。


 薬師ギルドではリスティさんと共同で、薬草の群生地や栽培方法などを調べていた。


 すると、殆どの薬草は全ての国で自生していたり栽培されているが、一種類だけはムンティスやレーテの村周辺でしか大量に群生していないことがわかった。


 栽培方法が確立するまでは、狩人ハンターに依頼が出され、群生地に直接赴いて土や環境を細かく調査することとなっている。


 そしてその第一陣を俺と、ルイ達で護衛することになっている。


 その前準備として、ルイ達には森とその周囲の魔物の討伐にあたってもらっている。


 明日は、転移陣を使って一気にレーテの森へ飛ぶつもりだが、今後何度も足を運ぶため、ルイ達には転移陣使用のためのカードを渡しておいた。


 カードには俺以外でも飛べる様に術を組み込んでいる。


 しかし、コレを流行らせてしまうと街道が寂れ、モンスターや盗賊等が蔓延はびこってしまうため数は作らないつもりだ。


 また栽培方法の確立後、栽培にあたっては群生地から近いレーテの村にお願いすることになりそうだ。


 陽も傾き、ある程度研究の目処がついたので、ハンターズギルドに向かうことにした。


 あれから数日経っているが、変わりがないか気になったからだ。


「お先です。明日は南門前に九時にお待ちしています」


「はーい。レン君。明日は宜しくね」


「任せといてください」


 後ろで、「主任、レン君を誘わないんですか〜?」とかリスティさんが焚きつけられているが、聞こえないことにした。


 帰りはカウンターを通って帰っているので、ベルドさんやターニャさんに一声掛けている。


「どうもベルドさん、ターニャさん。お先です。」


「何時も有難う」

「有り難う御座います」


「レン君ちょっといいかい?」


「はい」


 ギルドマスターの執務室に通される。


「明日から狩人ハンター生活に戻るんだって?」


 ソファーに座りながらベルドさんは言う。


「はい。と、言っても明日は、研究員兼狩人(ハンター)ですが」


「そうか、それで少ないがレン君のハンターズギルドの口座に研究費と褒賞金を振り込ませてもらったよ」


「えっ?日当が出るなら嬉しいんですが褒賞金は?」


「いや、ここまでされておいて何も無いでは流石に薬師ギルドとしても面目が立たないからね。


 それに報奨金はケーラ様の推薦で、薬師ギルド神牛議会にて決まったことだから」


「神牛議会?」


「薬師ギルドの最高意思決定機関だよ」


「神牛とは?」


「薬師ギルドのマークは牛なんだけど、遥か昔、様々な疫病が流行った時、牛のお面を付けた薬師が、町や村を訪れては、様々な薬草を用いて分け隔てなく、治療して回ったという故事があってね?それに習ってるのさ」


「成る程…」


「そして年に一度は各支部毎に御祝いをやっているよ」


「そうなんだ」


「そして、その神牛議会でもう一つ決まったことがあって…」


 スッと豪華な箱が置かれた。


 ただその箱は小さく、入っているのは薄い何かだと分かった。


「開けてみてくれ」


 手にとって開けると白く輝くカードが見えた。


 右上に牛の象形があり、真ん中に俺の名前が刻んである。


「これは…薬師ギルドのプラチナカードだよ」


 なんか…凄いの渡された気がする。


「これを現在持っている人は恐らくレン君ただ一人だと思う。


 神牛議会は、この切羽詰まった窮状を見て、神牛様がレン君を遣わしてくださったと考えてる」


 神牛様すげーっというか何その勘違い。


「それだけの事をレン君はやってるのさ。


 各国の薬師ギルドでこれを出せば、最大限のサポートを受けられる様になっている。


 これは薬師ギルドからの精一杯の恩返しさ。


 逆に受け取らなかった場合、僕のクビが飛ぶかもしれないので、絶対受け取ってもらうよ?」


「謹んで受領いたします」


 そこまで言われたら受け取るしか無いですよね…。


「有り難う。ほんと困ってたんだ。レン君が意地でも断ったらどうしようかってね」


「そうでしょうね…私も生きてる間に使うことがあるんだろうかって思います」


「ははは、レン君らしい」


「それでは失礼します。そろそろ行かなくちゃハンターズギルドに行くのが遅くなっちゃうから」


「うん。明日は頼むよ!」


「はーい」


 ターニャさんには一度挨拶しているので、会釈して薬師ギルドを出た。


 ハンターズギルドに向かう途中でも何人かに、声を掛けられたり会釈されたりした。


 結構顔が知れ渡ってる…ちょっと照れる。


 さて、ハンターズギルドに入る。


 中は結構な人でごった返していた。


 ゴドフリーさんが遠くから手を上げていたのでこっちも手をあげる。


 ただ、先にやる事があるので『ごめん』『受付に行く』のジェスチャーをしてカウンターへ向かった。


 今日はシンシアさんがまだ残っていた。


「どうも」


「あら…」


「ん?どうしたんですか?」


「ちょっと小声で話しましょ?」


「はい」


「今、レン君宛に別支部の三等星サード狩人ハンターが来てて、レン君を出せって煩いの。


 丁度ラムがギルマスにどうするか言いに行ったところだから静かにしててね?」


「はい。分かりました」


「所で今日はどうしたの?まだ武器や防具が直ってないのよね?」


「はい。一応ギルドの状況と振り込まれた金額を確認したくて」


「うん。分かったわ。


 ちょっと調べるから、掛けておいてくれるかしら」


「じゃぁ、ゴドフリーさんのとこに行ってますのでよろしくお願いします」


「うん。でも呉々も気をつけてね?」


「はい」


 スタスタと歩いていく。


「お疲れ様です」


「おう来たか。まぁ座れよ」


「はい」


「なんか飲むか?」


「ん〜これから通常武具一式受け取るんでグレープフルーツジュースで良いです」


「そうか、おーいこっちにグレープフルーツジュース一杯くれ!」


「はーい」


「今日の仕事は?」


「あぁ、あれが終わってから少し魔物が徘徊してたりするからな、それの残党狩りでちょっと依頼が出てる。


 ルイ達も参加してたが、ノルマ達成したら用事があるからってどっかに行っちまった」


「そうなんですか。分かりました。


 ルイ達は俺が別の依頼を出してたんでそれで行ったんだと思います」


「成る程な。何処と無く急いでたからな」


「はいレンさーん!グレープフルーツジュース一丁お待ち!」


「お…」

「あ…」


 俺と、ゴドフリーさんの息が一瞬止まる。


「ん?」

 ウェイトレスのシルキーさんが固まる。


 ザッと四人が立ち上がった。


「おい!テメーがレンとか言うガキか!」


 どうやら穏便に済ませられそうにないらしい…。


 ◆◇◆◇◆◇◆


「はい。俺がレンですが?」


「お前、鬼神を倒したとか言ってるらしいじゃねーか…」


「確かに首は落としましたが、闘神や精霊砲、勇者の直系が居たからですよ。


 俺一人で勝てるはずもない」


「それで二等星セカンドにも上がったそうじゃねーか?」


「まぁ、ギルマスがそう決めましたけど?」


「はっ!嘘っぱちにしても程があらぁ!俺らと勝負しろや!それで勝てたら認めてやらぁ!」


 ここにいる狩人ハンター全員がギルマスたる紫電のゼオと俺の試合を観ていた。


 実力でどうのこうの言う奴は誰一人としていない。


「いや、貴方達に認めて頂かなくても結構です」


「はっ!?逃げてんのか?あぁ!?」


「もう何とでも言ってください。


 取り敢えず今日はお帰り下さい」


「この野郎!」


 一人が獲物を抜いた。


「ちょっと待ってください!


 貴方達何やってるか分かってるんですか!?」


 シンシアさんが止めに入る。


「うるせぇ!」


「きゃっ!」


「何やってくれてんの?


 この人は(このギルドに)大切な人だぞ?」


 あと数瞬間遅ければ、止めに入ったセリアさんが怪我をしていた。


 パンパン


「はいはい、そこまで。下が騒がしいと思ってきてみれば…。


 レン君相手してやって。うちの受付嬢を傷物にされようとして、そのまま返すわけにもいかないよね?


 そうだろう?皆んな」


 ガタッガタッガタッガタッガタッ…


 そこにいた狩人ハンター全員が立ち上がった。


 皆んなシンシアさんには世話になってる。


 例えランクが上であろうと、こんな無法者を許せはしない。


 ギルドマスターゼオはこんな馬鹿どもを許すような指導をしてはいない。


 怒りに震える四十を超える目に囲まれ息を飲む四人。


「さぁ上がりたまえ。うちの練武場は三階だ」

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