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五章 ❼ ブルガルド城と賢人会議

何故か頭が痛くて寝てました。

 生まれて初めての王都だ。


 それがまさかの呼出とか…。


 本当にどうしたらいいものか…。


 一応ムンティスの中央役所・地下室に設置してある転移装置を使い、ブルガルド場内にある転移装置へ飛ぶ。


 後で聞いた話だと、本当に緊急の時にしかこの転移装置は使われないそうだ。

 それだけ今回の件が重く見られているという事だ。


 と、言うわけで城内の風呂に連れていかれ、侍従の方々から身体の隅々まで磨かれる。


 身体中からいい匂いがして来たところで、風呂から出されてサイズの合う服を充てがわれた。


 更に髪を整えられて、身体が適度に乾いたら先程充てがわれた服の着付けを行う。


 これで何とか王様に合う条件が整ったらしい。


 直ぐに礼儀作法の担当官が来て、軽い挨拶の順序を教わり、次に各国の関係を一通り叩き込まれた。


 そして…王の間の前に来た。


 名前を呼ばれ、ゆっくりと踏み出す。

 門が大きめの音を立てて左右に割れた。


 中は静かで、中央に王様らしき人物。向かって右にドレファンさん。右にファティナさんだ。


 それ以外の人はおらず、真っ直ぐ王様を見ながら前に進む。


 思った程年は取っていない感じがする。


 三十後半位か。


 支持されていた場所で歩みを止め片膝をつく。


 そして頭を垂れたまま自己紹介をする。


二等星セカンド狩人ハンターにして昨日、聖戦士候補生を拝命いたしましたレン=ミングルスと申します。陛下にお会い出来て大変光栄に存じます」


「ふむ。レンよ。面を上げよ。


 余がブルガルド王国二十七代国王グラッドス=フォンバーグ=ブルガルドだ。


 時間はそう多くないでな、単刀直入に話を進ませてもらおう。


 レンよ我が国はとても重要な決断を迫られている。


 知っておるかな?」


 何だろうか?親が子を優しく諭すような、そんなおおらかさを感じる良く通る優しい声だ。


「はい。先程少々話を聞いてまいりました」


「ふむ。誰に聞いたかは問わん。


 どのように申しておった?」


 要点だけを聞いていくタイプだな。


「はい。私が考案した白丸によって、道を誤れば真光聖教の手によって『一光戦』が開始されるかもしれないと聞いております。」


 王様は顎の髭を触っている。


「かなり内容を飛ばしたがまぁそういう事だな。


 そして、我が国が取れる方法も多くはない」


「お主にはこのまま、私と共に『賢人会議』に出て貰う。


 そこで、世界の趨勢が決まる。


 お主の言動はそのまま反映される。


 気を付けて言葉を発すように。よいかな?」


「はっ!」


 な…何言ってんだ…?


 その『賢人会議』って何だ?


 ◆◇◆◇◆◇◆


「では、そろそろ時間だな?」


「はっ、恐らくもう何人かはいらっしゃておられるかと思います」


「ではドレファン呉々も宜しく頼むぞ」


「はっ、お任せあれ」


 玉座の真後ろに、小さなドアがあった。


 玉座の後ろの幕でこの扉の存在は隠されているようだ。


 専用の鍵を取り出し、王様がドアを開ける。


「ついて来なさい」


 俺はそれに追従する。


 通路はそんなに長くない。


 緊急事態の時の避難所となるのだろうけど、本来の使い方は何なんだろうか?


 それより、こんなところに部外者を引き入れていいのだろうか?


 と思っていると、目的の部屋についた。


 またカチリと鍵を開ける。


 そこは真っ白な空間だった。


 直径二十メートル高さ5メートルの円柱の箱の様な空間。


 真ん中に大きな円卓が置いてあり、其処には既に三人が座っている。


「おお、来たなブルガルドの」


「ロムノーシュ公!久しいな。


 テレッサ殿もご機嫌麗しゅう」


「はい。今日も宜しくお願いしますね。」


 ロムノーシュ公と呼ばれた人も結構若い。中肉中背だが、身に纏う気品から貴族なんどろうなと思わせる。


 テレッサと呼ばれた方は女性だが、言うほど年には見えない。

 温和な感じがする。ケーラさんに似たタイプだ。


 しかし『賢人会議』と呼ばれていたのでお爺ちゃん、お婆ちゃんの集まりかと思ってたがそうで無いらしい。


「グラッドス王?ドレファンはどうした」


 ロムノーシュ公が、俺をちらりと見ながら話し始める。


「うむ、それの事だが…」


「これ、議長もおらぬのに話を進めるでない」


 長い髭を蓄えた色黒のお爺さんが、いつのまにか入って来ていた。


 その後ろには、従者と思しきいかつい男性が付き従っている。


 それと、いつのまにか他のニ席も埋まっていた。


「さて、揃ったか。それでは『賢人会議』を始めよう」


 ◆◇◆◇◆◇◆


「何時もの定例報告も終わった様じゃ、懸案事項があるものは申し挙げられよ」


 俺は、グラッドス王の斜め後ろの椅子に座っている。


 話を聞いていると、この『賢人会議』とは各国の国王や代表の集まりみたいだ。


 魔族の進行は百年に一度必ず何処かの国に起こりうる。


 その百年に一度の進行が、百年続いている状態はまさに異常であり、次の魔族の進行が開始されかねない現状だ。


 予兆を話し合い、次に起こる魔族の進行を瀬戸際で食い止めなければ、次に蹂躙されるのは我が国かもしれない。


 これは対岸の火事ではなく、隣家の火事なのだ。


 なので互いに助力し合い、早期に鎮火を行わなければならない。


 なのに…


 ロムノーシュ公が手をあげる。


「何かな?」


「昨晩、我が国内で真光聖教の教会が放火されました」


 目を瞑っていたシャラムリア神聖国、サルーサ教皇が目を開けた。


 もうこの情報は、恐らくここに座っている誰もが持っている情報だ。


 だが自ら先んじて出さなければ立場が不利になるだろう。


「それは…由々しき事態ですね」


 ゆっくりとしかし重く響く。


 あぁ…恐らくここが国教に指定している国かな。


「しかし、放火犯の容疑者は捕縛してある」


「ほぅ…」


 ドラスティア帝国のドルムント帝だ。


「漸く楽しくなって来たではないか」


「ドルムント帝。不用意な発言は控えられよ」


 アッバース王が諌める。


「はっはっはっ。これは失礼をした。


 して、容疑者とはどこのものかな?」


「真光聖教の司祭でございました」


「どういう事ですか?自分の教会に火をつけたのですか!?」


 サノバーグ共和国のテレッサ評議長が驚いている。


「真光聖教は熱心な信者が多いと聞く、その信仰対象をわざわざ自ら傷付けるなど…」


 議長でもあるシャームル王国のアッバース王が首を傾げる。


「経緯を述べさせて頂くと、隣国ブルガルド王国との国境を警備していた我が国の魔術兵達が、偶然村に立ち寄りました。


 そこで火の手が上がり、挙動不審な司祭を尋問したところ自白しました。


 ただ今、魔術審問官の手によって原因を究明中でございます」


 魔術審問官?そんなものが公国にはあるんだな。


「まぁ、貴国の魔術審問官の手にかかれば、真相究明に時間はかかるまい。しかし、自作自演だとしても、また『一光戦』と騒ぐものがいるかもしれませんな?サルーサ教皇殿?」


 ドルムント帝が煽る。


「馬鹿な事を…」


 サルーサ教皇は吐いて捨てる。


「では、サルーサ殿には内部で話を付けていただき…


 何かおありかな?グラッドス王?」


 王様が手を挙げている。


「一つ。話しておかなければならない事がある」


「何でしょう?」


「勿体つけるな。そこの小僧のことか?」


「では、申し上げます。


 今、私の後ろに控えておりますレン=ミングルと申します。


 そのものが先日、様々な薬を開発しました」


「ほう。見れば成人仕立ての小僧っこ。余程才あるものかの?」


 アッバース王が顎鬚を仕切りに触っている。


「その薬はポーションに代わるものと、薬師ギルドのケーラ殿も申しされる程。今後、各国で

 売り出される様になりましょう」


「「「「なっ!!!」」」」


 サルーサ教皇だけは驚かなかった。


「そっ!それは!!如何程なのだ!!」


 ドルムント帝は席を立つ程喰いついている。


 ドラスティア帝国は、魔王との交戦中で無くとも魔族の進行が度々あると聞いている。


 ポーションは死活問題なのだろう。


「それについては…レン。話せ」


 起立して王様の横に立ち一礼する。


「ブルガルド王国ハンターズギルド、ムンティス支部所属二等星セカンドのレン=ミングルスです。


 この様な格式の高い場所にお呼び頂き、誠に有難う御座います」


「ぬぅ!?レンとやら!幾つになる?」


 ドルムント帝がいやに食いつく。


「はっ。今年で十七になります」


「十七前で二等星セカンド?」


 テレッサ評議長も驚いている。


「申し遅れました。


 昨日、聖戦士候補生として我が国で承認されております」


「ほっほっほ。この様な新芽が育っておるとは…ブルガルド王国は安泰よな」


「アッバース王。有難う御座います。


 ではレン続けよ」


「はい。この度ムンティスに魔物の襲撃が御座いました。その時に以前より考案しておりました薬丸を、少しではありますが薬師ギルドの方に依頼して量産して頂きました」


「ちょっと待て、ムンティス…若き二等星セカンド…お主もしや『ムンティスの英雄』か!?」


 ロムノーシュ公が驚く。


「なっ…あの人界に出現した鬼神を制限武具アームズ無しで倒したと言う万夫不当の猛者がこんなに若いとは…」


 テレッサ評議長も目を丸くしている。


 それより、まだ二日しか経っていないのに情報がダダ漏れのような気がする。


「えっと…確かに鬼神の首は私が落としましたが、殆どは姉達が戦ってくれたからで…」


「姉?姉とは?」


 っゔぁぁぁあああん!!!


 背後のドアが壊れるかと思うくらいの音を立てて開く。


「おいごらーーーーー!!!」


「「「「「!!!」」」」」


「アタシ達に断りなくレンを連れて行くたぁどういう了見だぁ?あぁぁん!?」


「うちのレンに何の罪があるって言うのかしら…?」


「レンちゃんを苛めるのかな〜?」


 王様は俯いて目を瞑っている。


「ねっ…姉さん達!!」


「これはこれは、勇者殿と聖戦士殿ではありませんか…その節はお世話になりましたな…」


「おっ?アッバースのジジイじゃねーか、まだ生きてたか」


「ほっほっほ。これは手厳しい」


 他の賢人会議メンバーは皆驚いて声が出せない。


「して、姉さんとは?」


「あぁ、コイツはアタシ達で育ててんだ。


 もし、コイツに手を出すっていうんならアタシ達も敵に回すって覚えときなぁ…」


「ふむ…しかし聖戦士殿?この場でレン君は薬の話をしておっただけですぞ?」


 真実を述べるアッバース王。


「ぬぁっ…なにぃ!!?くそっ!あの野郎!!」


 ガチャッバタン


「いい?さっきヴェールが言ったけど…もし、レンに手を出そうっていうのなら…本気で……削るわよ?」


 ミラ姉さんに闇のオーラが漂っている。


 ガチャッバタン


「レンちゃんにおいたすると…雷落としちゃいますよ〜」


 セリア姉さんは明るいけど言ってることが怖い。


 ガチャッバタン


「な、成る程…桁外れの強さも得心がいったわ…」


 ドルムント帝が唸る。


「じゃ、じゃぁ…続けます。


 薬丸の効能は、状態異常回復、ポーション相当、ハイポーション相当、ブーステッドポーション相当、浄化の五種です」


「ほっほぅ…値段は如何程になる?」


 まだあのサプライズから完全に戻ってこれてないみたいだ。


「はい。ポーションに限って言えば当初は半分、量産体制や薬草の栽培体制が整えば、おおよそ三分の一から、四分の一迄値は下がるのではないかと思います。


 他のポーションに関しましては今後、薬師ギルドと話し合いをもちまして決めていきたいと思います」


「なっ…!ははは…はっはっはっ!!それではもうあの忌々しいポーションに頼らずとも済むではないか!!!」


 ドルムント帝は大喜びだ。


 キッっと、サルーサ教皇がドルムント帝を睨むが、何処吹く風だ。


「しかも、ポーションだけでなくハイポーションや、ブーステッドポーション相当のものもあると言う…この話が聞けただけで今回の会議に出て良かったと言うもの」


 テレッサ評議長も満足げだ。


「まだまだこれからですので、薬師ギルドのリスティさんに量産体制を一任して、そのお手伝いをしております。


 長くても二ヶ月ほどで市場に出せるようにはなると思います」


「むっ?薬師ギルドのリスティとな?ほうほう。


 若造と思っておったが考えを改めねばなるまい」


 アッバース王が、こちらの王様をチラリと見る。


「ふふっ二ヶ月か…今から待ち遠しいわい。


 しかし、レンよ。


 もしブルガルドの居心地が悪くなれば我が国に来るが良い。


 国賓として迎えよう」


 ドルムント帝からのいきなりの勧誘だ。


「姉さん達がここを気に入っておりますので…」


「ふむ…そうか。まぁ良かろう」


 ドルムント帝は残念といった感じだが、そこまで落胆していない。


 恐らくダメ元でいってみたのだろう。


「しかし、こうも懸案事項と吉報が重なるのも珍しいですな?」


 ロムノーシュ公がサルーサ教皇に視線を移す。


「何か言いたげですね?」


 サルーサ教皇は真向から迎えうつ。


「まぁ、待たれよお二方」


 アッバース王が、割って入る。


「既に放火魔も捕まっており、魔術審問官が動いている。


 となれば時間の問題であろう?何も急くことはあるまい。


 それより、次の魔王誕生が魔界においてなされておるはず。


 気を抜かず、各国一丸となって魔族の動向を探らねばならん。


 現在魔族と交戦中であり、数多くの勇者や、聖戦士、聖戦士候補を持つブルガルド王国に対して、逆にこちらから緊急の要請を出さねばならないかもしれん。


 今ここで我らが争うてはならん。良いかな?」


 ここで賢人会議が閉会した。

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