五章 ❺ ハンターズギルドとギルドマスター
大きなドアを開ける。
すると、こちらを向いて手を上げたり、ペコッと頭を下げる人がチラホラ出てきた。
ここは、ムンティスハンターズギルドだ。
昨日の緊急クエストから、ムンティス防衛戦、そして鬼神討伐までの、一連の流れを知っている人達ばかりなので、歳下であろうと畏敬と尊敬の眼差しが向けられる。
しかし、今日は俺の後ろを歩く王国騎士団と、王国騎士団に護衛される身分の高い御仁に目がいっている。
「はははっ。流石ですなぁ。既に貫禄が出てますね」
視線の事を言いたいなら貴方ですよ?と言いたい。
まぁ、それは置いといて、受付カウンターへ急ぐ。
「すみません。あの…」
「あぁ、うん、大丈夫。直ぐにご案内するわ」
セリアさんがキビキビとした動きで対応する。
カウンターから二階の応接室兼ギルドマスターの執務室へ通される。
コンコン
「どうぞ」
「二等星のレンです。入ります」
カチャッと音を立ててドアが向こう側へ開く。
応接室にはギルマスのゼオが、執務机に座っている。
そして続く、ファティナさん、マクレイルさん、ドレファンさん、スルートスさん。
「久し振り。ドレファン」
「あぁ、そっちこそ元気そうだな」
ん?結構親密な感じがする?
「先ずは座ってくれ」
「あぁ、そうさせてもらうよ?」
「皆さんもどうぞお掛けください」
「「はっ!」」
「有難う御座います」
形としては執務机の前の椅子にギルマス、その向かい側に俺。右手にファティナさんとマクレイルさん。左手にドレファンさん、スルートスさんだ。
「ドレファン…来るなら来るともうちょっと早目に言ってくれ。受付嬢が混乱する」
「すまんすまん。早く唾をつけとかんと、これだけの逸材が他国にとられてしうまうからな」
ギルマスは、ん?と言う顔をした。
「では…?」
「あぁ、二等星狩人のレン君を聖戦士候補生として国で認定することとした」
「おめでとう!レン君!流石、私の『ギア・セブン』を初見で止めた男!」
!!?
「ゼオ、お前いつの間に『ギア・セブン』を?
「昨日」
「はぁっ!?」
ドレファンさんとスルートスさんが、驚愕の顔を何とか立て直しながら、ファティナさんの方を向く。
ファティナさんは黙って頷く。
「ふぅ…私の人を見る目は信頼に足るものだと本気で思ったよ」
「はっはっはー。私も出来立てほやほやの『ギア・セブン』があっさり止められるとは思わなかったけど」
ドレファンは溜息をつく。
「ゼオ…お前『ギア・シックス』の試し撃ちでどれだけの高ランク魔獣を屠ったのか覚えてないのか?」
「あははは。忘れた」
ドレファンさんは俯いて顔に手を置く。
「全くこれだ。だから今日はスッキリしてるんだな」
「うん。レン君に触発されて、ここ一ヶ月本気でトレーニングしたからねー」
「昔からやっとけ…あと、ギア・フォース以上はハンターといえど、人に向けて撃つなよ?下手すれば死人が出る」
なんか聞き捨てならない言葉が出た。
「あ、あの…『ギア・セブン』って…」
「『ギア・シックス』の威力から考えると、例え得物が木刀だろうが受け損なえば真っ二つだ」
ちょっと待て…
「ギルマス…貴方って人は……」
俺の黒いオーラがギルマスを捕捉する。
「えっえーっと…周りにミラさんもいたし?回復は問題ないかなーって…」
「阿保かぁ!!特殊能力無かったら死んどるわ!!」
即ツッコミだ。
「やっぱり、持ってたんだねぇ?」
ギルマスの目が細くなった。
「あれ?」
「ガルム君との一件で大体当りはついてたんだけど、どうも確信が持てなくてね…
しかし…流石と言うか…やっぱりと言うか…」
「しかも、どうやらボーンタイプらしくてね?それもかなり有能なスキルだ。」
ドレファンさんは楽しそうだ。
「へぇ?クラスは?」
「おそらくXだな」
「本当ですか!?ファティナ様!?」
ギルマスは中腰になる。
「クラスSの先。特殊能力の中の圏外…」
「はい。一つ一つはクラスA相当なのですが、それが三つもあり相互作用で押し上げている感じです」
「クラスAが三つ?複数持ちか?」
「はい」
「はぁ〜全く…これだから…」
ギルマスは呆れて椅子に深く腰掛ける。
「それなら、僕の『ギア・セブン』を受け止められるのも納得がいくよ」
「ゼオ様。レン様の直接戦闘系のスキルは御一つで御座います」
スルートスさんが口を開く。
「レン君、そうなのかい?」
「はい」
「スルートス、あまりスキルの事について細かい事を言うな、秘匿情報に分類される事項だぞ?」
「も、申し訳ございません。レン様、ドレファン様」
スルートスさんは慌てて起立して頭を下げる。
「あー良いですよ。スキルを知られようと、より頑張って強くなれば良いだけですから」
「ふー忝ない」
ドレファンさんも頭を下げる。
「大丈夫です。秘匿情報と言ってもこの中で知らないのギルマスだけじゃないですか。」
「まぁ、そうなんだが」
「それに今日まで特殊能力何て概念すら知らなかったので…」
「まぁ…ボーンタイプによくある事だな」
マクレイルさんが珍しく口を開く。
「その?ボーンタイプとは?」
「あぁ、生まれつき特殊能力が備わっているものの事だ。
大抵の人はレイタータイプ。修行やらショックやらで目醒めたものの事。
人によっては目が覚めたら備わっていたってものもいるらしい」
「へぇ〜」
「違いは色々あるのだがな、ボーンタイプの方がスキルランクが上がりやすいと言うのがわかりやすいところだ」
「ちなみにレン君。君と同世代で同じボーンタイプの特殊能力保持者がドーマの街にいるよ。
更に言うと、特殊能力、もしくは特殊能力の種子は皆持っているものなんだ。
それを見つけ、育成方針を決めるまでが第一段階、育成し開花させるまでが第二段階、開花させた特殊能力をどう使かが第三段階だ。
レン君はいきなり第三段階まで進んでいて、王国にとってかなり有益な方向に進んでいるので、特に口出しすることはないかな」
「つまり…」
「今の方向性で自由に動いて下さい」
ファティナさんが微笑む。
ちくしょう、可愛いな。
「レン君、制限武具はどうするんだい?」
「もう親方に依頼しています」
「おっ!早いね。出来れば制限武具が出来る前迄には一等星に上がって欲しいなぁ」
何だろう…。ギルマスがウキウキしてる。
「ゼオ。このムンティスのギルマスはお前だからな?」
「えっ…な、何を言ってるのかな〜?」
ギルマスの顔に縦線が入ってるよ…
「大体見え透いてるんだよ。
さっさとレン君にギルマスの地位を渡して、放浪の旅にでもとか考えてるんだろうが…そうはいかないからな?
レン君の有用性を考えると、今後、王国内を回るような感じで依頼を発布する予定だから、当分ギルマスはお前だ。
逃げられると…思うな?」
ドレファンさんの紡ぐ辛辣な言葉が、バリトンボイスに乗っかってギルマスを切り刻んで行く。
まぁ、俺を利用しようと思ってたんだろうけど残念だったね!
しかし何だろうその後の未来が怖い。
「でも、早いうちに一等星に上がって欲しいのは、王国も望んでいることだから武具の改修が終わり次第、王国から直接依頼が発布される。
それまではゆっくり骨休めをしつつ、例の新薬開発に尽力をお願いしたい」
「はい!」
「先に言っておくと、時計回りで王国の主要都市を回る感じでお願いしたい
何か、予定はあるかな?」
「あっ…そう言えばヴェール姉さん達と龍人の里に修行に向かうって話が…」
「そうか、それでは一度話をしないといけないな…」
宰相なのにフットワークが軽くて助かる…。
しかし何だろう…この服装に似合わないプレッシャーは…
「ところで、何処にいるか分かるかい?」
今迄のプレッシャーが嘘のように、軽いテンションで話しかけてくる。
「多分…『ミョルニルの槌』にいるかと思います」
ちょっと戸惑い気味の俺。
「では今から攻めましょう。どちらにせよ、ミョルニルの槌にも行かねばならないのですから」
攻める?
「連絡入れとく?」
ギルマス機を利かすが…
「ダメだ。逃げられる。相手はあの闘神だ」
逃げられる?
!?…何だろうこの無駄にピリピリした感じは…
「ふふふ…久々に武者震いするな……」
ふとドレファンさんの横を見ると、スルートスさんが何かを手配し始めた…




