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オレをスキ過ぎる姉達がマジで怖いんですが!!?  作者: 低脳イルカ
緊急クエスト編
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四章 23 アハト山と死闘⑤

「レン…」


「あー…ミラ姉さん…?」


「「「ししょーーーーー!!!」」」


 四人が揉みくちゃにする。


「馬鹿!あんな無茶してどーすんの!?


 死んじゃうとこだったのよ!?」


「ごめん。みんなも心配かけた。」


「僕師匠が死んじゃうかもって!!…


「俺、全然師匠の力になってなくて…


「どれだけ法術かけても起きてくれなくて…


「「「わーーーーーーーーーーん!!!」」」


 いや、自分の事だけど?引いちゃうよ?


 こんっとおでこに痛みを感じた。


「いい?あんたの為に泣いてくれてるんだから抱きしめて上げなさいよ」


 姉さんが目の端に泪を貯め、それでも嬉しそうに微笑みながらそう言った。


「姉さんは泣いてくれた?」


 急に顔を真っ赤にして腕を組んだ姉さん」


「全っ然!全く!泣いてなんかないんだからっ!!」


 やばいわ…可愛すぎてこっちまで泪がでる。


「いひひ。さーて、じゃぁ行こうか?」


「どこへ?」


「決まってるじゃない。戦場へ」


 ◆◇◆◇◆◇◆


「あ…あんた…死にかけたのよ?わかってるの?」


「うん」


 ルイ達もみんな口を開けている。それはそうだ、今しがた殺されそうになった所にまた行くと言っているのだ。


 どれだけ戦いが好きなのかって、どれだけ心配させれば済むのかって石でも投げつけてやりたい気分だ(やらない)けど。


「だって、まだヴェール姉さんも、セリア姉さんも戦ってるんでしょ?」


「そうだけど、制限解除されてるからすぐに終わるはずよ?」


「まだ戦ってるんじゃん。


 俺、行くよ。


 今行かなきゃ次戦える自信がない」


 ここにいる皆が思った。


 そう言う事なんだ。


 恐怖が身体を支配するのが一番駄目だ。


 然も恐怖という悪魔は、一度訪れてしまうとしがみ付いて中々離れようとしない。


 視線がブレる。


 手が震える。


 足が竦む。


 何より、心が後ずさる。


 心が前に踏み出せなければ、全ての攻撃が成功し難くなる。


 攻撃の中で一番成功しやすい『返し』でさえもだ。


 そうすれば戦いは長引き、疲れ、負ける。


 負の連鎖が始まる。


 そうして立ち上がれなくなり、牙をもがれる前衛職は数多い。


 今ここで芽を摘む、いや、根まで枯らさなければ、これ以上の戦いは続けられない。


 そういう事を言いたいの?


 レン…あんたは死ぬまで前衛フロントで居たいのね。


「分かったわ。


 でも、いざとなったら引くわよ?」


 ◆◇◆◇◆◇◆


 身体中が治っている。


 さっき負った傷だけでなく。


 今までに負った傷までも治っている。


 こんな馬鹿なことはあり得ない。


 然も、力の総量というか何から何まで、至れり尽くせりのレベルアップだ。


 更に、上乗せされた分が破格だ。


 今朝までの自分が、百年前のように感じる。


 目を閉じて探らなくても方角、距離、加えてどの位の強さなのか迄精密に分析まで出来る。


「姉さん。先に行くよ?」


「えっ精霊回廊…」


 木の間を擦り抜けるなんて面倒な事はしない。


 さっきまでいた所なんだし、空間を繋げるだけだ。


 フゥォオン!


「あれ?レンちゃん?」


 セリア姉さんは急に現れた俺に、目を丸くしている。


「うん。ちょっと行ってくるね?」


「どこへ?」


 鬼神と闘神はゴリゴリと削りあってる。


 と言うよりもう、闘神の手数が多過ぎて鬼神は押されっぱなしだ。


 そう、そろそろお終いだ。


 何もかもがボロボロだし。


 ヴェール姉さんには悪いけど、ここで終わらせる。


「グレイブ」


 口に出すだけで愛用のグレイブが現出する。


 しっかりと左手の掌で握る。


「覇尽剣+ダブルエレメンタルエンチャント」


 覇尽剣は練気剣の上位版。


 と、勝手に名付けた。


 もう練気剣の出力を軽く超えたから。


 今迄、一つの武器に二人の精霊を充てがう事はできなかったから、双刀を使ってたんだけど震度の深まった今なら出来る。


 そして…これだ。


「『魂魄合一』」


 体がブレる。


 龍と鬼の戦いに、突如現れる純粋な力の塊。


「ああっ!?」


「ぬっ!?」


 瞬きさえ許さない速さで、真横から、構えていた大刀ごと、鬼の首をとった。


 ◆◇◆◇◆◇◆


 ぬぅ…鬼神と格上げされた我でさえ、まだまだ到達できぬのだな。


 この短時間とは言え濃密な攻防も、ともがらの察知が無ければ恐らく数手で終わっておった。


 百年以上生きた最後に、この様な素晴らしき闘争で我が生の幕を閉じることができるのなら本望と言うもの。


 ぽっ。


 むっ…何だ?この濃密な気は?


 どんどん膨れ上がっておる。


 けれどこの気を我は知っている。


 そうだ、勇猛果敢に単騎で仕掛けて来た若武者のものではないか?


 先程、我が吹き飛ばした折、恐らく二度と立てぬ程の気を込めて鬼神の能力《魂喰らい》を叩きつけてやったと言うに…。


 かっかっか。


 全くこの世は面白い。


 死の間際に踏み込んで尚、驚嘆をくれるのだ。


 おおぉっ!正しく一撃で我が命を獲らんとする牙!誠天晴れ!!


 恐らくアレは我を狙っておる。


 闘神が早いかアレが早いか…。


 絶世の美女二人に求婚された様な感じよ…。


 ぽっ。

 !!!


 視界が…霞む…。


 どう…やら…、若武…者の……か………ち………。


 ◆◇◆◇◆◇◆


「レン…お前…今のはなんだ?」


「何というか…新必殺技」


「何で十分位前に死にかけた奴が戻ってきて、自分を殺しかけた奴の首を取ってんだ!おかしいだろうが!」


 完全にアタシ達の虚を突いた攻撃だったけど、それでもお前の攻撃は魔王に届くレベルには到達してる。




「でも攻撃だけよ〜?


 当たらなかったら死んじゃうし、もっと防御も含めた経験が必要ね〜」


「はい」


 さっきからずっとお説教タイムだ。


 勿論レンは正座だ。


 全く今回ばかりは呆れ返った。


 龍と鬼の戦いに割って入って、擦れば致命傷だってあるのに、わざわざ突っ込んで首を落とすなんて真似、何処の阿呆がやるのかね?


「アタシはこんな戦い方、仕込んだ覚えはないけどね…」


「あーはいはい。ヴェール。もういいでしょ?


 お小言は帰って報告してからにしなさいよ」


「まぁ…確かに…」


「報告で忘れてた。あいつのお仕置きもあるんだった」


「はいはい。じゃぁ帰るわよ?鬼神は回収したわよね?」


「あ、あの大刀も!…OK!!」


「うん」


「じゃぁ精霊回廊開くわ。


 場所はハンターズギルド三階の練武場。


 良いわね?」


「おう」


「は〜い」


「はい」


「「「はい」」」


「『精霊回廊!』」


 ◆◇◆◇◆◇◆


 見慣れた部屋だ。


 何人かが急に現れた俺達を見てびっくりしている。


 ブラドとマハはペットモード化してのんびりしてゴロゴロしている。


 今日は何かと気の張る場面が多かったんで気を緩めているんだろう。


 明日、明後日は武具の新調に時間をかけたいので、オフにしようかと思っているが…まずやるべきことがある。


 そのまま二階のギルドマスターの部屋へ向かった。


 コンコン。


「どうぞー」


 中にはギルマス、ファティナさん、マクレイルさんが対面でソファーに腰掛けていた。


「やぁレンくん!みんなも!お疲れ様!!今回は町の自治会だけじゃなく、商人ギルド、薬師ギルド果ては王国からも褒賞金が出てるからちゃんと貰ってね?」


 言いながら、ギルドマスターの机に紅茶を持って移動するギルマス。


「よし!」


「「「やった!!」」」


 俺とルイたちは素直に喜んでいる。


 けれど、ミラ姉さん、ヴェール姉さん、セリア姉さんの視線は鋭い。


「おい…ゼオ」


「んんん〜な、何かな〜?」


 分かっていたかの様に目を瞑り冷や汗をかいている。


「何故あんなにも制限解除に時間がかかるのかしら?」


「ぼ、僕だって直ぐに王都に申請上げたんだよ!?本当だよ!!?」


「ふ〜ん。本当かな〜?」


「本当だよ〜信じてよぉ〜」


「話に割り込んで申し訳御座いません。聖戦士殿。


 ゼオ殿の仰ることは本当です。


 我等も口添えして、漸く出してもらえたのです」


「あー!?後数分遅かったら、レンは死んでたんだぞ!!?」


「「えっ!?」」


 確かに俺の防具類は悲惨なことになっている為、アーマー類は一切来ていない。


 ギルマスは他のメンバーと見比べて、一人だけ戦闘の激しさを推察したらしい。


「ほ、本当ですか…?」


 ファティナさんは目を丸くしている。


「ん〜とりあえず、詳しい話を聞かせてもらえるかな?」


 それから、十分程であらまし、十分程で質疑をした。


「今確認させてるけど、レンくんのハンターズリングの記録からすると、恐らく間違い無いと思う」


「まさか、王都の近くに鬼神が確認されるなんて…」


 ファティナさんは顔面蒼白だ。


「そのレベルだと僕でも一人では対処は難しいよ」


 ギルマスも口調まで変わっている。


 鬼神は相当レベルの高い相手なのだろう。


「まぁ、今回の鬼神出現はかなりのレアだったと思うぜ?


 それはさっきも言ったが、あいつら元から変だったから、何かしらの術か薬を開発したのかもしれねーな」


「そうなった場合、直ぐにでも制限解除しなければ…」


「あぁ…アタシ達でもやられるだろうよ。


 で、そこんところは今回、レンの捨て身の特攻でぇ?切り抜けたんだけどなぁ」


 ジロリとヴェール姉さんが睨んでくる。


 怖い怖い。


「だいたい分かったよ。」


「しかし、そうすると解せないのはレン君だ。


 話から察すると鬼神の攻撃を受け止めて死にかけている筈だ」


「そうね」


「うん。それなら心身共にボロボロな筈なのに、今朝のレン君の気配を遥かに凌駕している」


「ん〜そうねー。


 今のレンちゃんなら下手すると一等星ファーストに手が届いてるんじゃないかな〜?」


「レン君、一手手合わせできるかい?」

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