四章 22 アハト山と死闘④
勢いでまた書いてしまった。
あれ〜?
あの鬼神、全制限解除中のヴェールんといい戦いしてる?
ヴェールん楽しそうだし…手も抜いてなさそうなんだよねぇ〜
私も入った方が良さそうかな?
あっ…あー目で威圧された…
まだ入っちゃだめっぽい…
もーヴェールんって、こういうとこは我儘なんだからぁ…
でも、なんかあの鬼神もう一化けありそうな気がする…。
◆◇◆◇◆◇◆
精霊達を付かせてたから、すぐに『精霊回廊』でルイ達に追い付いた。
「待ちなさい!」
急に、空間が裂けたので皆一瞬己が武器に手を掛ける。
けれど、私と分かった瞬間に今にも泣き出しそうな顔をする。
「ミラさーーーん!!!」
モーラが泣きついてきた。
ルイとゾッドは自分達のマントを草の上に敷いて、そこにボロボロのレンを横たえる。
「『精霊眼』《エレメンタルサイト》」
レンの外面的な傷は治りかけている。
けれど筋繊維やその内面のの内臓。
そして魂といったものの傷を『精霊眼』の副次効果で見通すことが出来る。
「酷い…」
一言に尽きた。
筋繊維の断裂迄はなんとか出来そうだが、その下の内臓、更に深い所にある、魂の修復といったものは、繊細過ぎて早々に手が出せない。
『……ぇ…ゃ…』
しかし、このまま放置すれば衰弱して死ぬ。
『……ぇ…ゃん』
とりあえずモーラに限界まで回復法術を…
『お姉ちゃん!』
「ぅわっ!」
「「「えっ!?」」」
『精霊眼』を持たないルイ達は、私が何故驚いたのか理解できない。
けれど、何かの気配があるのだけでは気付いているようだ。
基本的に同じ精霊使いであっても普段から精霊同士のコミュニケーションが取れていたり、精霊から強いアクションを起こさなければ、感じるくらいしか出来ない。
『精霊眼』は『見る』ことに特化するため声までは感じにくいのだが…
『や…た』『繋がったー!』
『貴方達は…レンの契約精霊?』
『ん』『そうだよー』
『どうしたの?あ、その前に…』
「モーラ!貴女の限界まで回復法術!」
「分かりました!!」
『ごめんね?』
『い…い』『レン助けてるー!』
『でも…私の力じゃ魂までは…』
『あの…ね』『私達が力を集めるのー』
『だ…から』『レンに力を送って?』
『い…い?』『いい〜?』
『分かったわ…。
レンは果報者ね?こんなに可愛くて思ってくれる精霊が契約精霊だなんて。』
『えへ…』『えへへ〜』
『じゃぁ…やるわ!』
◆◇◆◇◆◇◆
やべ…遊び過ぎたわ…
少しづつだが力が上がってきてやがる。
鬼は元々魔族の中でも戦闘狂だが…コイツはハンパないな!
がっつり行くぜぇ!!
「オオオォォォォッ!!!」
ピシッ!パシッ!
周囲の小石が弾け飛んでいる。
「ぬぅ…それは…」
「これまで使うことになるなんて思わなかったぜぇ?」
「伝え聞く『龍の血』か…」
「へぇ…博識だな?そうだ、これが龍の血だ。
コイツはアタシの中の龍の魂をどつき起こす奥義だ」
「では我も、伝え聞く『鬼の血』を使うほかあるまいよ」
「はぁ?」
「グオオォォォォッ!!!」
ピシッ!パシッ!
こちらも周囲の小石が弾け飛んでいる。
流石にこんな所で魔王級の奴と戦うとは思っても見なかった。
そろそろ殲滅しなきゃならないんだろうが、味見をさせて貰うぜ。
にやっと両者が笑った瞬間。
音が後から発生する。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
レンには悪いが打ち合いが楽しい…
ドォン!
ドォン!
こんなに力が拮抗するのは久しぶりだ。
ドォン!
ドォン!
鬼神がもうちょっと頑張ってくれればもっと楽しい。
ドォン!
ドォン!
ただ、いかんせん武具が悪い。
ドォン!
ドォン!
大刀は『爛れを促すもの』と打ち合ってボロボロ、鎧はミラの『星を削るもの』にあらかた破壊されてる。
こんな状態では戦えんだろ…
なら、私の満足ゆくまで爛れてもらおうか!
◆◇◆◇◆◇◆
「あちゃ〜。ヴェールん始めちゃったぁ…。
取り敢えずこっちも使えるようにしとこ。
ん…?
これはミラっちかな?
ここら辺一帯の精霊達が集まってる?
違う…いくらミラっちでもこんな規模の精霊力は…」
◆◇◆◇◆◇◆
とんでもない…
とんでも無いわ!
何この精霊達は!!
幾ら何でも多過ぎる!!
そしてこの子達だけの力じゃない!!
レンの中からも何かが精霊達を引っ張ってる!!
そんな…確かにレンは器を強化され、何かを植え付けられた子。
でも、それは剣技の方のはず!
今までもその片鱗を何度なく見てきた!
こんな訳の分からない力で精霊達が呼び出されてるなんてっ!!
◆◇◆◇◆◇◆
『いかんな〜こりゃ…どーも…』
『おぉ…主殿…』
『あぁ…ここまで傷つくとは…』
欠損が酷く罅の入ったレンを中央に、三人の魂が浮いている。
『ここまで魂がボロボロじゃぁ、嬢ちゃんらが幾ら魄を治そうが意味がねぇ
どっかから魂を引っ張ってきて埋め合わせて、その上補修もしなくちゃ何ねぇが…どうにも…力がたんねぇなぁ…』
『お主…出来るのか!?』
『そうです!出来るのなら…!』
『だぁー!言ってんだろうが!魂も無ければ『力』もたんねぇ!ねぇねぇ尽くしじゃ俎板で料理も作れねぇよ!!』
狐は人を生き返らせようとしたらしいが、こちとらまだ死んじゃいねぇ。何とかなるだろうよ。
『ね…ぇ』『おじちゃん』
この世界に子供?然も双子かぁ?
『んぁ?お、おめーらはレンの式か?
おぅ、一体何のようだ?』
『友…達から、』『いっぱい、いーっぱい』
『力』『貰ってくる』
何かが閃いた。
『あぁ?お、おー!その手があったな!
なら馬鹿弟子の代わりに、ちょっとだけ身体を使わせてもらおうか!
おめーら、コイツの式にしとくにゃあ、ちょっと勿体ねぇ、俺の専属にならねぇかい?』
双子の頭を撫でる。
『や…』『レーンー』
そう言うと、双子の女の子はこの世界から消えた。
『ふふっ冗談だぃ。
あの馬鹿弟子…いい式連れてやがらぁ…。
で、おめーらにも話がある』
俺は、レンを挟んだ武門と薬師にゆっくりと顔を向けた。
◆◇◆◇◆◇◆
『ど…ぉ』『おじちゃん』
『重畳重畳!こんなに集まるたぁ思いも寄らなかったぜ!?』
『う…そ』『手伝ってたよね〜?』
『はーん。ばれてらぁ』
『で…も』『有難う〜』
『良いってことよ!俺らの宿主が死んじめえば、俺らもおめーらも行き場を失っちまうからなぁ!?
じゃぁぼちぼち始めっかぁ。
一つお嬢ちゃん達にお願いだ。
外にいる耳のとんがった嬢ちゃんに『力』を入れ続けろって言ってくんな』
『ん』『わかった〜』
◆◇◆◇◆◇◆
どうしよう…纏めるだけで一杯一杯だわ…
『ね…』『おねぇちゃん』
『ん?どうしたの?』
『その『力』』『レンに流し込んで』
何でだろう、体の回復に全部回そうと思ってたんだけど…。
でも、そっちの方がいいのかな?
『行くよ?』
「はぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
◆◇◆◇◆◇◆
ルイ、ゾッド、モーラの三人は夢を見ているようだった。
少しずつ、少しずつ精霊達が集まって来ていたのは知っている。
それが急に増え出して、いつのまにか辺りが煌めきで埋まっている。
然も一色だけじゃない。
色とりどりの煌めきで埋め尽くされている。
ここは精霊の森じゃない。
なのに、なんて事なんだろう。
目から涙が溢れてくる。
何粒も何粒も溢れてくる。
契約精霊達も心から喜んでいる。
地上の楽園。そう呼んでいい場所がここにある。
師匠が死にかけていると言うのに失礼だと思う。
それでも、この胸のときめきが止まらない。
集まった光が渦となって逆さ竜巻を引き起こす。
師匠を中心にどんどんどんどん吸い込まれていく
◆◇◆◇◆◇◆
辺りに静寂が訪れた。
今迄の精霊達のロンドが嘘だったように。
レンの契約精霊達に促されるまま、あれだけの力を送り込んだけど、本当にこれで良かったのだろうか?
もう今更としか言えないが、おそらく間違いではないはずだ。
百年ちょっと生きた程度では、辿り着けない何かが間違いなく働いた。
そしてレンはゆっくりと目を覚ました。




