四章 20 アハト山と死闘②
気分屋なものでかなりアップロードにムラがあって申し訳ありません。
感想頂けたり、ブクマされたり、評価されるとモチベーションが上がります!!
ふぅーーー。
こんな戦いの最中に、短時間とはいえ瞑想に近い状況を作らなければならないなんて…
『グチグチ言ってんじゃねーぞ?小僧。
集中だ集中!』
『はっはぃぃぃ!』
『まったく、オメーは筋が良いのに何にもやらねーから、全然術が向上しねー。』
『ほんとすみません…』
『オレを始めて呼んだ後、全然呼びやがらねーから退屈してたのによー?』
何なのこの人…タチの悪い不良だよ…。
『だから、一時的にオレとオメーの接続を強くして、オメーの身体に最小限の負荷で最大限の法術をかましてやらー!!』
『法術!?そんなもの俺は使えない…』
『オレの法術とこっちの法術は、根っこがちげーんだからいいんだよぉ』
『それはどういう?』
『そもそも、どこの法術も根っこは神さんだ。
オレがこれから願掛ける神さんは、こっちの神さんとは違うが、恐らく何処の神さんにも…世界にも…顔が聞く。
そう言う設定だからなぁ。
それに、オレやそこの武門がいた世界じゃぁ、魔力なんてモンは存在しねぇ。
法力や験力といった類の力だ。
そいつはより強く、神さんと繋がる為の力でよぉ。
結局、神さんと太く強く繋がって、より大きい力を引き出したモン勝ちよぉ!』
『何でだろう。一発で理解できた。』
『ほっ。そいつは重畳。
オメーやっぱりこっち側の筋がいいな?』
『何だろう?嫌な予感がする。』
『よーし、決めた。
オメーはこれからオレの弟子だ。』
爆弾発言キターーーー(゜∀゜)ーーーー!!!
『いやっ!あのっ!』
『何だー?分かってる分かってる。
皆まで言うなぁー。嬉しいんだろ?
まぁ、こう見えても都じゃあ、ちったぁ名の売れた法師だったからなぁ…。
おっとぉ、そろそろ良いだろう。
先ずは一発かまして、あれを止めるぞ?』
なんだかもう、なるようになれとしか…
つさっきまでのシリアスな雰囲気が、この人のお陰でサッパリですよ。
『『魂魄憑依』』
なっ!?いきなり震度が!!?
『あったり前よぉ!弟子に遠慮する師匠なんかいるもんかね!?』
「「「師匠!?」」」
『レ…ン?』『レン?』
心配した皆んながこちらを気遣う。
「大丈夫だ!集中しろ!」
「『のうぼう、あらたんのうとら…』」
合掌印を作り、ひたすらに頭で響く言葉を復唱する。
普通ならそれだけで効果が現れようはずがない。
けれど、そこは稀代の大法師(自称)。
類稀なる法力で、超常なる力を手繰り寄せる。
呪文が終焉に近付くにつれ、俺の身体から光が溢れてくる。
その光に、攻勢を誇っていた魔族二人が苦しみだす。
しかし、それでもこちらの攻撃は防がれる。
敵ながら何という胆力だ。
『仕上げだ。合わせろ!』
「『おん!あみりた、ていぜい、から、うん!!!』」
単純な強い光ではなく。
柔らかで暖かな光が広がる。
それは三月の、寒さの残る風の間に注ぐ、春を告げる日差し。
そこにいる全ての人がレンの背に、ふた回り以上も大きい光り輝く人を見た。
慈愛の象徴を顔に浮かべ、全てを見透かすような眼差しを、禁薬をその身に投じた二人に向けている。
◆◇◆◇◆◇◆
ぅあぁぁぁ……。
な、んだ!こ、の光は!!
身体の中に巣食い、貪欲に貪り尽くそうとする蟲が粒になっていく。
母の優しさがその身を満たすように、爪先まで光が浸透する。
普通なら、この世界の光術は魔族を救わない。
塵芥と返すだけだ。
なのに、この光は我等を見捨てない。
魔族に生まれ落ちて百年は優に超える。
その一生でこんな感覚は初めてだ。
戦いの最中だというのに涙が止まらない。
しかし、何事にも終わりは付き物だ。
ゆっくりと光が引いていく。
出来ればそのまま揺蕩っていたかった。
それと同時に現実へと引き戻される。
今のは一体何だったのか?
ただ一つ言えることは、蟲を気にせず心置き無く戦える様になったということだ。
我が生の終わりに、この様な気持ちで戦って死ねるなら本望だ。
多少姑息な手段を使ってしまったが、我が前に立ちはだかる、人族側で十指に入る者共を相手にするには、まだまだ生温い。
ふと、輩の方を見る。
焦点が合っていない。
けれど薙刀を振るおうと振りかぶる。
抗いきれなかったのだろう。
既に蟲に喰らい尽くされた心までは、あの光でも救いきれなかったのだ。
魔薬の効果は切れ、祖霊達の流入は止まっても、取って代わられてしまっては…自我を失った魂までは戻ってこない。
もう、本当の意味で死ぬまで戦い続けるだけだ。
死ぬ時が歩みを止める時だ。
輩であったそれから目を離すと、
ふと、我が左腕の二の腕に、
必死に張り付いている蒼白い光が目に入った。
何と無く察してしまった。
我と共に戦いたいのであろう。
自我を失って尚、我と共に在り続けたいのであろう。
我は、大きく大刀を振り上げた。
そして、大きく口を開けた。
無論、左腕の二の腕は我の顔に近づく。
それは自然な動作であり、蒼白い光など
我以外、恐らく誰も目得ぬだろう。
蒼白い光は小さくぽっと強目に灯った。
そのまま、すぅっと、我の口に吸い込まれていった。
我は蒼白い光を一飲みにした。
我は死中に友を得た。
◆◇◆◇◆◇◆
『行けるぞ馬鹿弟子!!』
『馬鹿は余計!!魂魄憑依!』
法師から侍にモードチェンジする。
武器もグレイブから双刀に切り替える。
『ルー!スー!』
『ん…!』『ほい!』
「練気剣+エレメンタルエンチャント!!」
双刀にブラドとマハから乗り換える双子。
『疾風!』
「オォォォッ!!!!」
乗り換えの完了を待たずに特攻をかける。
この瞬間しかない。
フォン!!
向かって右側に抜けながら胴を薙いだ。
必殺の混沌の刃だ。
あ…?
倒れゆく蛇人の向う側に、強大な邪気を放つ何かが生まれていた。
さっきの光で浄化出来たはずなのに…。
一体何が起こったのか?
◆◇◆◇◆◇◆
『主よ、ありゃあ今の儂等の手に負えんぞ?』
『かもね』
『馬鹿弟子。やるのか?』
『うん』
『ならば、私の出番といったところでしょうか』
『うぉっ!?』
『あっ先生…何時も有難う御座います』
『今はそんな話をしている時ではありません!』
『薬の中にある灰丸を使いなさい
倒すまでとはいかなくとも拮抗することはできましょう。但しその後…』
『それだけ聞けば十分だ。有難う先生』
『常時であれば、こんな薬の使い道など外道中の外道…』
『仕方あるまいて、こやつの性格上一人で逃げるなど出来はすまい。
で有れば命を救う為の方策よ。胸を張りなされ』
『いくよ…』
俺は灰丸を口に含み、思いっきり噛みしめた。
◆◇◆◇◆◇◆
きっきき鬼神…!?
馬っ鹿なぁぁぁぁ!!?
何か変な動作を取ったのはわかる…
けど、その前にレンの見た事も無い法術で浄化されたはずだ!
何でこんなにも禍々しい鬼神が出来ちまうんだぁぁ!!?
ヴゥォォオオン!!
「ぐっ…」
鬼神と化した鬼人の大刀を大剣で受け止める。
勿論、吹き飛ばされる。
「ヴェールん!?」
セリアの横をかっ飛んで大木に激突して止まった。
ありえねぇ。
こんなんは魔界でも一級品だぞ?
「大丈夫…とはいかねぇな…半端じゃねぇ…」
ぺっと血を吐き捨てる。
「取り敢えず、レンた…」
ミラがレン達を逃がそうと、言葉を発すると同時に何かが横を駆け抜けた。
「『ヴォォォォッッ!!!』」
赤黒いオーラを纏う何かが鬼神に特攻し、鬼神を数メートル後方に吹き飛ばす。
あの存在は鬼神に負けてはいない。
何かはレンだった。
そして全力でぶつかる。
残念ながら、制限が掛けられているミラ達は、指を加えてみているしかなかった。
鬼神は鬼族でも最強の部類。
下手をすれば魔王にさえ比肩する魔族の絶対的強者だ。
恐らく今レンが戦えているのは、力を持て余しているからに違いない。
しかし、それよりレンだ。
あの赤黒いオーラは際限なくレンの命を削ってやがる。
何をしたかは分からんが、あんな馬鹿なことをすれば……。
けれど、馬鹿な事でもしなければ誰も救えない状況だ。
ミラもセリアも叫びたいのを堪えてやがる…。
唇を噛んで血も出てやがる。
レンの弟子達もレンの戦いを見続けている。
顔が歪んでこの戦いを嫌悪していやがる。
レンの攻撃は止まない。
そう、止まれば攻撃を受けなければならない。
危惧していた事が現実となった。
どんどん身体を覆う防具が削れ、割れた。
血が飛び散り始めた。
勿論、手傷を負ったためだけじゃない。
目、鼻、口、耳。
顔の7つの穴という穴から出血しているのだ。
それが、双刀を振るう度に、
大刀と激突する度に身体から離れ宙を舞う。
致命的な一撃なんて貰っちゃいない。
貰っちゃいけない。
けれど、身体が軋んでやがる。
心は恐らく凍らせてる。
しかし、顔色が少しづつ紫色に変色していく。
いつアレが訪れてもおかしく無い。
自分が戦っている時以上に、一秒が長く感じた。
明日からちょっとお休みするかもです。




