四章 19 アハト山と死闘①
気分屋なものでかなりアップロードにムラがあって申し訳ありません。
感想頂けたり、ブクマされたり、評価されるとモチベーションが上がります!!
アハト山。
ムンティスの北東、王都からすれば南東にあたる位置に聳える霊峰だ。
以前このアハト山に何度も訪れたことのある、ミラ姉さんの精霊魔術『精霊回廊』を使って一気に麓迄時間短縮をした。
時間を掛けず迫り、あわよくば準備の整っていない敵将を討ち取る為だ。
だが残念。
既に中腹の広場で待ち受けていた。
敵にも偵察の手段があるらしい。
…こっちより数が多いんだから当たり前か。
「レン。お前はあっちの蛇をやんな」
「理由を聞いてもいい?」
「あの、ごてごて着飾った鎧の奴は何度かやりあったことがある。
手練れだ」
顔を動かさず視線だけ、ミラ姉さんとセリア姉さんを見る。
緊張の度合いがうかがえる。
「まぁ、この三人でなら油断しなければ大丈夫よ」
と、ミラ姉さん。
「だから〜終わったら〜いっぱいハグしてね?」
「「おい」」
セリア姉さんのボケに即ツッコミ。
息ピッタリだなぁ。
◆◇◆◇◆◇◆
「ふん。来おったわ」
気配でわかる。
七人か…ちと少ない気もするが…
「用意はできておるか?」
「は、ここに」
盃は二皿用意してある。
ジロリとマハーラを見る。
「マハーラよ。お主までこの薬に付き合うことは無いのだぞ?」
「いえ、このぐらいしか私目の出来る事はございません」
「全く律儀なやつよの…
本当に惜しい人材よな。
せめて三ヶ月前に斗魔族に来ておれば…いや、言うまい」
マハーラは、涙を堪えながら『祖霊憑身薬』を盃に注ぐ。
これを飲んで数分後に、身体は祖霊を受け入れ始める。
そもそも、魔族であれ人族であれ器は一つで一つ分しかない。
例えば魂を人と呼び、魄を風呂と呼ぶ。
魂魄の概念はここだ。
少し分かり難いかも知れないが、一つしかない一人専用の風呂に、わざわざ二人入る馬鹿はいない。
その馬鹿な行いを、二人と言わず三人、四人、五人…と強制的に詰め込んでいくのがこの薬だ。
そして、魔術や魔導の素養は魂に、武技や武術の素養は魄にある。
魂から発散される力が魔力、霊力に変換され、魄から発散される力が体力、地力となる。
普通なら、どれだけ魂を詰め込んでも魄には影響しないので武技や武術に影響しない。
けれど、『祖霊憑身薬』は受け入れた祖霊に呼応して魄を若干作り変える。
勿論限界があり、どこまでもとはいかない。
それを補うのが祖霊だ。
子は祖先の結実だ。
同一に近い食事をし、
同一に近い精神性を享受し、
同一に近い魄を形成する。
それならば、祖霊との相性は悪くない。
しかし例え影響の少ない状況であっても、無理矢理魄を破壊され、作り変えられる過程において、元々の魂はジワジワと魄との繋がりを断たれ最終的に自我を失う。
この状況はゆっくりと首を絞められて気絶させられる状況に酷似している。
最初は苦しいが、少しづつ周りがキラキラして、心臓が耳の横にあるかのように聞こえ始める。
そして何故か気持ちよくなると同時に身体中が痺れて行き、ある一定のラインを超えた時点で暗転する。
まさにそんな状況だ。
そういう風に自我を失った魂は、祖霊から魄を追い出され、荒野を彷徨うことになる。
そして自我のない魂は低級の悪霊にさえなる事が出来ず、魂喰らい《ソウルイーター》にすんなりと捕食される。
この『祖霊憑身薬』は結果として、全能力の向上と引換に、祖霊による己が体の簒奪を行わせる薬である。
加えて、簒奪され続け、作り変えを要求され続ける魄が、祖霊の魂の要求に耐えきれなくなり自壊する。
源薬は、一度呑めば後は時間との勝負だ。
この話をマハーラから聞いて、薄めているとはいえ、かなり前から使っている現頭領殿は、もう自我など残っていないのだろう。
恐らく現頭領殿を支えているものは、魔族の解放という悲願だけなのだろう。
あぁ、何故この愚臣に吐露して下さらなかったのかと寂しく思った。
◆◇◆◇◆◇◆
おかしい!
最初の姉さん達の話では然程苦労しないような事だったのに!
あの大刀の速さ、威力、武技、どれを取っても制限の掛かった姉さん達三人の手に余る!
それに、こっちの相手も強すぎる!
薙刀の冴え、闇術の連続使用、加えて此方の動きが制限される…呪術か!?
しかもこいつら目付きが尋常じゃない!
一人に対し多人数で攻撃すると、連携の難度と攻撃の制限ができるので、あまりやりたくはなかったが…。
『スーマ!上空から光術で援護!
ルーブ!相手だけに闇術で足止め!』
『うん!』
『ん!』
「みんな一旦距離を取れ!」
「「「ハイ!」」」
すかさず飛び退く。
そこへ閃光が、数条突き刺さ…らない!
直ぐに闇の泡が取り巻き、地面への圧力を加える。
ヒュッ!
が、腕を一薙ぎして搔き消された。
薙いだのは三本目の腕だ。
ズズズ…
更に四本目が…生えた。
「「「「なぁ!!」」」」
くっ…こっちの精霊術は高位の闇術で打ち消され、呪術で身体の動きを封じられる。
更に腕まで生えてこっちの数に対抗する。
これが魔族か!
◆◇◆◇◆◇◆
まずいわ〜。
こんな魔族は魔王以来だわ〜。
私の剣技を難無く刀技でいなすし、
ヴェールんの力を力で押し返すし、
ミラっちの精霊弓を刀の角度で退けるし、
こっちは制限キメられてるのに〜。
早く時間来ないかなぁ〜。
レンちゃん達の方もヤバそうね〜。
えっ腕生えた!?
嘘でしょ!?
あんな魔族見たことないよ!?
◆◇◆◇◆◇◆
視界がブレるッ!
デも気持ちイいッ!!
私目にコんな力があルなんてッ!!
小賢しィ!光術だと!!
ナッ!?左腕が勝手ニ!?
闇術『暗闇の水面』!?
あンナに強力ナ光術が一瞬デ消えタッ!?
ムッ!?闇術ノ気配…!?
コレは何ダ!?見たコトも無イ!?
ヤッヤラレッ!?
腕ガ…増…エた?
グィオォッッ!!?
闇術ガっ消え…タ…。
カァガガガァ!?
視界ガァ!!!
腕ガァ…生エてクルゥゥゥ!?
痛ッダたタ気持ヂィィィィ!!!
ギャハハハハハハ!!
あンなニ強力ナ光術モッ!闇術モッ!!
最早オ…私目ニハ届かナイィィィッ!!!
◆◇◆◇◆◇◆
ふっ…ン…確かニ…
此奴らの攻撃を弾くたびに、
心が喰い尽クされる様な…感覚ダな…。
そシて身体中の制御が齧らレテいく感触…。
爺どもヨ…勝負だ…。
オ前達の好きにハさせんっ!!
斗魔族現当主とシての誇リ…
お前達に蝕まセはせんぞ!!
◆◇◆◇◆◇◆
相対する二人の中に内在する何かが、時間と共に膨れ上がりつつある。
膨れ上がる度に、身体に微細な変化と全体的な強さが増している!?
これは既視感!!そうだっ!これは魂魄憑依に似ている!
けれど、無尽蔵に蓄えれば器が耐えきれない…はず!?
既にこっちのやつからは、身体中から魔力が噴き出し始めている…
まさか…爆…散……!?
いま、アイツの中に蓄えられている魔力だけで、ここいら一帯を吹き飛ばすには十分すぎる。
『はっは〜!!』
『んっ!?』
『漸く俺様の出番ってところか?あぁん?』
『こんな切迫した状況でっ!?』
『悪し。
お主も我等を信じよ。
我らは彼奴らの様にお主をとって喰おうとしたことはあるまい。
お主の不安は、我らの不信。
お主の信は、我らの力ぞ』
はぁ〜。
まさか説教されるとは…。
「師匠?」
心に火が灯る。
「ルイ、ゾッド、モーラ、ルーブ、スーマ。
ちょっとの間時間を稼げ!!」




