一章 ❹ レーテの村とゴブリン軍戦
ゴブリンライダーとの一戦からの連戦です。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
数分後…櫓の上に2人はいた。
「なぁ、ミラ。」
「なに、ヴェール?。」
「あたしはそろそろかなって思ってんだ。」
「だから何がよ?」
「独り立ちの試験ってやつだ。うちらドラゴニュートは成人の儀式ってやつがあってなそれをクリアするまで領域から出る事はできん。」
「ふーん。もしかしてあのゴブリンのスタンピードを1人で倒せたら…なんて言わないでしょうね?」
「さっすがミラだ。話が早い。」
「あんた馬鹿なの?阿保なの?」
「フィフス程度で…確かに装備は良いの揃ってるけど、うちらみたいな伝説級の武器もエクストラスキルも持ってないあの子に突破できる訳ないでしょ。」
「あぁ、持ってないならねぇ…」
「何よ…」
「持ってるって言いたいんだよ。この間
稽古をつけてやってる時一本取られた。」
「はぁっ!?あの子にぃ!!?」
「そうだ。あんまり良い動きをするからかなり追い詰めてやった。そうしたら気迫と言うか何というか、レンの中に潜んでる何かが這い出て来た…そんな印象だった。一瞬隙を作っちまってなぁ…」
「何よそれ…」
「ただその後が問題なんだよなぁ…。普通は喜ぶじゃねぇか…闘神の2つ名持ちのアタシから一本取ったんだぜ?それなのに落ち込んでやがった。おかしいとしか言いようがねぇ…。」
「だからって危なくなったら手を出すわよ?当然ね?」
「あぁ、それでいい。」
ただ、お前が手を出したら渦中のレンまで吹っ飛ばすんじゃないか…?遠視使ってレンの動きを見逃さないつもりだな…。アタシも気道を使っとくか…。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
俺は駆けた。はっきり言って良い馬じゃないがそんな事はどうでもいい。この馬が出せる最大の速さを今、出させる。
『一心同体』『疾風』
スピードが格段に上がる。恐らく伝説クラスの馬達に追随する走りだ。景色が流れる速さが違いすぎる。あっという間に目的の南風の丘に着いた。
『解除』
馬の息が荒い。そりゃそうだ、走る専門とはいえ普段なら出せない速度を出させられたんだそうなる。
でも、何というか馬の顔は嬉しそうだった。
直ぐに眼下を横切ろうとするゴブリンの軍に目を落とす。コレは相当多いな。なりふり構ってはいられない。
一旦下馬し直ぐにカードを取り出し別の武具を召喚する。
『招来!』
折り畳まれた何かと矢筒が現出する。俺は速やかに矢筒を装着し、寝かせたまま持ち手を掴み何かのボタンを押す。
すると勢い良くガシャガシャと音を立てながら大ぶりの弓に形を変えた。
大弓を起こし傾斜のある地面に立てる。通常の弓とは明らかに重さが違うのだ。
そして、別のボタンを押すとバシュッという音と共に、接地点からバンカーが飛び出し固定された。
奴らは街の南の森よりゆっくりと進軍中、俺の位置は町から南南西の森に近い小高い丘。ゆったりと特製の矢をつがえ…
「ふぅーーーーーーー。」
『鷹の目』『剛力』
力強く引き絞ると同時に長い呼をしつつ遠視の魄術を念じる。狙いは一点。
「…
……
………ハッ!!」
一矢目を放つ。
そこにいたのは御輿に乗っているゴブリンよりやや大きめのゴブリンメイジだ。
周囲には成人男性ぐらいの大きさのホブゴブリンがいるが、脳筋より頭の回るメイジの方が集団戦は厄介だ。
2、1、着矢
ドッォォーーーーン。
着矢点は粉塵で良く見てとれないが直ぐに二矢目を番え放つ!続いて三矢、四矢五矢目を放つ。
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
直ぐに装備をグレイブに切り替えた。大駆動級を戻している暇はないのではそのままカードに格納する。
「待たせたね。」
馬の背をポンポンと軽く叩き騎乗する。
『一心同体』『疾風』『隠行』
「ハァ!!」
一気に丘を駆け下りる。目指すは後陣。ギリギリ迄1人で削ってやる!
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「何よあの馬!何であんなに速いわけ!?」
「レンが何かしたんだろ。馬のスピードが上がる直前にあいつと馬の気が繋がった。」
あたしはドラゴニュートの竜眼、ミラは精霊眼がある。効果は何方も遠視だ。それでレンを観察していた。
「あの子…私に隠し事なんて…」
「いや、アイツも15だろ。隠し事の一つや二つ…」
「はぁ!?あの子は私が手塩にかけた私のお婿さん候補なの!!全部知っておきたいのっ!!」
「え、えぇぇ…ちょっ…お、おま…」
爆弾発言にアタシは狼狽えた…が…
「何よ!ヴェールだってこの頃あの子を見る目が違うんじゃなくて!?」
「いや、あたしは良い男に育ってきたなぁって…」
「ほら!いくら弟って言ったって『弟分』ってだけなんだから!私達もう50年は浮いた話の1つもないでしょ?特にヴェールと来たら『アタシより強い男にしか興味はねぇ!』って言ってたのに…この頃稽古の時のレンを見る目は明らかに違うんだから!」
唖然とした。そうなのか?アタシはそんな目でレンを見ていたのか?確かに筋肉もいい具合についてアタシと同じくらいに身長も伸びたし、この間の一本取られた日の夜なんか体が火照って中々寝付けなかった…ってあれ?あれれ?
「あ、あー!そんなこたぁいいんだよ。今は観察だろ!おっアイツ丘に登ったぜ。」
「あーやーしーいー。後でゆっくり聞かせてもらうからね!」
や、やばい交わし切れる自信がねぇ…っと
「んっ?アイツ何する気だ…?」
「そうねぇ…私が教えてた弓でメイジかホブを狙撃でもするんじゃない?あっ…ほらほらあったりー!!」
ミラ…カミングアウトしたらテンション上がりまくりだな…はぁー取り敢えずさっきの一件覚えてなきゃいいんだけど…。
んー?にしちゃあなんかぶっとくないか?あの弓…
ドッォォーーーーン。
「はっ!?はぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「えっ!?えぇぇぇぇぇえぇっ!!?」
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
ドッォォーーーーン。
「なんだありゃ!!?ミラ!お前精霊弓教えてたのか!!?中級爆裂魔法クラスの連射だぞ!!?」
「教えて無いわよ!!精霊の動きもなかったわ!!貴女の方でわからなかったの!!?」
「わからねぇ!!気の膨張もねぇし例のアレでもねぇ!!?」
「じゃぁ何なの?アレ?」
「魔法…か?いや、魔素の収束も詠唱の間隔も無かった…と、取り敢えず…見とこう…か。」
「後でたっぷりお説教よレン…。」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ドドッ!ドドッ!ドドッ!
安定した蹄のリズムを聴きながら間近に迫る後陣に突っ込む。
混乱した陣には逃げ惑うゴブリンしかいない。どうやら奇襲はうまく言ったようだ。
「はぁ!!」
大きくグレイブを一薙すると一気に数体のゴブリンが絶命する。駆け抜けては踵を返し駆け抜けては踵を返すを繰り返す。
執拗に後陣を攻め立てる。総崩れとなったゴブリンの追撃を始めようかとしたそこへ数条の光が走った。
フュッ!ドォーン!!ドォーン!!ドォーン!!
俺の放った爆矢より火力は数段劣る。けれど数撃ち勝負だ。街の方へ逃げた前衛のゴブリン達の鼻っ面に被弾し、数体のゴブリンは微塵とかし、数体のゴブリンは宙に舞い、大半のゴブリンは更に混乱した。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
街の中央に仕込んである魔法陣から死臭とゴブリン達の悲鳴の方へ馬を走らせ、門を開けるとゴブリンの軍勢であったろう集団は烏合の衆と化し混乱を極めていた。
「なっ!一人であれだけのゴブリンとやり合っているの?正気なの!?」
「フィオナ様。しかしゴブリンどもは総崩れとなっております。この機を逃してはなりません!」
「わかりました。シルバーローゼンナイツ(銀の薔薇騎士団)!レイバーン(閃光炸裂魔法)準備!!」
みんな手元が震えてる。そうよね、マクレイルさんの特訓を超えたとしてもこれが初陣だもの…絶対に勝たなきゃ!
「ハンターが何処にいるか視認できないので接近しているゴブリンの足元を狙います!構えッ!!……放てぇッ!!!」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「援軍か、思った以上に早かったな。」
また数体のゴブリンの息の根を止めながら駆け抜ける。あーそろそろコイツも限界か…ほんの一戦だったが馬の息が相当上がっている。
それでも良く耐えてくれた。更に数体のトドメを刺し馬を止め下馬する。
後ろではまた数条の光が飛びゴブリンと思しき物体が宙を舞っている。相当なことがない限り殲滅は時間の問題だろう。
馬の尻をパンッと叩いて戦場から逃す。
森から放たれるこの醜悪な気配が俺を睨んで離さないし、怯えてしまっていては今から始まる一戦にあの馬は耐えれない。
間違いないアレはサード(3等星)クラスの威圧感だ。のそりのそりと森の影から染み出すように巨躯が現れる。
「オーガ…?」
次はオーガ戦へ突入します。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。