三章 ❾ 精霊広場と魔族侵攻③
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頂ければ幸いです。
「いるんですよ。時々。こういう輩がね。」
パズスは揶揄うような口調は変えず眼だけは烈光剣から離さない。
「そして知ってもいるんですよぉ。」
こっちは精霊の力のコントロールだけで手一杯だ。声を上げる隙間すら無い。
「その対処法もねぇ。」
速い!!
前に打ち合っていた時よりも剣戟は響かない。けれど、速さに付いていけない。
先程の剣戟の二割り増しの早さに驚愕する。
こうしている間にも一合毎にどんどん先程の光が薄まっていく。
成る程。集中力が維持できないんだ。ガリガリと心の中で聞こえるくらいに精神力が削られていく。
「ふははは!お気づきになられましたかぁ?そうです!!それが貴方が今!目覚めたものの弱点です!!!」
もう既に手にしかけた力は消え失せ。烈光剣も危うい。
「はい。お終いです。とっておきですよぉ〜?」
パズスの周りを何処から立ち昇ってくるのか黒い風が纏わり付いていく。
「さぁお逝きなさい。これが『獄黒の旋風』です。」
放たれた黒い旋風が俺を飲み込んだ。
丁度一人分の黒い竜巻が俺の体を蝕んで行く。負けじと烈光剣を縦に構え集中する。
「ほほぅ。烈光剣の光で獄黒を相殺するというわけですか…。いいでしょう。既にボロボロな貴方の精神で何処まで耐えられるのでしょうか見ものですねぇ…。」
体が軋んでいる。いけない。もう烈光剣も保てない。せめてこの子達だけでも…。
シュッ!パァーーーーーーッン!!
一筋の光明が黒い風を断ち切った。
「何者ですかぁッ!!!」
次の瞬間、パズスの剣を握っていた右腕が切り落とされた。
「あらぁ?レン君じゃなーい。やだぁ、大きくなってぇ。」
「セリ…ア姉…さん……?」
ボロボロな意識の中、片膝をついた俺は光を得た。
「なっ!!?天騎士だと!!!お前達はまだ王と戦っているはずだ!」
「残念ね。勇者と違って私達は代えがきくの。つ、ま、り、ちょっとしたバカンスなの。」
「ハァ〜!?」
かなり間の抜けた声で肩を落とすパズス。
「そしてね。今日ここでミラ姉さんと会う予定だったの。」
「ぬぁっ!!それでは?」
「よくもまぁ散々やってくれたじゃな〜い?」
見てくれはボロボロではあるが回復しきったミラ姉さんが立っている。そう。木陰に移動した時。青丸を飲ませておいたのだ。
「誘い出されたのよ貴方は。」
「バ、カな…。」
「結界を森とこの周辺に張ったわ。いくら貴方でも逃げられないわよ?」
セリア姉さんが妖艶な笑みを作る。
「そこをね。私が叩く手筈なのよ。」
「さぁ、覚悟するのね?レンちゃんを傷つけた罪は重いわよ?」
「そうね。レンをボロボロにした事、万死に値するわ。」
「は、はは…き、来なさいデーモン!!」
呼びかけは虚しく宙に響くだけだった。二重に貼った神聖結界内への召喚に悪魔は応じない。
「う、うぉぉぉぉぉ!!!」
追い詰められたパズスは雄叫びを上げる。
「見苦しいわ。烈光剣エンチャント『閃』!」
ピピピピピーーーン
パズスの体に無数の光が迸り一気に火の手を上げた。しかし烈光剣?エンチャント?
「精霊弓エンチャント『風』!」
ヒュヒュヒュヒュヒュッ
ドドドドドドン
放たれた光の矢が拡散し突き刺さるたびに風が火を巻き込んで連鎖爆発する。
「セリア!」
「はいはい。もう妹遣いが荒いんだから…。
天に遍く御使い達よ、神に仇為すものを縛り、
久遠の棺へ誘え。『天柩』」
結界の中に更に結界を発動させる。逃す気は更々ない。
「パズス…これで貴方との長い戦いに決着をつけられるわ。首を洗って待ってなさい。」
ミラ姉さんは既に次の矢を番えている。しかし、それは今まで見たことのない矢だ。そしてかなりの精霊力を込めている。
それだとこの辺り一帯を焦土と化してしまう…あぁ、成る程…その為のセリア姉さんの結界か。
「消えなさい。」
ヒョッ
放つと同時にパズスの依り代の胸を貫いて止まる。何故だ?精霊砲ではない?ではあの精霊力は?
「あっははは?耄碌したのですかぁ?私は精霊なんですよ。」
パズスが勝ち誇ったように嘲笑う。
「そうよ知ってるわ。だからそれで縫い止めたの。」
「はっ?」
「それはね?封縛の矢。この世界に形のないものを依り代に繋ぎ止める矢。」
「もう…何処にも逃さないわ。」
「あっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
分体が依り代から逃げ出せない事を悟ったようだ。そして、ミラ姉さんの目の奥に宿る殺意にパズスは戦慄したようだ。
幾ら数千年を生きて分体まで作れるようになったといえど、その分体を破壊されるのは数百年から千年を棒に降るようなものだからだ。
既に番え終わり精霊砲並みの精霊力を込めた矢が放たれる。
ズンッ!眉間に突き刺さる。そこから止めどない光が溢れる。
「グギャアァァァァァァァァァ!!!」
光は天まで届いた。依り代ごと精霊砲並みの力で吹き飛ばしたのだ。パズスがいたであろう場所には何も残されていなかった。
「ふぅ〜。セリアおーそーいー。」
「えっ?ほら真打ちは一番最後に登場するって…言うじゃない?」
「もう!いいわ。分体といえどパズスの力を削いだんだから。」
「レン。頑張ったわね。直ぐにみんなと一緒に回復してあげるわ。その前に…。」
「じゃぁ私がやるわ。」
セリア姉さんが剣を抜き天を指す。
「光よ。天を満たすその輝きは、不浄なる者共を撃ち払い、地を這う穢れを清め給うものなり、そが力を我が前に。『浄化』」
淡い光がデーモンを包み浄化する。パズスと同じように消え失せ、元の精霊の広場へと戻っていた。
「レンちゃん動ける?」
「な、何とか…。」
セリア姉さんに肩を借り一塊に集められた。
「『精霊の癒し手!』」
皆を精霊が祝福する。グンド一人の時よりもより暖かく熱心に感じる。そして俺はその暖かな光の中で眠りに落ちたのだった。
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