一章 ❷ ハンターズギルドと一悶着
2話目です。レンの冒険もこれからです。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
ハンターズギルドは『ミョルニルの槌』より50メートル先と直ぐに着いてしまう距離だ。
なんやかんやと少し時間を掛けてしまったので朝一の依頼を逃してしまったが、相変わらず薬草収集と簡単なゴブリン討伐、ハイウルフ討伐依頼は残っていた。
しかし、ここ数週間ギルド内の活気が薄く感じるのは気のせいか?
まぁそんな事を考えてもキリがないので、そのまま受付カウンターへクエスト票を持っていく。
「レンさん!お早う御座います!」
「うん。お早う、ラムさん」
「今日もクエストですか?」
「うん。この3つ」
「少しは休まないとダメですよ〜。ちょっと拝見させて頂きます」
…
……
………
「レンさん。本当に大丈夫ですか?」
「んん?何が」
「コレの期限はどれも3日ですよ?」
「はい。読みました。
討伐は一緒の町から出ているし、その近くにいい薬草の群生地があるんです。
移動に時間かけても全然問題なそうなんだけど…」
「うーん。失敗すると経歴に傷が残っちゃいますよ?
あと数日待てば貼り直しと期間延長来るかもですよ?」
「はい。大丈夫です。コレでも十分余裕持って引き受けているつもりですし…」
「どうしたの?」
ラムさんの横で見ていたもう1人の受付嬢シンシアさんだ。
こちらは快活と言うより淑やかな感じでハンターの人気を集めている。
「あっあの〜」
「ん?」
「コレなんですけど〜」
「あー3枚も?」
「ん〜。それじゃこうしましょう。
とりあえず補償金として銀貨1枚を補償金としてギルドに入れて下さい。
それで如何でしょう?」
「はい。じゃぁそれで。
俺のギルド口座から引いといて下さい」
「勿論達成すれば保証金は戻ってきますから呉々も気をつけて下さいね?」
「有り難う御座います」
「むー、ちゃんと無茶せずに帰ってきて下さいね!」
「ん、有り難う!」
カウンターを後にして、水を一杯貰おうと反対側の飲食のカウンターに行く途中だった。
「おい。ソロ野郎」
華麗に全スルーしてスタスタと歩いて行く。ガルムは空気に耐えきれず…
「おい!聞いてんのかソロ野郎!!お前だレン!!!」
「あっはい。何か?時間が惜しいので手短にお願いするよ」
「お前五等星に上がったんだってなぁ!」
「あぁ、上がったけど?」
素直に答える。しかし気づくの早いなぁて…っと思った所、受付カウンターでラム嬢があっ!という顔をしたのを俺は見逃さなかった。
「で、それが何だと?」
「俺たちのパーティーが苦労して半年。
漸く上がれたってのに何でお前はたった一ヶ月遅れでしかもソロで上がれてんだ!」
「それは俺も不思議に思ってるけど…でも上げてくれるんだからラッキーだなぁ…」
「しらばっくれんな!何か裏で取引したんじゃねーか?」
「いーや。そんな事はしてないし、コネも無ければ金もない。
ただ1つハンターの神様の名にかけてやってない事は誓うよ」
「そうです。昇格会議には私達受付係も出ます」
いつのまにかシンシアさんがガルムの背後にいた。
いつの間にカウンターから出て来てたんだ?
「そこでは討伐件数、採取件数、私達受付や依頼人への応対も含まれます。
それを全てポイント化して規定値を上回った人が推薦されます。
今回のレンさんの昇格は特に薬師ギルドや一般の方々からの嘆願が多く。
だと言って討伐、採集等件数も相当数こなされていました。あくまで正当なモノです!」
淡々としかし最後は熱を帯びてガルムを圧倒した。
俺、ちょっとビックリ。
シンシアさんてメチャクチャハッキリ言う人なのね?
「まぁ、気に入らないのはしようがないけどこの話はまた後にしてくれ。
今は片付けなきゃいけないクエストがあるからさ」
「てめぇ…シンシアさんから守って貰ってんじゃねぇぞ!グルァ!!」
抜剣までは行かないまでも殴りかかってきた。
フォッ!!
おいおい、今何かしらスキル載せてたよね?
けどね?こっちは毎朝毎夜姉さん達にシゴかれてるんだ
その俺にこの程度の動きは朝飯前で捌けるよ?
「この野郎!」
「えぇ…」
「うるせー!!」
わぉ、殴りかかって来た。そろそろこっちもキッチリ決めとこう。
「はいはいはーい。そこまでだよー」
「「ギルマス…!」」
俺とガルムの声が被る。
いつのまにか俺とガルムの間に割って入り、『俺』を取り押さえている。
ファーストハンターにしてギルドマスターの紫電のゼノ。
ゼノ・トーラスだ。30歳を超えて尚成長し続けるステータスが最大の武器と言われる。
ハンターを始めて5年で一等星まで上り詰め、様々な称号を授かり、かつ王との直接面会も許されている偉大なハンターの一人である。
また一等星は一つの国家に数人しかおらず、たった1人で1万の軍隊に相当すると言われる程だ。
更に、魔物災害に備え有事の際は全ハンターを率いて戦う司令塔としての役割もこなす。
「何故俺なんですか?ギルマス?」
「それはねー。君の方が危うかったからだよー?ファーストのゼノの勘が言うんだ間違いない」
少しずつ威圧感の増す言葉に言い返せない。
「はい。何もしません。離して下さい」
「ん。いーよー。ガル君。分かってるね?自分の足で独房へ入って沙汰を待つように。
それと…レン君の五等星昇格は私も賛同している。
以後このギルド内でのこう言った揉め事は控える様に」
「はい。師…ギルマス…」
「いいね?みんなもだよー?」
このギルドの9割方はゼオを師匠と崇める間柄だ。
そのギルマスが出張ったのだから、だれも何も言えることはない。
肩を落とし、地下へ消えて行くガルムを見送った後
「さてレン君。済まなかったね。
あの子のメンバーが負傷してクエストに出れないもんだからムシャクシャしたんだろうねぇ。
許してくれないかね?」
「はい。問題ないです」
「そうか!それでこそ闘神ヴェールと精霊砲のミラの弟さんだ!」
ちょっと大きめの演技がかった言葉を周りのハンターは聞いた。確かに聞いた。
『闘神ヴェールと精霊砲のミラの弟さん』と。
後日、ちょっかいをかける輩はほぼ皆無となったが、逆にチームへの誘いがうざったくなった。
「さーて、そろそろ行った方がいいんじゃないかい?」
「あっそうだった。有り難う御座いますギルマス!」
「じゃぁまたね!ラムさん!有り難う御座いましたシンシアさん!!」
ラムさんは精一杯に、シンシアさんは控えめに手を振っていた。
ギルドの出口を開けると同時にギルドの入り口が開いた。
「こんにちわ。」
「あっ、あぁ…こんにちわ」
ヤバイ。騎士の出で立ちのメガネショートの天使がそこにいた。
「あの…何か…?」
「あっ、あぁ可愛いなって…」
ヤバイやらかした。そしてふと我に帰った。
「ご、ごめん、そう言えば急いでるんだった!またね!」
「えっえぇ…ちょっと…」
オレは脱走した。その時、受付嬢二人の目の奥が鈍く光るのをゼノは見逃さなかった。
次はレーテの街へ行きます。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。