三章 ❹ レンと勇者
遂に勇者の秘密が明かされる…。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
一週間をヴェール姉さんとミラ姉さんからの特訓と弟子達の特訓で費やした。そしてその間に俺の装備が整った。
さらに自分の防具だけでは材料が余ったので、弟子達に一部お裾分けした。
ルイにはボーンソードとボーンシールド。ゾッドにはボーンブレードとボーンプレート。モーラにはボーンバーとアンダースーツ2着だ。なんか骨装備って弱そう…とおもってたけど…
最初に言われていた通り、伝説級の装備に仕上がり最初から『装備再生』のスキルが付与されていた。
そもそもの性能も高く、どんなに無茶をしてもフォース相当のモンスターでは傷一つ付かず刃こぼれもしない。
そんな一生物と断言された装備を渡された三人から、改めて弟子となる宣誓を受けた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
夕食と風呂をを済ませ、あとは寝るだけの時だった。
コンコン
「はい。」
「レン、アタシだ。入るよ。」
「どうぞ。」
ヴェール姉さんとミラ姉さんだ。
「レン。座るわよ?」
「アタシもいいな?」
「うん。」
俺はベッドに腰掛けた。
「で、こんな夜更けに何なの?」
「おぅ、レン。この一週間のアタシ達の特訓に根を上げず、完走したその根性と成長力にはっきり言って脱帽だ。『烈光剣』はまだまだ不安定だが『練気剣』はもう熟練者レベルだ。」
「そこで私達は、貴方に知っておいてもらいたい事があるの。」
「ちょっと早いけどな。」
「うん。」
「その前に単刀直入に聞くわ。レン『勇者』になる気はある?」
「ない。」
「ええっ!?そこはもうちょっと悩むところじゃないの?」
面倒臭いとはちょっと言えない。
「いや。今でも十分に生きていけるし…ミラ姉さんやヴェール姉さん、みんなもいるから。」
「あっはっは。レンらしい。」
あぁ…ミラ姉さんもいるからミラ姉さんもいるからミラ姉さんもいるから…
「戻ってこい。」
ゴチン
「あ、あぁえーっとそうだったわ。勇者の話だったわね。まず、この世界には一人の勇者と6人の魔王が争いあってるのは知ってるわね?」
「600年に一度、何処かの魔王が復活して対応した国を滅ぼそうとする。ってやつだよね。」
「そう。その都度勇者は召喚され、戦い、勝利し、時代の勇者を育てる。そして今代の勇者は100年前に召喚されて、今もまだ尚戦い続けているわ。」
「はぁっ!!?100年前?そんなに生きれないよね?だって勇者はヒト族の中からしか生まれないはずじゃ…」
「そう…普通ならね…。でもね、勇者因子の影響で対応する魔王を倒すまで歳はとらないの。」
「へぇ凄いな勇者って。」
「けれど、100年間戦い続けることが果たして出来るかしら?」
「どういうこと?」
「肉体は勇者因子のお陰で大丈夫でも、精神がボロボロになっていくの…。」
「更にその仲間も、勇者因子の影響で年を取らない。いや、年をとることが出来ねーんだ。」
「仲間は大丈夫なんじゃないの?勇者じゃないんだし…。」
「聖戦の誓いを善神に捧げるの。それが勇者因子の繋がりをつくってしまうのよ。」
「じゃぁ、俺が知ってる勇者は100年間戦い続けるっていうのか…」
「しかもな、勇者召喚で召喚される人間は、争い事の少ない世界から召喚されることが多い。」
「えっ…違う世界からの召喚って事?」
「そうだ。異世界召喚というものらしい。」
「だからな、精神の消耗も激しいはずなんだ…。」
「成る程…なんとなく見えて来た。つまり俺に勇者を救う勇者になって戦って欲しいって事?」
「……まぁ、そんなところよ。」
「でも、それなら俺じゃなくても良いんじゃない?」
「駄目なの。」
「何故?」
「あのな、お前…烈光剣を出しちまっただろ?」
「うん。」
「アレは対魔王用の勇者専用決戦兵器なんだ。もっと細かくいうとな、属性付与で光を扱える人間は勇者だけって事なんだよ。」
「はっ?何言ってんの姉さん?その話で行けば俺はなるならないに関わらず勇者って事になるんだけど!」
「そうだ、まぁもしかしたらって気はしてたが、こんなに早くソイツに目覚めるとは思わなかった。」
「嘘でしょ…?」
「けれど…ここからなの。」
「ん?」
「勇者人造計画…。」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「もともとね、この国には三つの派閥が存在していたの。」
「召喚派、育成派、人造派の三つだ。」
「うち召喚派五割弱、育成派四割、人造派は微々たるもんだった。」
「私達は育成派。召喚はね?さっきも言った通り呼ばれる側に理不尽を強いるものなんだけど、呼ぶ側には相当な犠牲を要求するの。」
「それこそ、神様でもない限りな。いや、神様でさえ分かりゃしねぇ。」
「育成派と人造派はそれを嫌ったわ。私達の世界を守るのは私達のはずだと。」
「育成派も、人造派も元は一つだったんだ。それが長い研鑚の結果、結局光の精霊や光を扱えるものでしか魔王を滅する事が出来ない事を突き止めた。」
「私達育成派は、勇者の血統を賛同の元に色濃くする事で、現存する勇者の力を強め魔王に対抗しようとしたの。彼らにすればそれも『人造』と変わりないと言っていたわ。」
「だが、それでは時間がかかる上、勇者以上の力を作り上げることは不可能だと袂を別って、強引な手口で勇者という存在を作ろうとしやがった。それが『人造派』だ。」
ミラ姉さんもヴェール姉さんも悔しそうだ。俺は両手で顔を覆う。何故こんな事を話しているんだ…。
俺がやったことは一体何だ…。
剣を振るっただけだ…。
繋がっただけだ…。
そこに光が…。
それは勇者しか…。
そして勇者は戦ってる…。
あぁ…そうか……そうなのか…。
「あぁ…そうか俺は…造られたんだ。」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
あぁ…早い…まだ16でこんな…どうして世界はこんなにレンに厳しいの…
「あぁ。そうだ。」
「ヴェール!」
「適当な事を言っちまっても、余計にレンを苦しませるだけだ。」
ヴェールの言うことは正しい。間違いない。それでもレンにはまだ伏せておきたかった。
こんな、私達の十分の一も生きていない子が、どうして背負わなければならないのか。
あぁ…レン……。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
まぁ、二つ名が出来ちまった以上、ハンターギルド中に広まるのも時間の問題だな。
しかもフォースが練気剣といきなり属性付与、光属性の烈光剣だ。話題に事欠かん。
貴族の連中がわめきだす前に、何処かに逃すのが一番だろうな。
久し振りに里に帰って、ついでに匿うってのはどうだろうな…。
ドラゴニュートが嫌なら大森林のエルフって手もあるなぁ。ミラがどう言うか知らんけど…。
それより相当堪えたみたいだな…。まぁ今日は添い寝でもして、発散させてやれば少しはレンも元気になるだろ。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「でも…まぁー仕方ないっか!」
「えっ…」
「はっ…」
「何が?」
「レン…だってあなた…。」
「でもしようが無いよ。それで俺の生まれが変わるわけないし。お父さんとお母さんはいなくったって、姉さん達はいるんだし。」
「はっ…はははは、あははははははっ!レン、お前流石だよ!流石はアタシ達の弟だ!」
「ぁぁぁあレン…レン!お姉ちゃんはお姉ちゃんは…」
「それに合点がいったよ。」
「あぁ?何がだ?」
「ギルマスに呼び出されて、『光属性はちょっと珍しいからー雷属性って事にするからレン君もそのつもりでねー?』ってさ。」
「あーこの事かーって。」
「ゼノ…アイツいい事思いついたわね。自分も雷属性だしムンティス支部は自分の弟子が殆どって事で通ってるからそれで通そうって考えたのね…。」
「どう言う事?」
「属性は自身の資質にもよるけどな、師匠や自分が感銘を受けた奴の属性をもらっちまうのが多いんだよ。」
「つまり?」
「実際アタシとやり合ってる時も激しく火花散らしてたんだから、見る奴が見なけりゃわかりゃしねーよ。」
こうして俺の秘密は守られた。そしてこの後、ねーちゃんが添い寝してやるの、それだったら私が先!だの、大いに暴れて二人とも女将さんからこっ酷く叱られましたとさ。
次は…
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。