二章 ❽ ゴブリン洞窟と闘神
さぁ、対象の出番です。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
ガクン…
「「ンッ」」
膝が地に着いた。限界か…そりゃ前座で30分とか馬鹿げた話だ…。
『主よ!!』
結び目が解けた。
『情け無い主でごめんな…。楽しかったよ。』
グヴォッ!!!
瞬間10メートルはゆうに吹き飛ばされた。着地と同時に転げ回り壁に激突した…。
「ゥアハッ…グハッ。」
身体中に落雷の様な衝撃が走る。そして吐血。恐らく臓腑に相当な負荷が掛かったのだろう。
もう手も足も動かない。
気合いとかそういうものでは動かせない。あぁ…本当に死ぬんだな…。
一歩ずつ奴の足取りが地面を伝わってくる。オレを何処かへ連れて行くのだろうか?それとも喰らい尽くすのだろうか?
最後に姉さん達に有難うと言っときたかったな。
「姉…さ……ん」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「ヴェール!!」
「ああっ!!」
しまった!見惚れた!死なないで!レン!!
ザッザザッ
目が虚!魂が離れようとしてる!
絶対間に合わせるから!
「レン!レン!!大丈夫?今治してあげるから!お姉ちゃんが治してあげるからね!!?」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
微かに響く命に反応し、ただ機械的に踏み潰し持ち去ろうとする。そんな感じだな!!
「おぅおぅ…よくもまぁアタシの可愛い可愛い弟分にここまでやらかしてくれたよぉ…お前、楽には死ねねぇよ?」
アタシの怒気を浴びて、何処まで立っていられるかなぁ!?
鬼は後ずさった。地の底の番人として逆らう者共を無機質に殴りつけ痛めつける。それが自分の役割だ。どんな強者であれ我に敵うものなどいなかった。なのに何だあれは?全身が震えている。初めての感覚だ。時間と共に圧迫していく何かに後ずさる事しかでき出来ない。何なのだ…何なのだ……。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「姉…さ……ん」
あぁレン!レン!!レン!!!直ぐに治してあげるからね?お姉ちゃんが精霊のみーんなにお願いしてあげるからね?
「大地と大気の遍く精霊達よ!世界樹に伝う朝露の一滴を我が前に!」
私は精霊の愛し子。私は長ったらしい詠唱を必要としない。単純に言葉にするだけで精霊達は理解してくれる。それが自分達にも必要な事と認識してくれる。
私の掌一杯に世界樹の朝露が集められる。そう、精霊は時間と空間を超越する。
ミラは溢さぬようにゆっくりと掌を自分の口許に持っていき世界樹の朝露を口に含んだ。そして余った水はレンの全身に振りかける。そしてそっと顔を撫でて口付けした。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
おぅおぅ、見せつけてくれるじゃねーか。何だかなイラっとするわ……。
「やめだ!消えろ!!!」
敵の得物である大刀が閃いた。我でさえ線は見えなかった。もう存在している事が出来ないほど、圧迫されている中でのたった一つの救いだったのかもしれない。ユックリと視線がズレていく…あぁ…そうか…解放されたのだ。
ドサッ
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
身体中を喚起が巡る。身体中が歓喜に満ちる。眼を開けるとミラ姉さんの顔が眼前にあった。
何が起こっているのかさっぱりだ。けれど良く良く身体中に意識を向けると、動く。死にかけていた体が動く。そして唇に暖かーく柔らかーい何かが触れていることに気づく。
「!?…!!!!^_^っ???」
もうコレは意識失っているフリしてOKですか?今眼を瞑れば…ハイ無理でした!目が合いました!
「あーーーあれ?」
「大丈夫?」
「う、うん。だ、大丈夫!!」
「良かったぁ!!!!!お姉ちゃん心配したんだからぁ!!!!!!」
抱きつかれた。いつ以来だろう?程よい柔らかさと大きさを持つ胸を感じたのは?
「あーはいはい良かった良かった。良かったですねー。」
「えっ!!?ヴェール姉さんまで!!」
「いつから見てたの!!?」
「はぁ!?ぶちゅーーーっといってレンが眼を開けた所くらいかな〜」
「言いよっ!そんな細かく言わなくて!!」
ミラ姉さんは頰を桃色に染めて嬉しい様な恥ずかしい様などっちとも取れる顔をしている。
「何だ〜チュウ如きで色気付いてんじゃ〜ねぇよ!」
グイッ!!と引き寄せられてチュウされた。そのまま舌を絡められた。
ミラ姉さんはあまりの衝撃に口を開けてる。大きく大きく開けてる。そしてあうあう言ってる。
「ぷはッ!」
「レン。お前…悪く無いな!」
「何がだよぉ!!あーそんな事よりアイツは!?」
「あーあそこで転がってる奴かぁ?」
牛頭と馬頭の首が別々に転がっている。首から下は何事もなかったかの様に綺麗に残されていた。
「んー。よく考えたらさ。アイツの皮でレンのレザーアーマー作ったらどうかって思ってな?相当レアなモンスターだし伝説級の防具はいけるんじゃ無いか?」
まだ立ち直れないミラ姉さんを置いて話を進めるヴェール姉さん。あれだけ苦戦した相手をいつのまにか倒して、ミラ姉さんの精神も一瞬で崩壊させるとは我が師匠にて姉、そして闘神…恐ろしい人だ…。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
何とか立ち直ったミラ姉さんの精霊術でルイとゾッドに追いついた。モーラも意識を取り戻していたが黒死狼に怯えていた。
「何とか装備は見つけてきたよ。」
「あ、有難うございます。」
「じゃぁ男性陣はあっち行くか?」
「あーはい。」
「うん。」
ミラ姉さんとヴェール姉さんの威圧がヒドい。
10分位で着替えがすんだ。みんなホッとした面持ちで談笑した。
ヴッヴッヴッ
「ギルドからの連絡だ。」
「えっ?何それ私達貰ってないわよ?それ?」
「えっ?試験投入とかなんとか?」
ハンターズリングに触れると。
《もう終わった頃合いかな?報告を待ってるよ?因みに緑のボタンを一回でギルド、二回で私、三回でフィアナさんだよ?》と文字が流れた。
「へぇー凄いなコレ。」
「ねぇレン?そのフィアナさんて誰なのかな?」
「えっ銀の薔薇騎士団の団長さんだよ?」
「んんん〜?何だ何だ?女か?」
「やめてよ。それ。報告義務かな?それをやれって言われてるんだ。」
「お前だけか?」
「さぁ?みんなもやるようになるんじゃないの?」
「で、やらないのか?」
「んーもう少し歩けば街だしね。今日は戻って報告するよ。」
「ルイ、ゾッド、モーラ。ちょっと早いけどお疲れ様。今日は災難だったけど、また何かあれば相談にのるから。」
「今すぐに有ります!」
「何だ?早いな。」
どきっとしたわ!
「オレ達を特訓してください!」
ルイの目は本気だ。
「いや、俺まだフォースになったばっかりだしな…それに訓練をつけれる様な立場にないよ。」
スッとゾッドが立ち上がった。
「あんたの職業はナイトだって聞いた。けど…ソードマンの俺より…その…綺麗だった。だから、あんたに習いたい!!」
ルイも続く。
「レンさんはソロでフォースまで上がったんですよね?その秘訣を教えてください!!」
モーラもだ。
「私今日死ぬかと思いました!すっごく恥ずかしい目にも会いました…。でも!だから!強くなりたい…!」
「レ〜ン〜?」
「諦めなさい。」
ジト目で姉さん達が後押しする。
「ん〜ん〜〜。分かったよ。俺の体の開く時と朝なら面倒を見るよ。明日からミョルニルの槌に朝六時集合だ。分かったね?」
「「「ハイ!!」」」
朧月の空に三人の声が高らかに響いた。
次回から新章です。
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