二章 ❻ ゴブリン洞窟と救出作戦
モーラちゃん…
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
「っとと…ここだ。」
「「うぅぅぅ…」」
「ほら、降りろ。着いたぞ。」
「すみません…ちょっとだけ休ませて下さい…」
「はー。全く…。」
「コレとコレを飲め。ほら、水だ。」
「「ぅぐぅぅぅっ!」」
「吐き出すな!飲み込め!!」
涙目になりながらも飲み込んだ…ちょっとは気概のあるやつらだ。
「「ハァーフゥーハァーフゥーハァー…」」
「死ぬかと思いました!!」
「死ぬかと思った!!」
「でも死ななかったな。」
「そうですけど!」
「そうだけど!」
「二人とも仲良いなぁ…好きな子も一緒とは…」
「えっ!」
「ぬぁっ!」
流石にバレバレなんだよなぁ…
「突入する前に一つ言っておく。救出したら直ぐに脱出だ。分かったか?」
「えっ?」
「何でですか…?」
「いいから、分かったか?」
「はい。」
「あ、あぁ…」
「それと得物だが、二人ともコレを使え。」
「ショートソード?」
「そうだ、ソードマンのゾッドには物足りないかもしれないがな。」
「ただ切れ味は保証する。ミョルニルの槌作成の逸品だからな。」
「そして洞内で二人は、俺の少し後ろの両側に立って道を照らすんだ。」
「俺も松明を持つんですか?」
「そうだファイターのルイは盾持ちなんだろうが、今回は片手でやってくれ。ただ、盾は背中に背負っておけ」
「はい。」
「あれ?それは?」
「コレは小太刀という。俺の使う得物の中ではリーチが一番狭い武器だがこう言った場所では扱い易い。」
「しかも二本ですか…」
「そうだ、あまり時間は掛けられない。手数で勝負する!行くぞ!!」
「はい!」
「分かった。」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「ここに入って行ったみたいね。」
「確かにレンの気が残ってやがる…スゲーな子精霊。アタシにも一つくれよ。」
「嫌よ、それにあなた精霊魔法ろくに使えないじゃ無い。」
「ゔっ…そうだけど…」
「ほら…さっさと行くわよ!ま、この位の洞窟とモンスターの構成ならレンだと20分で終わっちゃいそうだけど?」
「そう…なら良いけどな?」
「どういう意味?」
「微かだが昨日の森に会ったのと同じ気が紛れてやがる。」
「まさか!?」
「今のところは大丈夫だろ?ただ精霊感知を使っといてくれ。」
「分かったわ。」
あぁー…何もなきゃ良いがなぁ…
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
隊列は魔狼二体、次に俺、後ろにルイとゾッド、締めにブラドとマハだ。
突入して既にゴブリン十二体、ホブゴブリン二体を討伐した。撃ち漏らしはあり得ない全方位索敵の布陣で、ルイとゾッド迄の侵入を防いでいる。
『結構進みましたよね?』
『ん、まだ三割ちょっとだ。』
「なんで分かるんだ!?」
『おい、声がでかい。ただでさえ響くんだ、抑えろ。で、索敵方法は残念だが教えられない。ただ、会っていることは間違いない。』
『どうしてだ…。』
『お、お客さんだ…。』
ホブ一体、ゴブリン三体だ。
直ぐに魔狼が両脇のゴブリンの喉笛に食らい付き、首の四分の一を引き千切る。
次に、俺が飛び込む。左抜き胴をするが、身長差で首を跳ね飛ばす。更に一歩踏み込んでからの袈裟斬りでホブゴブリンは絶命した。
鮮やかに決まる一連の流れに、二人は共に押し黙った。歳は一つか二つしか変わらないのにこの有様。何がここまで違うのか?
答えは単純明解だった。経験と鍛錬の差だ。既にルイとゾッドの歳には一人でホブゴブリン三、四体程度なら同時に相手出来たし、いくつかのゴブリンの巣穴も討伐した。
それもこれも『闘神』ヴェールと『精霊砲』ミラ、そしてもう一人のファースト(一等星)の姉のスパルタだ。
濃密な一日一日が体と心に刻まれ、口の端を上げることさえできない一瞬が、頭の隅々から体の端々の神経を呼び覚ます。
自分に何が出来て何が出来ないのか?何が出来ないから出来るようになる為に何をすれば良いのか?
全身全霊で考えせられる一瞬一瞬が、俺という人間を研ぎ澄ました。
これでもまだ甘いと言う三人は、一体どんな修羅場をくぐって来たのか?そもそも修羅場にさえ遭遇していないのか?
二人の新人冒険者は、そういった事を想定もしないだろうし理解もしてくれないだろう。
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『あいつまた犬使ってるな?』
『そのようね。』
『弛んでんな〜』
『新人二人を連れてるんでしょ?』
『自分で処理させりゃ良いものを。』
『レンと他の子を、同列に見る事自体おかしいわ。』
『まぁそりゃ、アタシ達が手塩に掛けて育てたからなぁ…』
そうねぇ…まさか私と姉さんがいない間に、ゴブリンの巣穴を二つ程潰して来いって特攻させた一年前が懐かしいわ。
そのあと、瀕死の重傷を負いながらもキッチリ潰してきたレンを姉さんが見て、ヴェールは姉さんにボッコボコにされてたけど…。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ここまでゴブリン三十二体。ホブゴブリン五体を討伐した。残りはこの奥だ。
『いいか?直ぐにこのソリに乗せて出口まで走れ。毛布は載せてあるからそれを使え。それから街まで止まるな。歩いてもいいから止まるな。いいな?』
『はい。』
『分かった。』
『三、二、一、行くぞ!』
ボロボロの布を押しのけ一気に突入する。振り返ったシャーマンゴブリンは驚きもせず、遅かったなと言わんがばかりの笑みを滴れる。
シャーマンは自分の前に火を炊き、更にその前に真っ裸の女の子が寝かされている。恐らくあの子がモーラだろう。背後で二人の声がしたからだ。
そして、その前の深い玄色の歪みが今まさに拡張し、何かの手がモーラにかかりそうになっている。
『疾風』
「ッサアァァァ!!」
片方の小太刀でシャーマンの首を三分の一程持って行きつつ、目の細かい肌に触れそうになる本命の赤黒く剛毛に覆われた腕を叩っ斬る。
「グギャャーーーーー!!」
洞内を先日聞いた叫び声と同種の声が乱反射する。
「いまだ!!急げっ!!!」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
『んん〜始まったみたいね?』
『あの声オーガじゃねぇか?』
『つくづくオーガに好かれてんなぁ…』
『あーそう言うのやめて気持ち悪い。』
『何だよ物の例えだろ…』
『ちょっと、シー!!』
「おい!モーラしっかりしろ!モーラ!!」
「モーラ!モーラ!!」
『行ったか。でも道中が心配だな』
『一応子精霊を付けといたわ。何かあったら知らせてくれるし、ゴブリンやウルフ程度なら時間稼ぎもしてくれるわ。』
『ほぇーやっぱ便利だなぁ〜。その子精霊。』
『はいはい。それじゃぁ入り口まで行くわよ?』
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ここは少し広い。ここなら大丈夫だな…。小太刀をカードに収納し、直ぐにグレイブ改め鬼喰いを現出させる。
武器に名前を付けることは武器の意思を呼び覚ます事になり特に神剣、魔剣の類には相当なアドバンテージが生まれるそうだ。
武器に名付けと言う事に、何故か忌避感を感じていたが、武器の威力が上がるのなら致し方ない。
辛うじて這い出た怪物はオーガ。魔化していない普通のオーガだ。
こん棒の一振りもやけに遅く感じる。魔化と言う現象が如何に力を与えている事がわかる。
そして恐らく、昨日の戦闘における俺自身の急激なレベルアップが、身体能力と動体視力を底上げしたのだろう。まるで赤子をあやす様にも感じとれてしまう。
数合打ち合い。これ以上付き合う理由も無いので一気に終わらせる。
「フゥ。」
辺りに満ちた魔素を吸収し、刃に纏う薄紫色の刃が、より形を成し鮮やかさを増した。
「ハッ」
身体を少し捻転しただけの横薙ぎだった。
つとっ。
事切れるとはこの事だろうか?何処か糸で吊られてたんじゃないかと思うほど急に動きが止まり絶命した。
ゾクッ!!
「んなっ!?」
振り向いた先は玄色の渦。そう、まだ止まってはいないのだ。そして召喚はされ続けている。
何故だ?贄は奪取した筈。誰が贄に?誰が。誰が…?
いない。シャーマンゴブリンがいない。ゴブリン特有の緑色の体液が渦に続いている。
まさか自らを贄にしたのか!?だから笑ったのか?遅いと、全てが終わった後だと…!
「畜生ッ!!」
紫色の刃圧が迸り歪みを切り裂く!
切り裂いた筈…だが…、魔素を吸収して永久召喚をしている為か逆に力を与えてしまった。
召喚の格が上がり、更なる召喚が始まる。
さて、ボスはどのモンスターでしょうか?
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。