一章 ❶ 始まりと新装備
初登校の小説です。
ここから先には誤字、脱字が多く存在していますが、
どうか生暖かい目で大目に見ていただき、お気をつけてお読み下さい。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。
朝だ…空が菫色に染まっていく…
この時間が俺は一番好きだ。
「んん…」
目をゆっくり開けて辺りを見渡せば、ようやく2メートル先が分かるくらいだ。
そしてまた目を瞑りそのまま少しゴロゴロする。
「ふぁ〜…」
瞼の裏が明るくなって来た。丁度いい頃合いだ。
「タオル、タオルっと…」
もそもそと起き出す。
壁に掛けてあるタオルとグレイブをもって中庭の井戸へと向かった。
毎朝の鍛錬とその後、朝一の井戸水での顔を洗って軽く朝を拭うのが日課だ。
「ハッ!フッ!!ハッ!」
「お早うレン。今日はいつもより早いねぇ?」
何時もよく通る声で女将さんが声を掛けてきた。
顔を洗い終えた俺が、
顔をタオルで拭いながら答える。
「んん…そうでも無いですよ。でも、今日はちょっと張り切ってるかもですね」
「おやぁ?なんだい?遂に彼女でも出来たのかい?」
「いや、そう言うことは全く無いんですけどね…五等星に上がったんですよ」
「はっ…五等星だってぇ?
アンタえらく早いねぇ…早すぎじゃぁないかい?」
フィフスの下には六等星があり、五等星で漸く一般ハンターの仲間入りだ。
「朝晩の特訓と、この装備品のお陰ですよ」
「そうかい?ウチの旦那もアンタからの注文で毎日楽しそうだから…あぁそうだ、今日の朝御飯は一品追加しといてあげるよ!」
「本当ですか?じゃぁ早目に着替えて母屋行きますよ」
下宿先の離れの2階が俺の住処だ。
まだ薄暗いので着火石に手を触れる。
すると階段と廊下の灯火石にボウッっと光が灯った。
オレは直ぐに部屋に戻った。
そして広目のウォークインクローゼットで手早く装備を整え、奥さんの待つ台所へ向かった。
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ここ数年。魔石技術の発達が目覚ましい。
これで一気に文明が2つは進んだ。
魔石は現在2つのルートから発掘されていて、割と簡単に入手できるが持続期間の少ない魔物から取れる魔石が一般だ。
そして、魔物を狩るハンターという職が一気に需要が高まった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
さて母屋の勝手口から入り直ぐ左のドアを開けると食堂だ。
既に肉の焼けた匂いが鼻腔をくすぐっている。
一枚板の8人がけのテーブルには、出来たばかりで湯気の立つ食事が並んでいた。
ポテトサラダ、スクランブルエッグ、大振りの粗挽きソーセージ3本、そしてキッコウ鳥の腿肉丸焼きが並ぶ。
そして皿の脇にはコンソメスープとテーブル中央にパンと野菜スティックが並んでいた。
「ほぉぉ…」
「なんだい?突っ立ってないでさっさと座りなよ」
これからこの料理が全て胃の中へ放り込まれるかと思うと、食べる前から至福に満たされてしまう。
「狩人の神様。今朝の恵みを下さり……」
簡単なお祈りを済ませ、早速食べる。食べる。食べる。
口の中で沢山の旨みが広がり寝惚けた脳を刺激する。
「美味しい?」
「ふぉいひぃでふよ」
目の前にはこの鍛冶屋の愛娘リーンさんだ。
フォーゲルさんと違い、ドワーフの親方の血を継いだようで、年頃の女の子としては小さい。
「何時も思うんだけどさー」
「ん?何です?」
「レンはいっつも美味しそうにご飯食べるよねー?」
牛乳で口の中に残った料理を押し流して答える。
「そりゃ、美味しいですし?」
「今日のスープは私が作ったんだよー?」
「えっ?ホント?すっごいですねぇ。
女将さんに勝るとも劣らない味…コレはすぐにでもお嫁さんにいけそうですね?」
「えっ…っとぉ…レンのエッチー!」
と、言い残してパタパタと食堂から出て行った。何故に?
洗い物をしている女将さんに礼を言って、食堂から隣の鍛冶場へ向かう。
「親方、フォーゲルさん。お早う御座います」
「おう飯は食ったか?」
「お早うレン君。いつも早いね」
丁度朝一の仕事にケリをつけて、水を飲んでいるドワーフの親方と息子のフォーゲルさんだ。
「おめー。五等星に上がったそうじぇねぇか」
「はい。昨日の夕方です」
「そうなのかい?レン君はソロだよね?
幾ら下積み期間があったって早く無いかい?」
「俺も本当かどうか聞いてみたんですが、累積値やギルド貢献値が認められたそうです」
「お前、色んなところから依頼受けてたからなぁ…」
「あ〜それで街の人達が何かにつけてウチを使ってくれるのかな?」
「どうだろうな?まぁいいレンよ。
お前がこれから受ける依頼でかち合う奴らは間違いなく、今迄の数段上のやつになる。
気を引き締めて行きやがれ」
「はい。」
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この鍛冶屋『ミョルニルの槌』は、冒険者の装備品から普段必要な日用品など鍛冶に携わる一切合切を引き受けている。
親方、フォーゲルさん、オレで考案・開発した『無属性概念付与術式』は様々なものに応用がきく。
コレがミョルニルの槌の名声を轟かせている要因だ。
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「あ、親方、それよりあれどうですか?」
「おぅ出来てるぞ、お前の注文通り作作れてるはずだ」
「うわ!早いですね!まだ1週間も経ってませんよ?」
「だから試作品だ。まずは使え。少しづつ調整していく」
「はい。有難うございます」
早速右腕に作って貰った円盾を装備する。
いい感じだ。そのまま親方と一緒に中庭の練習場に出た。
調練用の丸太に向かって立ち右腕を前に出す。
魔力を感知してバシュッっと音とも、スチール製のカードが丸太に突き刺さる。
「後10回ぐらい両方撃ってみろ」
「はい。」
真ん中で対象の発射口からバシュッバシュッと計20回。
16回は上手くいったが残り4回は後ろの壁へと逸れた。
「ふ…ん。まだまだだな…」
「すみません」
「ちげーよ。アレ(ミス)は俺のミスだ。
まだまだ改良が必要だな…クソッ楽しくなってきやがった」
「父さん…!」
「レン!そいつは多用するなよ?後、形は変えてもいいか?」
「はい。全然問題ないです」
「よし!フォーゲル!練り直すぞ!!」
「分かったよ!父さん!!」
そう言い残して作業場へ消えていく2人を見送った。
「朝からアッツい親子ね…いい装備回してもらうから全然良いんだけど!」
「お早うミラ姉さん」
嫌なのかそうでないのか分からない反応を見せるハーフエルフで二等星のハンターだ。
「ねぇ、レン?あんた五等星に上がったんだって?」
「うん。それが?」
「ん〜あんたこれから絶対厄介毎に巻き込まれるんだから、注意しなさいよ?」
「分かったよ姉さん」
「本当にわかってるのかしら…」
姉さんは頰に手を当てて少し困った顔をした。
「なーに、ンなもんは当たって砕けろよ。
レンよ、なんかあったらアタシらに言いな!何とかしてやんよ」
「本当?ヴェール姉さん頼りになる〜」
「ちょっとヴェール!アンタ甘やかしすぎ!この子そろそろ独り立ちさせないと!」
「なーに言ってんだ。ソロでこんな短期間でフィフスなんざそうはなれねーよ。
もう十分一人前だ。あっちの方は知らんけどなぁ?」
「ちょっとヴェール姉さん!」
ガハハと豪快な笑いを飛ばしているヴェール姉さんも、セカンドのハンターでヒューマンよりのドラゴニュートだ。
側から見ればヒューマンと何ら変わりない出で立ちだが、いざ戦闘になるとヒューマンの超越者並みの力を発揮する。
獲物はグレイブと大刀。俺のジョブが騎士なのにグレイブと刀を愛用しているのは俺自身の過去にも寄るが、ヴェール姉さんの直伝というのも大きい。
どっちの姉さんも一等星クラスの実力はあるのに何故かセカンドに留まり続けている。
まったく不思議な姉達だ…。
「さーて、レンよ。朝からコレは何の特訓だい?」
「あー。以前からどうしても欲しいスキルがあるんだけど、それを親方に話したらコレを作ってくれたんだ。」
「投擲術かい?確かにありゃぁスキルポイント使ってまでとりたくねーし。
かと言って金出して時間かけて習得するには割に合わねーな」
「そーね。しかもレンのジョブだと尚更よねぇ」
ジョブは魂に直結する。と言われるようにジョブはハンターギルドで勝手に決まる。
そこからの派生があったりはするが、元のジョブから逸脱したジョブにも変更は可能と言えば可能だ。
だが、思うようなスキルポイントの獲得出来なかったり、成長率が悪くなってしまい結局時間の浪費となってしまう。
ジョブ『騎士』は歩行だと防御特化型。
騎乗すれば突進攻撃特化と分かりやすい。
武器も片手剣、小盾、中盾、両手剣、槍、などの接近戦武器が主体で、遠距離用武器に適性はない。
なので、この様な『投擲』スキルの取得もありだ(と言っても取得しているのは盾だが…)。
「なぁるほどぉ…おっさんも中々良いもん作りやがる…入れ込んでるねぇ…」
「まぁそうでしょう。
巷で話題の『無属性概念付与術式』なんてレンの発想から生まれた様なモノだし?」
「ミラ姉さん言い過ぎだよ。
モノに出来なきゃ無いのと一緒なんだから。さてそろそろ行くよ」
「おぅ。気張ってこい」
「今日は私達2人とも非番だし、昼にはギルドに顔出すから夜は3人でご飯食べましょ?」
「おっ、いいなそれ!レンのフィフス昇格祝いか?」
「そうよ。懐も暖かいし」
「じゃぁ行ってくるよ」
俺は『ミョルニルの槌』を後にした。
次はハンターズギルドへ向かいます。
出来れば簡単なご意見、ご感想をお願いします。