2話 荒野との戦い(1)プロローグ
「あーーつーーいーー」
「ですね」
確かに、玄関なのに暑いがうるさいぞ三月。しかも、それに同意しない琉川さん。
「琉川さん・・・あんま暑くなさそうだな」
「呼び捨てで良いです・・・暑いですよ」
「じゃあ俺も呼び捨てで」
「わったしも〜!!」
うぜぇ、黙れ三月。
「あり?アレってナッチャン?」
「お嬢ですね」
そういや、なんで琉川って、お嬢って呼ぶんだろ?やっぱ分かんねーや。
「那瀬!!」
校門で悩んだ表情をしている那瀬。
「・・・あ、みんな」
「何してんの〜?きゃははっ」
黙れ三月。話が進まなくなる。昔から脱線女ってあだ名がついてたからな。
「お嬢?」
「魔王が・・・」
はい?魔王って何!?ホントにRPGなのかよ!?
「姫を捜せって・・・」
那瀬は不思議ちゃんじゃねーし、頭がおかしいわけじゃない!三月みたいに・・・それなのに、何言ってんだよ!!
「まさか、この荒野に出て無いよな?」
「アレ見て・・・」
那瀬の綺麗な指の先を目で辿ると・・・
「瓦版?」
「今、江戸時代じゃないよ〜変なの〜・・・・・・・・ってホントだ」
ムカついたので三月の頭を本気で殴った。「うぎゃっ暴力反対!!」って言ってたのを無視した。
「えっと・・・『平民達よ。我々の姫が行方不明になった。見付けた者には褒美をやろう』・・・下に“魔王”と書いてますね」
琉川は、瓦版を読んだ。
「ってことは、人がいるんだよな?」
「えぇ・・・平民ということは・・・」
俺の考えに同意した琉川。
わけが分らねーよ。なんで、こんなことに・・・
「なんか・・・魔王ってわりに・・・」
「あぁ・・・」
確かに三月の言うとおりだな。こんな風に魔王が表立っていいのかよ・・・
なんか、支配してるって感じもしないし・・・
「姫ってどんな子だろうねー!!まぁナッチャンに敵う子なんていないしー!!」
それには同感だ三月。琉川も頷いてる。やっぱ好きなんだな。
また無表情だ那瀬。う〜む。中々、照れないな・・・
「あの・・・」
背後から少年の声がした。
「なに?」
「・・・僕、フィルって言います」
「フィルくんね!!」
三月は嬉しそうに話してる。
少年、フィルはオロオロしながら話した。
「お、お姉さんの名前は?」
犠牲者が増えたか・・・那瀬中毒。
フィルは赤くなった。
「・・・那瀬優妃です」
「那瀬サマ・・・」
やっぱり名字か・・・まぁ、那瀬も嫌そうじゃ無いし・・・
「一緒にいても良いですか?」
「・・・うん」
この時は、コイツの正体なんて知らなかった。
だからといって、悲しいことになるわけじゃねーし。