不穏な空気(3)エピローグ
「置いてきて良かったかな?」
那瀬は、ふと言った。今、ボク達は、魔女の館にいます。
いきなりだけど、二週間なんだよ?この星一周。だから、そんなに時間掛からないし。
「ルイは意識不明、サランは看病。連れてくなんて無粋な真似やめなよ?」
「・・・分ってる」
那瀬の気持ちは分るけど、サランなら魔女に何をするか分らないし、助けるなんて出来ないからね。
「・・・平屋建てかい?」
あんなデカい城の後にこれは無いでしょ?
小さいし、狭そうだし・・・。
「とりあえず入ろ?」
「そうだね」
まぁ、相手は魔女だし無理はしない。
「雑魚もいないって・・・罠?」
「違うと思う・・・」
自信が無いんだ。珍しいな。
「・・・きたの・・?」
ヤバいね。目が危ない。狂気ってとこだな。
「話を聞いて」
「きくわけない!!」
那瀬を遮るように話す。たどたどしい言葉に驚く。
「どうして?わたしじゃ・・・・だめなの?」
何を言ってるんだい?意味が分らないよ。
こんな事なら、調べれば良かったな。
「すべてが・・・わるいんだ・・・あははハはハハは・・・こわせば・・・・・・・!?」
「那瀬!!」
頭を抱えて笑ってる魔女に抱き付いた那瀬。
魔女は驚き、もがく。
「はなせっ!!はなせっ!!・・・あ」
手をバタバタ動かしたせいで、魔女の爪が那瀬の綺麗な頬に、赤い線が出来た。そこから、綺麗な血が流れた。
今すぐ魔女を、殺したかったが、ウズウズしてる自分が、酷くムカつく。
那瀬の血・・・もっと流れたらキレイだろうな。あの無表情が壊れる瞬間を見たいと思ってしまう。
ドクンドクンと、痛いほど脈が打つ。
あぁ。あの天女の羽衣を血に染めたい。
狂ってくる自分を止める術を知らない。
ヤメロ・・・。那瀬に手を出すな。
「大丈夫よ・・・私がいるから・・・」
那瀬の優しい声を遠くに聞きながら意識が途切れた。
那瀬の焦った声が、部屋中に響き渡る。
「ノア!!」
「あっ・・・ど・・・して・・・」
喉がカラカラで、声が上手く出ない。
なんとか絞り出した声は、年寄りの声だった。
自分が傷付けたのに、自分を抱き締める女を見た。
身長は、アタシよりもあるのに、身体は細い。折れてしまうんじゃないかというくらいに。
そんな身体で、必死にアタシを抱き締める女。
女の身体は温かい。アタシは冷たいのに・・・。アタシの身体を暖めようとしてる感じだ。
「・・・分らないわ」
女は、遠く・・・一緒に来た男みたいな女を辛そうに見つめると、アタシを見て言った。
分らない?アタシのせいで傷を負ったのに。それなのに止めようとしたの?
「・・・アタシ」
「理由を話して?一緒に考えてあげるから」
女はアタシの言葉を遮り言った。
話す?考える?何を言ってるの?
なんて人の良い女だ。こんなんじゃ、誰かに騙されるよ。
「慈善ばかり言ってると、後で痛い目に合うよ」
「確かにね・・・でも、本音だから」
口が少し上がった。分りにくいけど笑ってるように見えた。
この子は、表現を表に出すのが苦手なんだ。
その優しげな顔に、アタシの顔や体が熱くなってく。
この子は、知らず知らず味方を作ってくんだ。そして、自分に惚れる者を増やしていくんだ。
手強いわけだね。アタシは、最初っから勝てなかったってことじゃん。
「あの?」
ずっと黙ってたアタシを心配そうに見る女。
「・・・アタシは真実の愛が欲しいんだ」
知りたいんだ。愛が欲しいんだ。
この子といれば見つかるかな?
「でもね、私この世界の人間じゃないの。いつかまた帰ってしまうの」
え・・・。帰る?寂しいな。
よしっ!!アタシも、この子に会いに行くぞ!!
「私の名前は那瀬、あの子はノアよ」
「アタシは、弥衣というの」
「ヤエ?私の世界の名前っぽいわ」
まぁ、アタシも、異世界から来たんだよね。そう言うと、那瀬は驚いてた(ような顔)
でも、那瀬の世界とは別みたいだね。魔法が使えないみたいだし。
「んっ・・・」
「大丈夫?ノア・・・」
ボクはどれだけ寝てたんだろう?魔女と仲良く話してるし。
「アタシはヤエっていうの宜しくね」
「あ、うん」
那瀬の話を全て聞いた。
ごめんね那瀬。ボク、那瀬に狂気になってた。今は言えないけど、いつか変われたら良いな。
「これからどうするんだい?」
「とりあえずサランに会おう」
ボクの言葉に頷いた那瀬。
だけどヤエは言った。
「アタシは残るよ。魔法は切れてるし、嫌われてると思うし」
結局、コイツのことが分らなかったな。たぶん、ボクと同じく狂気に冒されてるんだろう。歪み切った性格なんだね。
「また会おうね」
「会いに行くよ。魔法でね!!」
便利だな。魔法って。ボクも使えたら良いんだろうな。
ヤエと別れ城に向かうボクら。
今度こそ、騎士団を作るぞ!!
ヤエは、いつかまた出ます。作者の気分次第です。良い子で待っててねヤエ!!