世界の不純(3)エピローグ
「こっちの方に街があります」
ボク達は、村の隣りの街まで行くことになった。理由は・・・。
「娘を、隣りの街まで連れて行ってくれ」
サランの父親が言ったからだ。サランの婚約者は心配してるだろうからね。
「そして、戻って来なくて良い」
「お父さん・・・?」
言った後、父親は消えてしまった。
「どういう事?」
「たぶん、幽霊ね。娘の幸せを何よりも願ってたから逝けなかったんだ」
そうなんだ。サランは、ボーッとしていて、次第に頬に水が流れた。
それは涙で、両手で顔を覆った。
那瀬はサランの背中を撫でた。
「うぅ・・・お父さん」
「貴女は、お父様の分まで幸せにならなくちゃいけないわ」
優しく声を掛けてる那瀬。
それに何度も頷くサラン。
「“ありがとう、すまない”って聞こえたのボクだけ?」
「いえ、私も聞こえたわ」
「ウチも・・・」
そっか。良かった。サランにも聞こえて。
「逝けたよね?」
「もちろん。でも・・・」
那瀬が歯切れの悪い言い方をした。サランは悲しい表情になる。
「サランが幸せになればお父様も幸せだと思うわ」
「っ!!」
やっぱり、その人が亡くなったら、幸せかどうかを決めるのは、生き残ってるボク達なんだな。
例え、恨んだまま消えてしまっても、ボク達が幸せで暮らしていかなきゃいけないんだ。
その人の分まで必死に、足掻いて生きていかなくちゃ・・・。
「隣り街まで送るわ」
「・・・ありがとう」
泣きやんだサランを見てから喋り出した那瀬。
「もちろんボクの後ろを歩いてね」
はいはい、と軽く言った那瀬。なんか冷たくなったような。
ウザいなぁ。山賊。アイツら以外にもいるのか?
ボクは、半殺しで倒してく。
だって那瀬達に見せるなんて失礼だからね。
「・・・はぁ」
「どうしました?」
溜め息吐いた那瀬に聞くサラン。
「いえ・・・ちょっとね」
どうしたんだろう?顔色が悪いね。
「大丈夫?」
「街まで後少しですから、着いたら休みましょう」
サランに寄り掛かりながら歩く那瀬。
心配だ。
「見えました!!」
サランの声に頭を上げると、レンガの街だった。遠くに一際大きい建物が見える。
「あれは、この街のお城です」
ふ〜ん。なるほどね。街か・・・。
「あそこに宿屋があります」
「キミの婚約者は?」
「那瀬が一番です。その後で行きますから」
ボクは、那瀬を背負った。サランは先に歩く。
「ここです」
至って普通の宿屋だった。
ボク達は部屋を借りて中に入った。
ベットに優しく置いた。
「タオルです」
サランは、水に濡したタオルを持ってきて、那瀬のオデコに乗せた。
「良かった・・・大きな病気とかじゃなくて」
「疲労だね・・・。少し休めば大丈夫だよ。サランは行って良いよ?」
「でも・・・」
何かありそうなサラン。そんなに心配なのかな?
「ノア・・・行ってあげて」
那瀬?具合が悪いキミを置いてくなんて出来ないよ。
「私は眠ってれば大丈夫だから、後で話を教えて?」
「うん・・・分った」
本当は嫌なんだけどね。那瀬が、そこまで言うんだから。
「ごめんなさいノア・・・」
「いいよ。行こうか」
ボク達は、那瀬を置いて、お城に向かった。
お城の王様に話せば騎士団のこと何とかなるかもしれないね。
なら、行く意味はあるよ。