世界の不純(2)
ウチは、サランといいます。とある村から、山賊に連れられて来ました。
ウチ以外にも数名村人がいる。ウチの知り合いばかり。村が小さいから当たり前なんだけどね。
「サランだけは、何があっても守るからね」
「うん。ありがとう」
隣りのおばさんが言った。ウチが一番年下だからだろう。
おばさんの言葉が励みになって勇気が出た。
はぁ・・ルイ様・・・もし、ウチが死んでしまったらルイ様は別の誰かと婚約しちゃうの?ウチ以上に綺麗な人と・・・。
「そう。目の前の美しい人みたいに・・・・・・・・・って、え!?」
だれ?ウチの村には、こんなに美しい人なんていなかった。
同じ女なのに、心臓が高鳴った。
「なんで眼鏡外すかな?那瀬」
「見えにくいもの・・・」
少年っぽい子が言った。眼鏡って何かな?
女の人・・・ナセ?珍しい名前の人は、綺麗な声で言った。
冷たく氷のようだったけど、なぜか暖かみがあった。
「だれ?」
「私は那瀬・・・」
「ボクは乃天」
なんとかして、絞り出した声。那瀬とノア・・・か。
ノアの雰囲気がルイ様に似てる。
「山賊は、やっつけたから・・・もう大丈夫よ」
那瀬の言葉に、村人全員が叫んだ。
「なんで?」
「貴女のお父様から聞いたの」
お父さん・・・無事だったんだ・・・良かった・・・。
ポロポロと涙が流れた。那瀬はウチを優しく抱き締めてくれた。
「とりあえず帰ろうか・・・」
那瀬の優しい声でみんな立ち上がった。
牢屋の檻は、ノアって子が、珍しい武器で切った。切った・・・って、けっこう硬いよね?
みんなで洞窟を出た。
いきなりだけど、ボク達が、この洞窟に入ってからの話をします。
「ここね・・・」
那瀬の言葉にボクは、前を見た。
見た目は悪の巣窟って感じだった。
「入るわよ」
「待って!!」
どんどん入ってく那瀬の腕を掴んで止めた。
「なに?」
「那瀬はボクの後ろにいて・・・ボクが戦うから」
武器も無い那瀬は無防備だから、ボクが那瀬の剣と盾になるから。
「分った・・・」
ボクは、那瀬の前を歩いた。
トラップとか無くて良かった。
途中現れた山賊の仲間は、ボコボコにやっつけた。
ボクに敵う奴なんていないから記しても意味は無いし。
「とりあえずボスを倒しましょう」
確かに、村人を連れたまま戦うのは辛い。
そして、ボク達は大きな扉の前に立った。
「那瀬は、ここにいて」
嫌そうな顔をしたが、頷いてくれた。
那瀬を扉の前に置いて、中へと入った。
「誰だ?お前・・・」
趣味の悪い服を着た男がいた。
武器は大男と同じ長さの斧だった。
「楽しめそうだね」
ゾクゾクするなぁ。ボクに敵ってくれれば良いんだけどな。
「っく!!」
大男は、何も言わずに武器を振ってきた。
やっぱり遅いね。斧だもんね。
ボクは、斧の刃をヌンチャクで防いだ。
「力弱いし・・・つまんない」
思ってたよりも力が無かったのかショックだった。
「・・・キミはボクが壊す。弱い者はいらない。必要なのは強者だけ・・・」
目をキッとさせて睨んだ。そして、ヌンチャクを構えた。
「・・・排除」
駿足で大男に近付いて背後から背中を殴った。
「ぐはっ」
鈍い音が響いた。大男は、何度か転がって仰向けになった。
「キミを、ここで殺ってもいいが・・・一応、選択肢をやろう。山賊なんて止めるか、ボクの騎士団に入るか、ここで死ぬか・・・」
男の首にヌンチャクを突き付ける。男は苦しそうに言った。
「騎士団・・・?」
「そう・・・醜い奴等を潰す正義の・・・・ね。もちろん山賊の仲間もね」
この選択肢に乗るかはキミ次第だけどね。
「・・・くくく。騎士団な・・・おもしれー」
男はニヤッと笑って言った。
「団長は、お前が?」
「ボクはならないよ」
「ちっ。つまんねー」
つまんなくて結構だよ。だって、いつか帰るなら無意味に等しいから・・・。
「どこでだ?」
「後で連絡するよ」
どう連絡するとか、この際気にしないで・・・。ボクに出来ないことは無いから。
「ノア・・・」
部屋を出ると那瀬はボクに近付いてきた。
心配してくれたのかな?
「さて、行こうか」
地下を下りてくと、檻が見えた。あれが牢屋のつもりだろう。
「どうやって開けるの?」
那瀬の言葉にニヤッと笑うボク。
「ぶっ壊す」
那瀬が、ハテナを浮かべてたけど、ボクは気にしなくてヌンチャクを構えた。
「・・・・ノア」
金属独特の音が響き、檻は円の形に、くり取られた。
那瀬は、呆然としてた。そんな姿も可愛いけどね。
中には村人がたくさんいた。女の子もいて、あの人の娘なんだろうな。
騎士団のメンバーが出来て良かったよ。
まず、どこに騎士団の本部を創ろうかな?