魔王と姫(2)
「アナタ・・・何を隠してるの?」
「え・・・」
なんで、俺の感情が分ったんだ?
「魔王ってのと・・・人間の姿と関係あるの?」
どこまで分ってるんだ?
「・・・裏歴史ってのがあるんだ」
真実を知ったら、コイツらはどうなっかな?
「・・・世の中には、表沙汰にならない歴史がある。それが裏歴史でしょ?」
本当にコイツ、何なんだ?詳しすぎる。
「まぁ、それだけじゃないんだ」
「人の姿をしてるが・・・実は違うとか?」
この男も、侮れない。グサッと真実に切り入ってく。
「あぁ。お前らは知ってるだろ?歴史を・・・」
「ブランシュ王国の初代王様がリプールの主導権を握った・・・っての」
記憶力は良いな。話してて楽だ。
「本当の最初は・・・俺の祖父だ」
「そりゃあ、いきなり主導権なんて握るなんておかしいものね」
薄々気付いてるな・・・コイツら。
「契約ってところかしら?」
「あぁ。俺らは魔族だからな」
主導権を渡す代わりに、女を貰う。
「でも、あっさりと引いたわね」
「・・・当時の魔王は、ある女を愛してたんだ」
その女を貰うために・・・。
「なるほど、ついでに戦争の手伝いをして、しかもリプールに手を出すなって条件もあったんですね」
「そうだ」
簡単に手放したから、他の魔族と争ったらしいが・・・結局は、魔族も人間の女に惚れたしな。
「でも、それと・・・フィルとの関係は?」
あぁ。それだけなら問題は無い。
「俺が愛してしまったのは・・・姫だったから」
「今まで普通の人間だった・・・。それなのに、姫だったから・・・関与してしまう」
女・・・確か那瀬って言ったか?勘が良過ぎて人間に見えねー。
琉川って男も、冷徹だし。
「じゃあ、さっきのは演技だったわけ?」
「いや・・・本音だ」
「・・・・いい加減にしないと潰しますよ?」
なるほどな。琉川ってのも、さっきリフィルを追いかけた奴等も那瀬ってのが好きなんだな。
「リフィルの好きな奴は?」
「知ったらどうするの?」
「・・・さあ?」
生かしておけないが・・・。
俺に許可なく好きになったのなら・・・許さねー。
「・・・鈍感ね」
は?那瀬・・・何言ってんだ?
この俺様が鈍感なわけねーだろ。
「お嬢ですよ」
なにが?琉川・・・説明足りねーよ。もし、俺の部下だったら、クビだぞ。
「フィルの好きな人・・・お嬢です」
なっ・・・。
まぁ、那瀬なら分らねーでもねーか。綺麗だし。
でも、女がライバルってのも有り得ないことだな・・・。
「どうでも良いけど、フィルはアンタを好きだったのよ?」
嘘だ・・・。だって俺から逃げたし・・・。
「逃げた理由はストーカーでしょ」
何にも言えねー。俺のせいだったか。
「ホント自業自得。バカのくせに、ろくに考えず突っ切るから」
言い返せない。俺が不甲斐ないから・・・。
「青二才でも構わない。ちゃんと話さないと分らないから」
那瀬は、凛とした表情で言った。
「連れて来たにょ〜」
気の抜けた声を出してやってきた。
「難しいことは抜きに・・・とりあえずアナタの感情を言ってみたら?」
覚悟は決めた。
リフィルは、女の子に連れられて来た。嫌そうに、俺から顔を逸らす。
俺の責任だから・・・。
「リフィル・・・」
女の子が手を放した。その隙に逃げようとしたが「聞きなさい!!」と、那瀬の言葉に立ち止まった。
俺は、リフィルの元へ行き、腕を掴み俺の方へ向かい合わせた。
「聞いてくれ・・・」
「・・・うん」
最初は抵抗してた。ショックを受けたが、次第に力が抜け抵抗を止めた。
「怖かったんだ・・・魔族の俺が・・・姫を汚してしまうことを」
「バカ・・・」
「あぁ、俺はバカだ。好きなのにリフィルを傷つけると分ったら手放すなんて・・・」
ごめんな。もっと、俺がキミの事を分ってたら、こんな事にはならなかったよな?
「本当にっ・・・私っ・・・待って・・・それなのにっ・・・」
ごめん。二度も泣かせてしまって・・・。
いや、何度も泣かしてしまったんだろう。
キミの言いたいことは、俺には分るから。他の誰が分らなくても、俺だけは・・・。
「一件落着?」
「そうだな・・・」
女の子と男が話し合ってたのを、遠くに聞きながら、俺はリフィルを抱き締めてた。
何度お礼を言っても足りないほど・・・。
こんな日が来るなんて思わなかったんだ。