偉大なる台地(2)
「ふぅ〜」
一時間ほど歩いたよぉ。疲れたぁ。
「体力不足だ」
十代みたいに体力バカじゃないもん!!
ナッチャンも琉川もフィルも普通の表情だ。
なんか、私だけ・・・置いてけぼり?
「大丈夫?三月」
うにゃあ、なんで?ナッチャンは、毎朝リムジンのお迎えだから私より無いと思ってた。
「お嬢は毎日運動してますから」
そうでした。お金持ちだから、運動するスペースが沢山あるんだよね。
「あそこに見えるのが、異端なる台地です」
やっと〜〜着いたぁ。
もう歩きたくない〜〜。
「ここで待ってるか?」
十代が笑いながら言った。
嫌に決まってんじゃん!!モンスターいなくても、怖いもん!!
「オカリナをどうするんです?」
琉川が言った。完ぺき敬語じゃなかったよね?深く考えない方が身のためか。
オカリナのこと知ってるのは、オババの家に行った二人だけ。
「必要な人物が吹けば、おのずと道は開かれる・・・」
ナッチャンは言った。なんか、物々しい言い方だなぁ。オババってのが言ったのかな?
「誰だよ・・・必要な人物って・・・」
私だったら面白いだろうけど、違うだしね〜〜!!
「フィル・・・」
「う、うん・・・」
ナッチャンの言葉に頷いたフィル。
一歩前に出て、オカリナを吹いた。
「オカリナって悲しいよね?」
私の言葉に頷いた十代。寂しいって感じがするんだよね。
一定のリズム・・・間違いなんて一度も無い。
不思議に思った。懐かしい音楽だったし、フィルが何でオカリナが吹けるのか・・・
「聞いたこと無い?この曲・・・」
「あぁ・・・ガキの頃に・・・」
やっぱり・・・十代も思ったみたいだ。
でも、ナッチャンも琉川も分らないって顔だった。
「!?」
竜巻に龍が巻き付いた。
詳しく言うと、龍の形した風が、竜巻にグルグルと巻いた。
その風は、フィルが吹いてるオカリナから出てるものだった。
風は、私達を叩き付けるように当たりながら竜巻を消していく。
私を十代が、ナッチャンを琉川が支えた。
フィルは、髪を揺らしながらも、自身は動かない。まだオカリナを吹いている。
そして、風が止んだ。目を開けると、台地の上に土台があり、その上に宝箱があった。
竜巻も龍もいなかったのに驚いた。
十代は、私から離れて宝箱に近付いた。
「うわっ!!」
バチっと静電気みたいなのが走った。
みんな、心配して十代の名前を叫んだ。
「結界?」
普通に話してる十代にホッとしたみんな。
『我に近付ける者は、ただ一人だけ・・・』
突如聞こえてきた声に驚いた。
あまりの低い声に、お腹まで響く。ズシッとした低重音に鳥肌が立った。
怖くて声を出すどころか、口を開くことも出来ない。
「・・・近付けるのは誰?」
その空気を断ち切るように、凛とした声が響く。みんな、その声に意識が戻ったようだ。
ナッチャンの声だった。
『我に近付けるのは・・・・王族のみ』
また低い声に意識が遠のきそうだ。
それよりも、王族のみって・・・手に入れられないじゃん!!
私と十代は、ショックを受けた。
「フィル・・・」
ナッチャンは、フィルの名前を呼んだ。
何でかな?
私は、知らなかった。知ろうとしなかったんだ
ヒントがあったのに・・・ナッチャンは気付いてたのに・・・