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第一話 異世界転移

 絶望に打ちひしがれる二人の男女。


 「っく……!俺たちもここまでなのか……!」


 「まだ諦めるときじゃないわ……何か手はあるはずよ!」


 「もう試せることは全部やっただろう!今さらあがいたいところでやつは絶対に倒せない!」


 「私にとっておきの秘策があるわ。だけどこの作戦には30秒時間がかかる。あなたにその時間が稼げるかしら?」


 「随分なめられたものだな……!死ぬ気で稼いでやるよ……!」




 




 

 次回 20秒しか持たなかった


 

 お楽しみに!








 


 画面を前にした男はヘッドホン外して一息ついた。今日も日課の小説を一話書き終え、キッチンの方へ夜飯の準備に向かう。


 「きれてるじゃん……」


 男は食べたかった袋麺がないことに多少の苛立ちを覚えたものの、買いに行く気力もなく、そのままベッドで仰向けになった。


 

 ふと考える時がある。

 

 朝早くに学校に行き、講義を受け、友達と何気ない会話をしながら学食を食べて帰宅する。そんな何の変化も面白みもない毎日が繰り返されるのだろう、と。


 

 眠りに落ちる寸前、誰かが耳元で囁いた。

 

 「じゃあ、面白くしてあげる」と。


 

 男は嘲てそいつに言い返した。

 

 「できるもんならやってみろ」と。


 


 その瞬間、男のからだは眩い光を放ちながら跡形もなく消え去った。










 

 



 ボォォォォォォォォォ。ボォォォォォォォォォ。


 「目覚まし時計ぶっ壊れやがって……そんな安くねぇんだけどな……」


 いつもと違う音に違和感を覚えつつも、俺は手探りで目覚まし時計のありかを探す。しかしいつもならあるはずの場所にない。


 「あれ?おかしいな……俺の『豪拳雷牛』で吹き飛ばしちまったのか?」


 何でもかんでも自分の書いている小説に無理やりこじつけたい。そんなわけがないのだが。

 だとしたらさっきから鳴ってるこのボォボォていう音はなんなんだ?まるでキオラテスの鳴き声のような……


 「何でこんなとこで寝てるの!?早くあんたも逃げなって!」


 「え、ちょっ、誰誰!?玄関開いてたの!?」


 見たこともない女が俺に命令してきた。追い払いたいが、着ている服が既視感のある戦闘服なのが妙に気になる。それにしても今にも死にそうな顔してるなこの女。


 「何のことか知らないけどキオラテスに食われても知らないからね!」


 キオラテス?

 なんで俺しか知らないことをこいつがしっているんだ?

 音の聞こえるほうへ視線を向けてみる。遠くの方にうっすらと砂煙が舞っているのが目視できる。


 あの特徴的な鳴き声と砂煙……やはりキオラテスだ!

 4足歩行の全身体毛で覆われた獣。足こそ速くないものの、一度狙いを定めた獲物は食いちぎるまで絶対に追跡をやめない。見つかった瞬間に間違いなく死ぬ。


 刹那、逃走本能をフルに活動させた俺は、キオラテスがいる北東の方向へ走り出そうとした。


 「女!俺についてこい!」


 「そっちはキオラテスのいる方向でしょ!?なんで危険な方に行かないといけないのよ!」


 

 馬鹿だと思うだろう。


 

 「あぁ確かに危険だ。だがこのまま、まっすぐ逃げてもファルコ村に着く前にキオラテスに追いつかれるんじゃないのか?」


 「そ…そんなのやってみないとわかんないでしょ!」


 「口だけだな。本心ではわかってるんじゃないか?今逃げてるやつらはみんな逃げ切れない、ファルコ村まで距離がありすぎる、ってな」


 「だけどこのまま北東に向かえばそこらにいるザコモンスター『リリル』の巣がある。その中に潜ってやり過ごそう!」


 「でも……」不安が顔を覆う。


 

 そんなことできるわけがないと思うだろう。


 

 「キオラテスの鼻は俺たちの血の匂いしか嗅ぎ分けられない。視力もそこまでよくないから見つけたものを追い回すんだ。戦おうとしなければ逃げ切れる相手なんだよ!」


 「あんた何を言って……」疑問の眼差しを俺に向ける。


 

 なぜそんな詳しいことを知っているのかと思うだろう。


 

 「頼む。俺を信じてくれ」


 俺は女がついてきてくれることを信じて走り出した。


 

 キオラテスはこのホドン平原のリリルやギュラギュラといった常駐ザコモンスターなどとは違い、特定の状況下でのみ遭遇する初級冒険者の天敵。出現するたびに何百人もの犠牲者を出す厄災として討伐リストにも載るくらいだ。ましてやファルコ村からは、このホドン平原を通過して、隣町のバケニック王国へ傭兵として向かう若者が多い。しかしその遭遇率から未だ詳しい情報はわかっておらず、遭遇したら「運が悪かった」で済まされる始末。



 そんな未解明で獰猛なモンスターから逃げ切る方法と周辺の情報を、地べたで寝ぼけてた俺ごときが何で知ってるかって?






 答えは至ってシンプル。




 この舞台を小説として作ったのが












 




 紛れもなく俺自身だからだ。








 俺は胸の高鳴りを確かに感じていた。

 こんな優越感と充実感に浸れるのはいつぶりだろう。

 

 まだ理解が追い付いていない部分もあるがこれだけは言える。


 






 俺がこの世界で最強になれる素質を持っていると!









 俺こと、しがない大学2年生神谷健二は、迷いこんだ世界の全てを知る全知のプレイヤーとして、異世界転移をすることになった。

               



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