ある朝、パンプピックの子供は目を覚ます。
「パンプピック」という種族を知っていますか?
パンプピックとは、とっても愛くるしい、ふわふわのピンク色の毛並みをもつ、頭に双葉の葉っぱが生え、ほっぺに赤いハートマークがあり、耳もハートを逆さまにしたような、ロップイヤーのような種族です。
ちっちゃいので弱々しく見えますが、侮ってはいけません。
パンプピックは素早いため、なかなか捕まえることができないのです。
さらに、パンプピックは二足歩行で器用に手を使い、物も作れます。
彼らは頭も良いのですよ。
さて、そんな希少種族パンプピックは、周りを大きな森で囲まれた、「フリューゲル村」という、ありとあらゆる小さな生き物が住む、暖かい穏やかな気候の村に、小さな平屋の中で暮らしています。
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「起きてますか……?入りますよ?ミーラチカ?」
コンコン、と控えめに木の扉をノックした、ふわふわの毛並みに包まれた小さな手に、ロップイヤーのような見た目の種族の女の子は、トコトコとベッドまで行くと、新芽の色をした柔らかい毛布を引っ張りました。
「起きてください、ミーラチカ……!!」
少し大きな声で言うと、寝ぼけた顔のパンプピックが、ゆっくり瞳を開けました。
「…おはよう、レイス……。ふあぁあ……。」
眠そうに瞳をこすり、あくびをする愛らしいパンプピック。
そう、このパンプピックは「ミーラチカ」。
全身が小さくて、ふわふわふわふわしていて、大きな瞳は眠さでとろんとしていて、頭の双葉も少し垂れて、ついでに尻尾も垂れている、愛くるしい生き物です。
「レイスぅ、今日の朝ごはん、もうできたぁ?」
「もうできてますよ、早く顔を洗って、食べに来てね。冷める前にね。」
「レイス」と呼ばれた女の子は、ミーラチカと似ていますが、種族が違います。
ミーラチカには、頭の双葉や明るいクローバーのような色の尻尾、ほっぺの淡い赤色のハートマークがあり、全身がふわふわのピンク色です。
しかし、レイスは双葉はなく、額に、ダイヤ型の淡いブルーの石がついています。
さらにほっぺには、淡いブルーのハートマークを逆さまにしたものがあります。ミーラチカと逆ですね。
そして、レイスは全身がふわふわの青空のように爽やかな水色の毛並みで、尻尾も水色なのです。
レイスはミーラチカの親類にあたる親類で、「パンプリース」といい、これも希少価値がある種族です。
レイスはミーラチカの幼なじみですが、二人は家族のようなものです。
だって、いつも一緒の家に住んでますから。
さてさて、朝食の時間にちょっぴり遅れて、ミーラチカがやってきました。
「レイス!僕は今日は冒険に行くよ。夢の中でね、この村が出てきて、僕はその夢の中の村で、丘を見つけるの。それで、最初に見つけた印に、旗を置くんだよ。だからね、その夢の丘を探しに行くのさ。」
まろやかな味の、クリーム色の温かいスープを銀色のスプーンですくいながら、ミーラチカはキラキラとしてピンク色の大きな瞳をして言いました。
「そうですか、良い夢を見れて良かったですね、ミーラチカ。じゃあ朝食を食べたら、お弁当の準備をしてあげます。バスケットにミーラチカの好きなソーセージを入れてあげるね」
ニコニコ微笑みながら、レイスは言いました。
レイスは、ミーラチカのコーヒーカップが空になると、ポットから新しくコーヒーをつぎました。
レイス達はコーヒーが大好きです。
ミーラチカは、レイスのいれた、温かいコーヒーに小瓶から砂糖を三つ入れ、別の小さなポットからミルクを入れました。
それは、とってもすばらしいくらい、素敵な味がしました。
レイスはミーラチカのことはなんでも知っています。
なので、お弁当の中身は、ミートパイがいいかな、とか、さくさくのピーナッツクッキーかな、とか、オイルサージンのサンドイッチにしようかな、とか考えてました。
もちろん、どれもミーラチカの好きなものばかりです。
朝食を食べ終え、お皿を洗ったら、レイスはお弁当の準備に入るため、キッチンへと入りました。