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序
魔法使いは報復する。
無惨な女の屍体を抱え上げ、憎しみに輝く碧い目で人々を見下ろし、彼は言った。
後世まで語り継ぐその言葉はこう始まる。
――来る年の、最も夜の長く暗き日に。
「来る年の、最も夜の長く暗き日に。私はこの町に戻り、鐘の音と共に禍を降らせるだろう。皆息を吸い損ね血を吐いて息絶える。赤子さえ見逃しはしない。逃れようと町を出る者は獣になって荒野を彷徨う。お前たちの愚かさがいかほどのものか、知るがいい」
そうして、来る年のその日は来たのだ。
昔話をしよう。
この話を間違いなく伝えるには、最初から――つまり、私が九歳の頃の話からしなければならない。そう、長話さ。こんな、朝の遠い夜でなければ話せないような長い話だ。それでいて、夜のように暗い。
それでもよければ話そう。
臍をこっちに向けて、生真面目に聞く必要はない。ただちょいと静かにしてくれさえすれば良い。話下手の男の話だが、質問は全て最後に受け付けるとしよう。