表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/141

ギルドに登録……せず!?


 タイトルでネタバレという・・・。

 まあ、どうしようもないんですが。


「いえ、僕は登録しようとは思っていません。」


 僕のその言葉に受付のおばちゃんは、


「そうかい。

 一応理由を聞かせてもらってもいいかい?」

 

 と、案外シンプルな対応だった。


「と言っても、だいたいの理由は分かる。

 料理をメインでやってくんだろう?

 なんだい?引き止めてでも欲しかったのかい?

 できればギルドに登録してほしかったが、別に登録するしないは各自の自由だよ。


 ただ、まあ、ここまでおばちゃんの話に付き合わせたお礼にいい料理屋を紹介してやろうーーー。」


「それだったらーーー、このギルドで働かせて貰ってもいいですか?」


 僕のその言葉に、おばちゃんはポカンと口をあけて、


「へ?」


 と、間の抜けた声を出すのであった。




         ◆ ◆ ◆



「いやさ、すまないねえ。

 まさか、プレイヤーがギルドで働きたいなんて言うとは思ってなくてねえ。

 見苦しいとこを見せちまった。」


 そう言っておばちゃんはコロコロと笑う。


「で、こっちの方は是非とも聞かせて欲しいんだけど、どうしてギルドで働きたいなんて思ったんだい?」



 あれ?なんか面接を受けてるような雰囲気になったぞ?


 まあ、理由なんて簡単だ。


「いや、僕、料理ができないんですよ。

 包丁すら持ったことないです。

 正直、果物の皮をむいただけで『料理人』になんてなってすごい困ってるんです。

 

 で、さっき見た感じだと、ギルドの酒場ってそんな難しそうな料理とか作ってなさそうだったので、ここだったら料理について教えてくれるかなぁ、と。

 

 あと、ギルドの中だったらりんごがいても大丈夫かな、って思ったんです。ほら、飲食店ってペット禁止じゃないですか。」

  

 僕のその言葉に、おばちゃんは、


「は?」


 と、また間抜けな声をあげたかと思えば、腹を抱えて笑い出した。


「り、料理したことないって、ププブ、皮を剥いてたら料理人にって、ちょ、ダメ、マジ受ける。」


 そんなに笑わなくてもいいだろうに。


「どうしましたか、ギルド長・・・・。」


 隣の受付にいた人が心配して声をかけている。


 ・・・ギルド長?


「いや、なんでもないさね。ちょっと久しぶりに大笑いしただけさ。

 さっさと仕事に戻んな。」

 

「はいっ」


「あ、ちょっと待った。」

「はい?なんでしょうか。」

「今日からこいつ、ここで働くから。」

「あ、はい・・・って、ええ!?

 この人プレイヤーですよ?なに勝手なこと言ってるんですか!」

「こいつが、やりたいって言ったんだ。構わんだろ。」

「私の給料……。」

「一年くらいケチケチすんな!

 ほれ!挨拶しな!」

「うう……。勘弁してくださいよ、ホントに……。

 あ、初めまして。私、アシュリーと申します。

 ここ、ワンネストのギルドの受付嬢です。

 あの、ギルド長に脅されてるとかじゃないですよね?嫌だったら辞めてもいいんですからね?」



 アシュリーさんは赤みがかった髪を後ろで一本にまとめており、顔立ちもキレイ系。スレンダーな体付きをしていて、下手すると僕よりも身長が高いかもしれない。


 丁寧な挨拶だが、さっきのやりとりを見てると暗に辞めろと言われているような気がする。


「初めまして。時遡虎徹と言います。で、こっちは従魔のりんごです。」

『やっほー。』


 りんごの声は聞こえてないだろうけどね。


「あと、給料は少なくても良いですよ。たぶん、あまり戦力にならないと思いますし。」

「ーーーホントですか!?」


 おおう。めっちゃ食いついたよ、この人。

 どんだけ金にうるさいんだ。


「これで、定期的な休みができる♪♪

 しかも給料は減らないし♪♪♪」


 鼻歌が聞こえてきそうなくらいルンルンになってる。


「あ、こいつ料理人だから、受付には入らないよ。」


 でも、ギルド長がこう言った瞬間、その表情が凍りつく。


 ついでに、ドサッという音がしたので、後ろを見てみると残りの2人の受付嬢もカウンターに突っ伏していた。


「ギルド長……。受付嬢の人数、知ってますよね?」


「3人しかいないねえ。

 てか、そのせいで私までカウンターに座ってなきゃならないからねえ。」



「どういうことですの、ギルド長!」

「いい加減、人を増やすべきにゃあ!」


 後ろにいた2人の受付嬢も会話に参加してきた。


 というか受付を離れてもいいのだろうか。


 ・・・いいそうだ。日中は人がほとんど来ないらしい。

 


 で、最初に話しかけてきた方がアンジェラさん、後から話しかけてきた方がミルクさんだそうだ。



 後から知ったことだが、アンジェラさんは背中に小さな羽がはえており、翼人という種族。ちなみに金髪縦ロールで、やや傲岸不遜なところもあるけど、基本いい人だ。


 ミルクさんの方は見てわかるとおりに猫の獣人で、頭からぴょこんと猫耳がはえていらっしゃる。

 尻尾もあるらしいのだが、見せてもらったことはない。

 見た目は可愛い系で、小柄な人だ。髪は茶髪。


 あ、アシュリーさんと、ギルド長、もといバネッサさんはプレイヤーと同じ種族ーーー真人だそうだ。


 この4人に、酒場にいる2人を加えたのがこのギルドのメンバーなんだそうだ。



 少なくないか?とも思ったが、実際そうでもないらしい。


 もともと、街の人口よりも流れてきた見習い冒険者の方が多いという現状。

 街とはいっているものの定住している者の数なんて100から200程度にしかならない。

 突発の依頼なんてそうそう起こらず、買取に高レベルな査定が必要になるようなものなんてない。


 だから、朝と夕方の依頼ラッシュの時間以外は暇らしい。


 それでも、受付の数が受付嬢よりも多いという現状は変わらず、アシュリーさんたち3人はろくな休みもないらしい。




 だが、僕は後に知ることになる。

 考えでみれば、日中には1人でもギルド内にいれば業務はまわるのだ。

 なぜ、それなのにわざわざギルドにいるのか?

 それはこの街には娯楽施設なんて一つもないからーーーというのが事の真相らしい。


 ここにいる人達はなんだかんだ言ってこの街のスローライフを満喫しているのだ。



 まあ、そんなことを知らなかった僕は失言をしてしまうことになる。

 ーーー後から本当に後悔するのだが、



 すなわち、

「忙しい時くらいなら、手伝いますよ?」と。


 そのとき、3人の目がキラリと光って、獲物を見る目へと変化したのだが、その意味を僕はまだ知らない。

 後ろでギルド長があちゃー、みたいなことを言っていたのにも、当然気づかなかった。




         ◆ ◆ ◆



 所変わって、ギルドに隣接した酒場。


 いくつものテーブルが並び、染みついた酒の匂いがツンと鼻につく。


 壁を見ると『水』『ビール』『果実水』『つまみ』とだけ書かれたメニューがあった。

 うん、思った通りこれなら迷惑をかけることはないだろう。



 アシュリーさんに連れられてカウンターの裏まで来る。


 そこには男と女が1人ずつ座っていた。

「あれ?アシュリーさん、どうしたんですか?」

 

 女の人の方が話しかけてきた。その耳は犬耳。

 しかし、ミルクさんで多少はなれたのだからそこまで動揺することはないーーーと思って視線を下に移すと、ソレが目に入ってしまった。


 身長は僕と同じかそれより少し低いくらいなのに、胸にあるソレは今まで見た中で一番大きいーーー。


 そこまで考えた所で、隣のアシュリーさんから殺気が放たれたーーー気がした。

 うん、ホントに一瞬だったからよくわからないや、アハハハハ。


 アシュリーさんについて?


 僕はそこに触れるほど命知らずじゃないさ。


「アシュで良いっていってるのに……。」

「いえ!アシュリーさんは先輩なんですから私がそんな風に呼ぶなんてできません!」


 勢いよく、犬耳の女の子が答えると胸がぶるんっと揺れる。

 ・・・男として目線がいっちゃうのは仕方ないことなんです。だからそんな殺気を出さないで!?



 2人の女性から目を逸らすと、当然のごとく男の人の方に目がいく。


 こっちは特に特徴のない人間ーーー真人だろう。


 身長は僕よりも10センチくらい高くて、顔も彫りが深くてかなり格好いい。

 かなりモテそうな人だな、と思う。



「はあ。話がまだでしたね。こちらが犬の獣人のミレイ。酒場の従業員です。

 で、こちらが真人のトムさん。コックですね。」

 

「あのー。そう言えばこの人誰なんです?

 プレイヤーですよね?」


 分からないで今まで話してたの!?


「こちらは新しくここで働くことになった虎徹さんです。」


 ん?また2人の目がキラリと光った気が?


「ホントですか!

 やりました!ついに私にも後輩が!


 よろしくです!虎徹さん!

 分からないことが何かあったら、何でもこの私に聞いてください!先輩のこの私に!」


 アレおかしいな。さっきまで後輩キャラだったのに急に先輩ぶってきだぞ、この人。

 立ち上がったことでわかったがこの人は尻尾を隠してない。さっきから尻尾がすごいパタパタ振られてる。

 ・・・ついでにスカートもめくれそうで後ろのトムさんがなんとも言えない表情をしている。


 ん?いや、あの人はなんか俯いてプルプル震えてるぞ?大丈夫か?


 そう思って見ていると、突然立ち上がって僕の肩をガシッと両手で掴んできた。 

 チラリと見えたその目には水滴が……。


 泣いてる!?泣いてるの!?

 どうしたんですか、何があったんですか!


 なんか、変な雰囲気になってアシュリーさんもミレイさんも何も言わない。



 トムさん、あんたに一体何があったんだよーー!



   

         ◆ ◆ ◆



 現状把握。

 トムさんは女だけの職場にようやく男の僕が働くことになったので、嬉しかったみたい。


 「もうハブられなくてすむ……。」とはトムさんの談だ。


「ハブっていたわけでは……。」

 と、アシュリーさんが言っていたが、強く言わない所を見るに、心当たりはあるのだろう。



 一瞬、トムさんはホのつくあれかと疑ったことをここに謝罪します。



 

          ◆ ◆ ◆



 さて、その日から僕のギルド生活が始まった。

 朝はギルドの受付の手伝い。

 昼は北門周辺で果物狩り。

 夕方は酒場でミレイさんにこき使われ、

 夜はトムさんから料理の基礎を学んだ。


 ・・・忙しくね?



 他のプレイヤーはもう次の街へと行ったらしく、緑のマーカーを僕とりんご以外で見ることはなくなった。



 そうそう、りんごと言えば回復魔法が使えるのが分かったからギルドの中で商売にしている。


 首から『回復魔法、一回百エーン』と書かれた箱のそばでデンと寝ている姿はもはやギルドのマスコットとなっている。


 ・・・というか、僕より稼いでるんだよなぁ。





 そんな忙しくも安定した日々に変化が訪れたのはギルドで働き始めて8日目。

 ゲーム開始から十日たった日のことだった。



       ◆ ◆ ◆


 時遡 虎徹 lv13

 HP 1650  MP 1650

 SP 1650 

 STR 165  DEF 165

 INT 165  MND 165

 DEX 191  AGI 165

 所持ポイント 794

 所持金    20000

 メインジョブ「料理人」

 サブジョブ 「従魔師」

 固有スキル 「契約」

 所持スキル 「値踏み lv6」

       「魔力操作 lv9」

       「採集 lv16」

       「餌付け lv12」

       「料理 lv14」


 リンゴ lv28

 種族 跳ねウサギ

 HP 840  MP 1180

 SP 840 

 STR 84  DEF 56

 INT 56  MND 112

 DEX 84  AGI 196

 固有スキル 「  」

 所持スキル 「飛び跳ねる lv3」

       「魔力操作 lv5」

       「回復魔法 lv4」

       「  」

       「  」


 面白いと思ってくださったら、評価、ブックマーク登録お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神様からチートもらったけど俺yoeee!』
チートもらって異世界転生!?やったぜ、これで勝つる
・・・と思ったら、チートにデメリットがあるなんて聞いてない!
なんだこれ、俺yoeee! というお話です。

『病んでない(自称)な私が愛する人の妻と娘を可愛がる話』
愛している人に妻と娘が・・・これはもうたっぷりねっとりと可愛がってあげましょ「おかーさん! 絵本読んでなの!」やれやれ仕方ないですねえ・・・。
あれ? その娘から実の母のように慕われているのはなぜ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ