イベント崩壊す!その④
結局、増殖してしまった『蒼海の宝玉』を前に、目をそらす方針に決定。
イベントは極力関わらないことになった。
その後、まだ増やそうとするルファちゃんを押しとどめて寝かしつけ(徹夜明けでだいぶおかしくなっていた模様)、なんとか一息つくことができたのであった。
さて今日も海に行く予定である。
だが、その前に町へ買い出しに出かけることになった。
野菜や魚だったらストックはあるけれども、調味料やお米、肉などが少し不足気味なのだ。
まあ、四人ほど急に増えたからなんだけど。
ついでに花火も買ってきて、今日の夜にでもやろうという話になっている。
そして、買い出しという点においてプレイヤーはとても便利な存在だ。荷物を持つ必要がないのだから。
花月さんと葉月さんは修行中。
舞宮さんはクロガネが目立ちすぎるために無理。というわけで僕が買い出しに行くことになった。
誰かついてきてもいい気がするんだけど、僕一人・・・じゃなかった僕とりんごの二人だけだ。
この町について何も知らないし、危ないじゃん。道に迷ったらどうすればいいんだろう。
そしてやってきたフォースの町なんだけど、ワンネストに比べてとても活気がある。
そこかしこから大声が聞こえてくるし、人の数もワンネストの5倍くらいいそうだ。(ちなみに、ワンネストに定住しているわけではない冒険者も数に入れての話である。)
やっぱりメインは海産物っぽいけど、他の町から入ってきたらしいお肉とか野菜とかもある。いや、考えてみれば当然か。
昔のゲームだと、特定の地域でしか手に入らないアイテムとか多かったんだけどなぁ・・・。
そうそう、たまには『値踏み』スキルにも活躍してもらおう。ワンネスト(というか僕の周り)で使うと精神衛生上よろしくないからな・・・。
今いるところは市場みたいな感じで、いろーんなものが売ってるからね。買うものリストはもらってるけど、別に僕自身の買い物をしちゃいけないってわけじゃないだろうし。
・・・ふと思えばこれが初のおつかいかもしれない。買い物自体はワンネストでもやるけど、店員さんとも顔見知りなせいでそこまで怖くはないんだよね・・・。こう、何も知らないところで買い物って案外怖いなぁ・・・。
とりあえず花火、あとスイカ割り用の棒と目隠しも買っておこう。スイカは舞宮さんが持ってきてるから買わなくて良し。
「ねえねえ、これすごーくきれいだよ!」
隣を見れば、りんごがなにかを持ってはしゃいでいた。
どうやら貝殻で作られたアクセサリーみたいだ。
・・・でも、こんな虹色に光る貝なんてあったかな?
「どうかね、お嬢さん。ババ特製の螺鈿アクセサリーじゃよ。」
「らでん?」
「貝殻の内側に綺麗な層を持つ貝がいての。その部分だけを取り出して繋ぎなおしたんじゃよ。なかなか難しいんじゃよ?
しかもこれ、実は真珠なんかと同じ輝きなんじゃ。」
「すごーい!こてつ、これ欲しい!」
「え、いやでも高そうだし・・・。」
「ぶー!ルファちゃんには可愛いのあげてたのに、りんごにはないの?」
そこを言われると弱いのですが。仕方なかったんです・・・。りんごだったらぺらぺら誰かに言っちゃいそうだし・・・。
「ホホホ。妹さんかね。可愛いもんじゃのう。」
「妹・・・まあ、そんなもんですかね・・・。」
「違うもん!リンゴはこてつのお嫁さんになるのー!」
りんご、やめてくれ。周りからの視線が痛いから。
僕は断じてロリコンじゃないから。
「ホホ。羨ましいのう、あんちゃん。その兄妹仲に免じて少しまけてやるよ。」
「やったー!」
・・・ちなみにこのアクセサリー、割引後もそこそこの値段でした・・・。
さて、気を取り直しておつかい再開だ。
お米と、パン。あとはパスタも作ってみたいな・・・。主食系はこんなものかな?
おお、ナンがある。ワンネストの町には売ってなかったなぁ・・・。すぐそばにシーフードカレーの店もあるし・・・ちょっとくらいなら食べて行っても・・・。いいや、我慢我慢。
あとは醤油にバター、みりんくらいかな?
天然塩っていうのもあるな。普段使い用に少し買って行っておこう。
あとは、細々としたものをそろえて、っと。
これで終わりかな?でも、お金結構余ってるけど・・・。
あ、一番下に『少し多めにお金渡しといたから、好きなもんでも食べてきな』ってある。
よし、りんご!さっきのカレー屋に行くぞ!
◆ ◆ ◆
店に入ったはいいけど、満席らしく相席になってしまった。
まあ、そこまで気にすることでもないか。僕一人だったら待ったかもしれないけど、りんごもいるしおつかいの途中だし。
さて、だれと一緒になるのかな・・・。
・・・。
「ちょっと待つでござる金山殿。拙者猫舌にて、食べ終わるにはまだ時間が・・・。あれ?」
「すいません、こちらのお客様と相席をお願いしたいのですが。」
「え、ええ。構わないでござるよ。」
席にいたのは、プレイヤーでした・・・。
「・・・。すまぬでござる。仲間と間違えてしまったでござる。
初対面・・・ではないでがござるが、自己紹介をお願いしたく。拙者、オータと申す者にて。」
「僕は虎徹っていいます、それで・・・」
「ちなみにそこの幼女とはどういった関係でござるか?場合によっては通報も辞さないでござる。」
「りんごのこと?りんごはこてつのペットだけど?」
「・・・。もしもし警察でござるか。」
「いや、違いますからね!?りんごも変な自己紹介しないで!?
こほん、りんごは———こいつはりんごって名前なんですけど、僕の従魔で」
「ふむふむ、ペットプレイを認める、と。」
「いやだから違いますって!
もともと跳ねウサギだったのが進化したらこうなったんです!」
「はっはっは。そんな馬鹿なことありえるわけないでござるよ。つくならもっとまともな嘘にしておくでござるな。」
りんごの紹介めんどくさいな!
その後、りんごをウサギの状態に戻したり、本人から説明させたりと頑張った結果。
「つまり、従魔であったモンスターが進化したら美幼女になってたと。」
「はい。」
「タヒね。・・・おっと言葉を間違えたでござる。もげろ、そして死ね。」
「直接的すぎません!?」
「おそらくは全国のオタク・・・いや、全国の男が同じ気持ちであると断言できるでござる。
ところで、そういえばさっきそこで幼女に結婚を強要しているプレイヤーがいるという噂を耳にしたのでござるが・・・虎徹殿のことでござるか?」
「事実がすごいねじ曲がって噂になってる!?」
「ああ、そうそう。虎徹殿は『蒼海の宝玉』・・・イベントアイテムの宝玉についてなにか知らないでござるか?」
平静に。平静に。遭遇したときからこの話が出てくるだろうとは思ってたんだ。動揺を隠すんだ・・・。
「拙者たち、六つ目までは見つけたのでござるが最後の一つが見つからないでござるよ・・・。
ドラゴンがいたという噂は耳に入ってるのでござるが・・・ドラゴンが行ったという方向に近づくと消し炭にされるのでござる・・・。
って、どうしたのでござるか?なにやら焦っているようでござるが・・・。」
「いえ、もうそこまで進んでいたって聞いてびっくりして・・・。昨日来たばっかりなのに・・・。」
あっぶねー!なんか色々とバレかけそうになってた!
消し炭に・・・ってことはギルド長かな?ギルド長ありがとう!
「ああ、昨日来たばっかりだったのでござるか。それは残念だったでござるな。
でも、もう一つ残ってるでござるし!最後にも何らかのイベントがあるっぽいので挽回可能でござるよ!」
オータさん、あとダース単位で余ってるんですよ・・・。
「と、ところでりんごたん。
これくらいの・・・青い宝石みたいなの知らないでござるか?」
「これくらいの・・・?
あっ!あるある!りんご持ってるよ!」
りんごさ-ん!!!
ヤバいバレた・・・?
「おうちにたくさんあったの!ルファちゃんがそんなの作ってた!」
「そうでござるか・・・。たくさんあるのなら、それは拙者の探している物とは違うでござるな。
さて、食べ終わったことでござるし拙者は行くでござるよ。また今度どこかで会いましょうぞー!」
よかった、バレなかった・・・。うん、イベントアイテムが増殖可能とか普通想定しないよね・・・。
そのまま、別荘へと無事帰還。
あ、カレーはとても美味しかったです。
ハアー。疲れた。でも、色々とあったけれどオータさんはすごくいい人だった。・・・りんごを見る目が犯罪者三歩手前くらいのそれだったけど。
できれば、イベント関係ないところで会いたいな・・・。心臓に悪すぎるよ。
オータの固有スキル『空気を読む』は相手の感情をなんとなく察せたりもできるスキルです。
虎徹君との問答で、嘘はついてないけど違和感があるな・・・という感じでりんごに聞いてみました。
りんごの言葉は完全に本当のことを言ってる感じだったので、それを信じ、真実に近づきながらもそれを逃がしてしまいました。
オータのしゃべり方は、昔、忍者物の大作をやったときにうけて、それ以降あのしゃべり方がデフォルトになっています。




