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初めの一歩


 視界が開けるとそこは建物の中だった。

 

 すぐそこに神官風の人ーーーというかたぶん神官さんがいて話しかけてきた。


「ようこそ。プレイヤーの皆様。

 ここはワンネストの街。別名、始まりの街でございます。我々住民一堂、皆様の来訪を歓迎いたします。

 それではあとは皆様でごゆるりと。」


 それだけ言うとその人は部屋の外へと出て行ってしまった。

 プレイヤーに関わらないというのは本当みたいだ。




 あの金髪マッチョの人が口を開いた。

「聞いてくれ!

 どんなスキルを取るかなど、パーティー単位で決めないか?

 効率よくポイントを稼ぐには仲間がいた方が良いはずだ!」


 その後もなんか言っていたけども、僕は気にせずにそこを離れた。

 金髪マッチョの人も去るものは追わず、の姿勢みたいで、特に引き止められはしなかった。


 僕以外にも「コイツらはバカか?」みたいな目をして出て行く人もいた。


 その人達はソロでプレイするつもりなのだろう。


 とはいえ、半分以上は残ったっぽい。


 僕?

 僕はこの世界を楽しめれば十分だからね。自分の足で動き回れることの幸せさに比べればお金なんて大したことではないし。


 


         ◆ ◆ ◆



 街の中の景色はとても新鮮だ。

 というか、どんな景色でも、こうして体感するというのはなかなかなかったんだけどね。僕の場合。


 「武器屋」、「防具屋」、「ポーション屋」みたいなファンタジーな世界の店があったかと思えば、「魚屋」、「八百屋」、「セブン○レブン」などの看板も混じっている。


 その中に「古物屋」という看板を見つける。

 興味を惹かれた僕はその中へと入ってみた。



 中に入ってみると、出迎えてくれたのは時代を感じさせてくれる骨董品の数々。

 綺麗な翡翠色の壺の横に墨で書かれた掛け軸が飾ってあったりと雑多な感じにものがつまっている。


 

 一体どれくらいの値段なんだろうと思って見ていると、突然アナウンスが流れた。


【スキル『値踏み』を獲得しました。】


 すると、なんとなくだけど、頭の中に大体どれくらいという数字が浮かんできた。


 値段の低い物は範囲が狭くて、ほぼぴったりの値段が分かるけど、高そうな物は浮かんでくる数字の範囲も広い。


 たぶんスキルの熟練度を上げると高価なものでも値段が分かるようになるのだろう。


 

 店内を見渡してみると、ほとんどは6桁から7桁のものだ。

 初期費用では買えそうもない。残念。



 でも、その中でも一際桁の高いものがあった。

 スキルでも桁すら分からない。どれだけ高価なんだ。

 見た感じはただの古びた布団なんだけど。


 

「ほう。それに目をつけたか。」

「うひゃあ!」


 驚いた。突然後ろから声が聞こえるんだもん。

 

 振り向くとそこにいたのは好々爺然としたおじいさんだった。


「そんなに驚くかのう?

 最初から店内におったはずなんじゃが……。」


 ゴメンナサイ。気づいてませんでした。


「それは神より賜ったら寝具でのう。

 その名も『夢現ゆめうつつの寝具』というのじゃ。

 といってもなんの効果もないものなのじゃが。」

「神?」


 そんなのいるの?


「うむ。さすがにイレブネスの街に比べれば大したことではないのじゃが、ここ、ワンネストの街にもそれなりの頻度で神が現れなさるのじゃ。


 だから、特になんの特産もないこの街が続いている、ともいうのう。」


「イレブネス?」

「ん?ああ、お主プレイヤーじゃったか。

 なら知らなくても不思議はないのう。


 イレブネスは大神殿のある街じゃよ。

 聖職につくものなら誰もが憧れる街。その上、毎年数多くの神器が与えられ、無限ダンジョンもあるので冒険者や、商売人にとっても上位の者が集まる街じゃな。」


 ふむふむ、つまりは物語終盤で行けるようになる街ってことか。


「で、どうするのじゃ?買うのかの?」

「いや、お金が足りないですよ。」

「その寝具はプレイヤーになら300万で売れと言われているぞ。」


 ・・・これは高価なものがかなり安くなったことを喜べばいいのか、それともそれでも買えないことを悲しめばいいのか分からないね。


「あー、それはいいので、この近くで散歩に適した場所ってありませんか?」

「散歩?変わったことを気にするのう。


 ・・・そうじゃな、街の中かもしくは北門から出たところの草原かのう。

 街の外は魔物がおって危ないのじゃが北門ならばそこまで遭うこともあるまい。」

「ありがとうございます!

 また、今度お金がたまったら何か買いに来るので!」

「うちは多少なら買い取りもやっとるからのー。

 少しならおまけしてあげるぞ?」


 やった!

 少し嬉しいな!


 では、街の外に向かって、しゅっぱーつ!




          ◆ ◆ ◆



 はい、やってまいりました。街の外。


 北門の外は草原のようでとても見晴らしがいいです。

 リアルでは足と心臓のことがあって散歩にすら行ったことないから少し、いやかなり興奮します。


 おじいさん・・・あ、名前聞くの忘れてた。 

 まあ、いいや。

 おじいさんの言ったとおり、動く物はあまりいない。

 訂正。

 動くもので脅威になりそうなものはいない。


 よくよく見ると草むらには虫がいるし、上空を鳥が飛んでいるのが見える。


 細かいなぁ。なんというか執念を感じれるレベルですらあるよ。データでここまで再現するのって相当大変だったんではないだろうか。


 

 でも、僕にとっては嬉しい。

 こうやって自分で色々な所を見て回るのがこんなにも楽しいなんて。



 右手に林が見える。

 よし、次はあっちに行ってみよう!




         ◆ ◆ ◆




 只今、林の中。

 枯れ枝が落ちているのか、一歩進むとパキパキと音がしてくる。

 とっても楽しいね♪


 ガサガサと藪が揺れる。

 すわ、敵襲か!と備えるも、でてきたのはウサギだった。


 なんだー、ウサギじゃないか。

 モコモコの白い毛皮ですごいモフりたい。

 赤い目もキュートだぜ。

 

 頭の上にいるマーカーは黄色で『跳ねウサギ lv1』と書かれてる。


 えーと確か、緑がプレイヤー、青が住人、犯罪を犯すと住人プレイヤー関係なく赤になる。

 ノンアクティブ(攻撃を仕掛けない限り無害)の魔物も青だけど、アクティブ(向こうから攻撃してくる)は黄色になるんだっけ……。


 ……敵だこのウサギ!?



        ◆ ◆ ◆




 ウサギと見つめ合うこと10分。

 

 くっ、この可愛らしい見た目のせいで攻撃できん。

 向こうもこっちをずっと見てるだけだし。


 負けた気になるからなんか嫌だが、引き返そうかとも考え始めたとき、ふっとウサギの視線が逸れた。


 その視線を追うように振り返ってみると・・・


「キシャァァァアア!」

 蛇だー!


 当然のようにマーカーは黄色。

 『噛みつき蛇 lv6』という文字が目に入る。


 視線を戻すとウサギは文字通り脱兎の如く逃げていた。


「あ、こら!待ちやがれ!」

 僕も慌てて逃げ……追いかけた。

 


         ◆ ◆ ◆

  


 しばらくのち、僕とウサギは木陰でへたりこんでいた。

 ウサギの目には警戒心がない。

 一緒にいる間によく分からない友情?が芽生えたようだ。


 

 僕は考えた。

 スキル取ってたら別に噛みつき蛇から逃げなくても良かったんじゃね?と。


 というか、なんで一個しかスキル持ってないのに街の外に出ているんだろう。

 その一個も『値踏み』とかいうスキルだし。



 思い立ったが吉日、ということで『持ち物』からスキル石を取り出した。


 入っていたスキル石は全部で4つ。

 『魔力操作』を覚えられる『スキル石:魔力操作』

 『武装スキル』をランダムで覚えられる『スキル石:武装』

 『魔法スキル』をランダムで覚えられる『スキル石:魔法』

 『生産スキル』をランダムで覚えられる『スキル石:生産』


 『魔法スキル』を使うには『魔力操作』がいるって言ってたし、とりあえずは『スキル石:魔力操作』を使う。


 石が光ったかと思うと、体内にあるナニかが動く感覚を感じた。

 これがおそらく魔力というものなのだろう。

 

【スキル『魔力操作』を獲得しました。】


 よしよし、無事にゲットできたみたいだ。


 次は『魔法スキル』かね。


 たしか、火水風土木光闇の七つの属性魔法と回復や防御魔法などの無属性魔法があるらしい。

 


 レア度でいうと、

 火水風土木<無属性魔法<光闇<無属性のレア


 とのことだ。

 無属性のレアとは時間魔法、空間魔法みたいなもので、スキル石では覚えられないとのこと。


 住人で覚えている人がいるということだろうか。


 まあいいや。

 せめて、光闇とまでは言わないからレアな奴を引きたい所だなー。


 と、そこまで考えて『スキル石:魔法』を取り出そうとしたとき、



 くきゅるるる~~~


 

 となんとも可愛らしい音が辺りに響いた。

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