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ポーション騒動その①

詳しくは活動報告を見てもらえれば分かりますが、エルフの少女以降を書き直しています。


なぜかエルフ成分少な目になりました。




 六月中旬。本格的な梅雨の季節だ。

 最初は雨に濡れるなんてことなかなかできない体験で新鮮な気持ちだったけど、さすがにこうも続くとうんざりしてくる。


 外に探索に行く気力もなく、部屋のなかでのんびりするのもつまらない。

 結局、ポーションでも作るか、ということで落ち着いてしまう。


 料理がもっとできればいいんだけど、トムさんにつきっきりになってもらうわけにはいかないし、食材にも限りがあるわけで。


 この雨の中外へと出かけなければいけない冒険者という人達はすごいと思う。・・・そのせいか、風邪をひく人が増えて、りんごが忙しくなってるけど。



 はあ。しかも今日の午後はそのポーションのことで大事な話し合いがあるんだって。少し憂鬱だ。



      ◆ ◆ ◆



 りんごと二人で『ポーション屋』と書かれた扉をくぐる。


 アシュリーさんから指定された場所はここであってるはず。

 ・・・今日、呼び出しをくらった理由は単純だ。ポーションの供給過多の件だ。


 ただでさえワンネスト周辺の魔物は弱く、怪我もそんなにしないのに、りんごが回復魔法を安く売りだしたものだからポーションの需要はがた落ち。

 追撃と言わんばかりに僕がポーションを作り出したのと、トゥーラでも腕のいいポーション職人が現れたのことでワンネストのポーション業界は大変なことになってるらしい。

 ・・・ポーション業界と言っても、この町にはポーションを作れる人なんて一人しかいないわけだけど。



 

 

 ポーション屋の中で待っていたのは二人の人間。

 一人はアシュリーさん。僕たちをこの場に呼んだ張本人だ。


 そして、もう一人は・・・エルフ?

 髪の色はここら辺じゃ珍しい金色。その髪をストレートに伸ばしている。


 しかし、なぜか魔女のコスプレをしているんだろう?

 って、ああ。こっちの世界、コスプレみたいな恰好を大真面目にしてる人がそれなりにいるんだった。


 そんなことはさておき、その少女でなによりも目を引くのは透き通った青の瞳だろう。りんごの目がルビーみたいだとすればサファイヤだろうか。非常に美しい、そんな感想しか出てこない

 しかし、今はその目に不満をいっぱいにしてこちらをにらんでいる。頬をふくらませてるが、りんごより少し大きいくらいの外見も相まって子供が拗ねてるようにしか見えない。


 こうなった原因は隣のアシュリーさんの方だと思うんだけどな…。


「むー!」


 りんごさんや。あなたも敵愾心を出さない。せっかく年が近そうな子と会えたんだから・・・。



「では、人がそろいましたので話を進めさせてもらえますね。一応、現在の状況の確認からです。」


 まずは況確認。

 些細な部分での補足はあったが、おおむね知っている通りだった。



「・・・そして現状、作る量ではルファさんが、質では虎徹くんが上回ってます。

 ここまでは大丈夫ですか?」


 うなづく二人。

 りんご?話の途中からきょろきょろそわそわしてたよ?





「ギルド側からとしての提案なのですが、二つあります。

 まずはりんごさんには回復魔法をかける際の値段を上げてもらうこと、です。ここは譲れません。」


 まあ、妥当だろう。この場所(はじまりの町)からこんなものに慣れてしまったら冒険者たちの成長にもよくない・・・らしい。




「もう一つは、ポーションの品質をもっと上げてほしい、ということです。


 現在、ポーションの人気がない理由の一つに回復量が少ないから、というのがあります。ポーションは優れた回復手段ではあるのですが、ビンの形で持ち運ぶため、持てて2~3本です。

 一回100ちょっとしか回復できないのでは人気もでるわけがありません。」



「ちょっと待って!回復量を上げる、なんて簡単にできるものじゃないんだけど・・・。」


 ルファちゃんが勢いよく声を上げた・・・と思ったら尻すぼみに小さくなっていった。



 それにしても、回復量か・・・。そういえば昨日作った中に・・・。


「ですから、それについて提案が・・・どうしました?虎徹くん。」


 みんなに見えるようにそれを差し出す。


 それはビンにはいったポーション・・・ではなくて、ほかほかと湯気をのぼらせる大皿いっぱいの肉料理。


 昨日、薬草を使った料理ができないかと試行錯誤しているうちにできた一品だ。なんとHP300回復という追加効果を持つのだ。

 欠点としては冷めてしまうと途端に効果が落ちてしまうのと、味が微妙というところ。

 


「虎徹くん、これは・・・?」


 アシュリーさんが思わず、といった感じで声に出す。


 

 そしてアシュリーさんがだした結論。



「・・・虎徹くん、一般の冒険者はそんなもの持ち運ぶ余裕なんてないんですよ・・・。」


 ですよね!僕も説明してて気づいた!『持ち物』とかいう便利機能もってないと使えないって!



「さて、虎徹くんのことは一旦置いといて、ですね。

 話を戻しますが、二人には技術交換をしてもらいたいわけなんです。」


 技術交換?



    ◆ ◆ ◆



「やれやれ・・・。前途多難そうですねえ・・・。」


 あのあと、「そんなのする必要なんてないわ!」と言ってへそを曲げてしまったルファちゃんをなだめるため、アシュリーさんが戦線離脱。

 僕も酒場での仕事が近づいていたのでお開きとなった。


「まあ、僕はプレイヤーですからね。初めて一か月もたたない素人から学ぶことなんてないなんて思うのは普通なんじゃないですか?」

 

 今はギルドが閉まってからの空き時間だ。今日はトムさんもミレイさんも用事があるといって、ここにはいない。


「正直、虎徹くんを巻き込んだことは悪いと思ってるんですけど・・・。」


「いいんですよ。僕自身で決めたことなんですから。」



 そういって僕は一か月ほど前のことを思い出す・・・。



      ◆ ◆ ◆



 ちょうど、イベントが終わった後くらいのこと。



 開いたスキル枠どうしよう・・・。変なのを取得しちゃったらいやだし・・・。


 そうだ。ギルドの誰かに聞いてみよっと。



「新しいスキル、ですか?

 料理をメインにやっていきたいのなら『鑑定』とか『素材知識』みたいなスキルがいいと思いますよ。狙って取得するのはかなり難しいですけど。」


 手の空いてる人がアシュリーさんしかいなかったので、アシュリーさんのところに。


 『鑑定』か・・・。正直『値踏み』が使いづらいのもあって、あると嬉しいかも。


「そう言えば、虎徹くん。他の生産スキルに興味ありません?」


「他の生産スキル?なんでですか?」


「まあまあ。それでどうです?」


 生産スキルね・・・。鍛冶とか?あんまり興味ないな・・・。


「興味ないって顔してますね・・・。でも、あると便利ですよ?

 開いた時間の暇つぶしにもなりますし、お金もゲットできますし。」


「アシュリーさんにとっては後者の方が大事でしょうに。」


「ふふ。それもあります。私なんかは五つ埋まってるのでもう無理ですけれどね。あったらいいなあ、って思う時もあるんですよ。


 それに虎徹くんが取得してちゃんとしたものを作ってくれればギルドにとってもうれしいですし。」


 まあ、この人たち、昼間は暇そうにしてるしね・・・。 


「『調薬』なんてどうです?ポーションなんかを作るスキルなんですけど、薬草があれば始められますし、普通のポーションなら簡単にも作れちゃいます。ギルド的にもポーションはあって困らないので、作ってくれれば買い取ることができますし・・・。」


 んん?

 アシュリーさんにしてはしつこいような・・・。結構割り切った性格をしてるし、こうしつこく聞いてくるようなことはあまりしないんだけど・・・。


「なんか僕に『調薬』を取得させたい理由でもあるんです?」


「ううっ。分かりますか・・・。」

 


 もう、一か月近い付き合いになりますからね。


「・・・まあ、ギルド職員として知っておいた方がいい話です。この際なので話してしまいましょう。



 虎徹くんはワンネストのポーション事情を把握してますか?」


 ポーション?使ったことないから分からないけど・・・。


「今現在、ワンネストでポーションを作ることができるのは一人だけです。ルファちゃんというエルフの女の子で、とってもいい子なんです。


 ところで虎徹くん。ポーションってどうやって作ると思います?」


「たしか薬草を使うんでしたよね。

 ・・・お茶みたいにお湯に溶かす、とか?」


「大体正解です。

 薬草をすりつぶしたものをお湯で溶かす・・・言ってみればそれだけのことなんですけど、かなり難しいんです。

 というのも、薬草というのは一種類じゃないから、です。いくつかの薬草をブレンドして回復力を高める必要があります。

 一般的な組み合わせはレシピにも載っていますし、調薬のレベルが上がればなんとなくどれをどれくらい混ぜればいいのか分かるようになるらしいんですけどね。



 ルファちゃんはそのレシピを自分で見つけたんです。」


 ふーん。・・・ん?それって結構すごいことじゃあ・・・。

 


「すごいなんてものじゃないです。天才と言っても過言じゃないです。特にポーションにかけては。」


 天才、ね。


「でも、ルファちゃんの技術はここ数年でまるで成長していないんです。」


 え?


「つまり、考えられる可能性は二つ。

 商売敵がいないがゆえに技術の発展がおろそかになっているか、ルファちゃんが作る工程になんらかの問題があるか、です。」


 この町のポーションを独占しているからスキルを上げる努力をしなくてもいいし、同業者もいないから間違った作り方をしていても気づけない、と。


 

「ですから、虎徹くんが『調薬』スキルを取得してもらえれば、やる気を起こしてくれるかな、と。


 あ。別に無理はしなくてもいいですよ。スキル選択は個人の自由ですし、無理強いすることはできません。」


 その言い方はずるいですよ、やってほしいって言ってるようなものじゃないですか。


「それと、やっぱりポーションは不足がちなので虎徹くんが作ってくれれば輸送費は浮くんですよね・・・。」


 そっちがメインじゃないですよね⁉


「いやですねえ。さすがに冗談ですって。


 実際、『調薬』が一番いいと思いますよ?道具もギルドから貸し出せますし、『鍛冶』やら『木工』なんかと違って勉強することは少ないですし。


 ・・・まあ、ルファちゃん関連のあれこれに巻き込んでしまうかもしれないんですけど。」



      ◆ ◆ ◆



 結局、僕はあのあと『調薬』を取得。

 鍛冶なんかよりは面白そうだし、スキルではなくセンスがものを言うアクセサリーみたいなのは難しいと思うし。

 


 梅雨に入って外に出られなかったこともあって、予想より早くルファちゃんと同じくらいのポーションを作れるようになった。



 そんなわけで作戦決行となったわけなんだけど・・・。


「本人が嫌がってますからね・・・。」



 そうなんだよねえ。いくらプレイヤーとはいえ数年の時間を一か月で追いつかれたらいい気分はしないよね・・・。


「これでやる気をだして、成長してくれるならいいんですけど・・・。」


 正直、僕という同業者が現れて一か月たっても成長が見られないということは作り方に何らかの間違いがある可能性が高い。





「・・・よし。とりあえず、虎徹くんとルファちゃんには仲良くなってもらいましょう。」


次回、アシュリーさんsideで詳しく見ていきます。



トゥ-ラの町で起こったことについてはまた今度分かるでしょう。

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