始まりの街
前のエピソード――第2話 俺(魔王)が勇者に!
第3話 始まりの街
よし、身体に異常は無いな両手、両足はきちんとついてるし動かせる。
「ファイア」
魔法も使えるし特に問題は無いかな?
「よぉ兄ちゃん、あんまり見かけねぇ顔だな、どっから来たんだい?」
確か創造神?女神?から答え方を聞いてたな
「あぁ、そうなんだよ魔王城の近くの最果ての地に住んでいたんだけど独裁政治で逃げてきたんだよ。まったく嫌になるよ。」
「そうか、まぁゆっくりしていけ、なんだったらここに定住しちまえ!じゃあな!」
そう言ってガタイのいいおじさんは行ってしまった。
ちなみに俺のペットって誰なんだ?
「あの~もしかしてグラム様ですか?」
後ろから声をかえられる、振り返るとそこには黒髪でスタイルのいい女性が立っていた。
「あっ、やっぱりグラム様だ!その赤と青のオッドアイに白髪!やっぱりグラム様ですよね♪私です!バハムートです!今はルナと名乗ってます。これからもグラム様に仕えさせていただきたいと思いますがよろしいですか?」
・・・へっ?バハムートって性別あったの?
てっきり魔獣って性別が無いものだと思ってたんだけど、しかもこんなに綺麗な女性だなんて・・・割りと年が近いと思うけど多分あの女神様があえてそうしたのだろう。どうしよう、年の近いこんな綺麗な女性、耐性がないからどう接すればいいか、まったく分からない。
「あの~グラム様、やはり私ではダメだったでしょうか?私みたいなおっちょこちょいは、嫌ですよね・・・ごめんなさい。」
違う、そういうことじゃない!
俺は慌てて首を振って否定をする。
「そんなことは無いんだけど、ただあの、あんまりにも綺麗だったからどう反応していいのか迷ってて。」
そう答えるとルナ(バハムート)は嬉しそうにこちらを見ている。
俺は恥ずかしくなり顔が真っ赤になる感覚があった。
「嬉しいです。グラム様、私はついていってもいいですか?」
手をモジモジしながらこちらの様子を伺ってくる。
「もちろんだよ。これからもよろしくね。」
そう言って彼女に手を差し出す。
「はわぁっ!グラム様、そんな握手なんて!とんでもないです。」
「そんなことはないよ!これから一緒にいてくれるんだろ?だから、よろしくって意味も込めてるから。」
そういって彼女の手を握り握手をした。
「こちらこそよろしくお願いします。」
顔を赤くしてうつむきながら頷いてくれた。
「このあと、どうしようか?」
ルナ(バハムート)に声をかける。
「私はとりあえずギルドというところに魔王様と一緒に行ってくれって女神に言われました。」
ルナは手を握り直しながら女神様から教えてもらった事を教えてくれた。
「じゃあ、とりあえずそこに行こうか。」
「すみません、グラム様・・・場所がわからないです。」
ルナは申し訳なさそうに頭を下げている。
「そんな、ルナが悪いわけじゃないよ、一緒に街を見て廻って探してこうよ!そっちの方が何か楽しそうじゃん!」
そんなこんなで俺とルナ(バハムート)は街を散策することにした。
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路地裏に入って、しばらく行ってからルナに疑問に思ったことを聞いてみた。
「そういえば、ルナってお金とか持ってる?」
「いえ、特に預かっている物はないので、この身ひとつですよ。」
やっぱりあの女神様はあてにならない・・・
「じゃあ、とりあえずギルドの場所を聞いてお金に余裕が出来てから2人で街を散策しよう。」
ルナにそういうと喜んでくれていた。
ただ、ちょっと判断が遅かったかもしれない。少し気を抜いていたら、いつの間にかガラの悪い連中に周りを囲まれていた。
「よぉ、可愛い子ちゃん。彼氏が痛い目にあわせたくなきゃ俺達とイイコトしようぜ!」
ウォォォォッ!!!これが俗に言うならず者か!スゴッ!初めて見た!
「魔王様、コイツら殺していいですか?」
怒りを抑えられないのか小声で俺に聞いてきた。
「いいけど、殺すのはダメだからね。」
ルナはならず者にむかって歩いて行った。
「嬢ちゃん、俺達とイイコトする気になったのか?いいぜ楽しもうぜ。」
やばい・・・ルナの目がマジになってる。
「死ねぇ~!」
「ルナ、止めろ全力で殴りかかるな・・・」
嘘だろ・・・ならず者たちは微動だにしてない・・・マジか。
「しょうがないじゃじゃ馬な嬢ちゃんだな、だが、そんな嬢ちゃんを自分から挿れて挿れてっておねだりするように開発していくのも良いな、じゃあ兄ちゃん彼女もらうぞ」
ルナはこれから自分がどういうことをされるのか理解出来たのか涙目でこちらを見つめてくる。
おいおい・・・マジか補正したって言ってたけど力を減らし過ぎだろ!
「ルナ手を振りほどけ。サンダーボルト!」
そう言ってサンダーの最上位魔法を唱えならず者たちを無力化していく。
「ッッッッッ!」
ならず者たちは声にならない叫びをあげて倒れていく。ルナはならず者の手を振りほどいていたので被害はなく助けられた。
「怖かったよ(´;ω;`)魔王様~!」
ルナは泣きながら俺の胸に飛び込んできた。
「ごめんなルナ、怖い思いさせちゃって・・・とりあえず大通りの広場まで行こう」
そう言ってルナの手を握り大通りの広場にむかい歩き始めた。
「ルナ大丈夫?少しは落ち着いた?」
広場のベンチに腰を掛けルナの手を握りながら聞いてみる。
「はい、今は何とか落ち着きました。」
俺は魔力と力は両方前の世界のままだったが
どうやらルナは力が落ちている様だ。
「ルナ、俺は魔力と力は両方前の世界のままだったけどルナは魔力もさがってるのか?」
もしかしたらと思いルナに聞いてみる。
「どうなんでしょうブレス系の魔法が出来ないので・・・ちょっと試しに唱えてみますね
プロミネンス!」
おいおい、プロミネンスなんて爆炎魔法の最上位じゃ無いか!しかもかなり珍しい魔法で高い威力をほこる魔法でこんなところでやったらまずいって!
「ちょっとルナ!街中でそれはまずいって!」
言うのが遅かった・・・ルナは詠唱し終わっていた。
「大丈夫ですよ、ちゃんとコントロール出来ますから。」
そう言ってルナの手元を見るとピンポン玉サイズに抑えられたプロミネンスが発現している。
「・・・えっ、バハムートってそんな魔力あって制御能力あったっけ?」
ルナは少し考えていたが何か思い当たることがあったのか1人で納得していたのでルナにどういうことなのか聞いてみた。
「いや私、実はバハムート基準だと力が弱いんですよね・・・でも魔力は、スゴいんです!だからバハムート基準で補正させているのではないでしょうか?」
「なるほど・・・にしてもルナは魔力ハンパないな、あとどんな魔法使える?」
ルナは困った顔で頬を掻いている。
「実は私、バハムートのくせにプロミネンス以外回復魔法しか出来ないんです。」
なるほど・・・でもちょうどいいかもしれない俺は回復魔法は使えないからパーティーのバランスは、いいかもしれない。
「そっか、じゃあ今後の方針として俺が前衛でルナが後衛で回復役で行こう、ルナは俺が絶対に守るからルナは俺が怪我したら治癒してくれよ。」
ルナは首を振って
「何を言ってるんですか!何の為に私が転生したと思ってるんですか、今度は絶対に私がグラム様を守るんです。もう、守られてばかりは嫌なんです。」
泣きながらルナは俺に訴えてきた。
「ルナの気持ちはよく分かったよ、だからさルナ、俺が傷ついたらその傷を治してくれる人が必要なんだよ、絶対に仲間を死なせないって強い意志をもった治癒術士が、だからそれをルナに任せたいんだよ。ルナにしかこんなこと頼めないからさお願いだよルナ。」
ルナの手を握り顔を覗き込む。
泣き止んでくれたのはいいが笑ってるのか泣いているのかよく分からないクシャッとした顔でこちらを見ながら、まるで憑き物が落ちたかのように明るい声で
「分かりました。グラム様は絶対に私が守ります。」
と嬉しそうに言ってくれた。
「俺もルナの事を守るよ。だから2人で元勇者を倒してこの世界を救って女神を見返してやろうぜ!」
そう言って俺は立ち上がりルナの手を引き寄せる。
ルナはバランスを崩しこちらに抱きつく形になってしまった。
「はわぁっ!グラム様、すみません。」
ルナはオロオロとしている。
「気にしなくていいよ。改めてなんだけどこれからもよろしくなルナ?それともバハムート?俺は今度からはルナって呼んでいきたいけど、どっちで呼べばいい?」
呼び名を改めて聞くと嬉しそうに
「ルナって呼んでください。バハムートは前の世界の種族名ですから、ルナって呼んでもらう方が私の事を呼んでくれてるって分かるのでそっちの方が嬉しいです。」
と言ってくれた。
「じゃあルナ、今度はちゃんとギルドに行こうか!」
そう言って俺とルナはギルドへのルートを聞き2人でそこへむかって行く。