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「初心者VRMMO(仮)」小話部屋  作者: 神無 乃愛


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一弥(いちや)と周一郎 1

ちょいと書きたくなりましたので。

話としては183話のあと、191話までのどこかです。


 大学構内にある食堂で古瀬 周一郎がぼーっとしていると、他県からこの大学に進学してきた友人が声をかけてきた。

「古瀬、お前の知り合いって人が来てるぞ」

 現在、周一郎の周りはかなり騒がしい。それを理由に周一郎は大学を半分近く休んでおり、大学側でもそれを了承している。

 そして、もう一つ大学側で学生に徹底しているのは、「自称、古瀬 周一郎の知り合いを構内に入れないこと。古瀬 周一郎に会わせないこと」である。つまり、この友人の行動は少しばかりおかしいともいえた。

「名前は?」

 そう聞いてきたのは高校時代からの友人、柊 レイモンドだった。

「浅木さんって人。磯部さんの名前を出せば分かるはずだって」

 どちらの苗字にも周一郎は聞き覚えなどなかった。

「シュウは知らないようだ。あれほど……」

「んなわけないよ。あの人がそんな嘘をつくとは思えない」

「平野、お前はその人物を知っているのか?」

 声をかけてきた友人に、周一郎は思わず訊ねた。

「? うん。高校時代の先輩だった人だよ」

「おかしいだろ? 平野は初めてこの県に来たんだろ? 尚更シュウが知り合いになれる確率……」

「だって、その人有名なゲーマーだから、古瀬だってやってるしオフ会とかで……」

「俺は一度もオフ会とかに顔を出したことはない」

 レイモンドと周一郎の言葉に平野の言葉がしぼんでいく。

「分かった。先輩にそう伝えておく」

 平野はそれだけ言うと、食堂を出て行った。

「正面玄関にそいつはいたな。平野が何か言っていた」

 あとをつけていたレイモンドが帰って来て、伝えてくれた。

「……サンキュ」

 裏口から出るにしても、そのレイモンドが一緒でないと難しいかもしれない。周一郎はそう思った。


「いい度胸だな。古瀬 周一郎」

 サングラスをした男が、声をかけてきた。

「……いつ……」

「最初から裏口に俺は居たからな。表にいた浅木という男に捕まってたほうがよかっただろうよ。ジャッジと言えば分かるか?」

「!!」

 さすがに二人揃って固まってしまった。

 そうしている間にも、ジャッジは電話をかけていた。

「……やっぱりこっちに来たぞ。さっさと来い。……まぁ、お前が来るまで時間稼ぎはしとく。……ん? さすがにそこまでする予定はない。こいつらの態度次第だがな。それに俺はレイのほうに用事があるんだ」

「おれ……に?」

 驚いたようにレイモンドが呟いていた。

「不法侵入の件だな」

 電話を切り、ジャッジと名乗っている男がさらりと返してきた。

 その瞬間、レイモンドの顔が悔しそうに歪んでいた。

「略式で済んでよかったな。……俺としては拘置所もっと長くいて欲しかったんだがな」

 はき捨てるようにレイモンドに言い、ジャッジは周一郎へと視線を移した。

「本当にあれ(、、)に似てるんだな。やっぱり引き受けないほうがよかった」

「仕方ないですよ、ジャッジさん。まぁ、おかげで捕まえやすいと思うしかないです」

「イッセン、早かったな」

「まぁ、裏口利用するのは何となく分かってましたし? 正面には叔父さんとりりかに待っててもらいましたから」

 真ん中にいたんですよ、とイッセンと呼ばれた男が笑って言う。

「リュートさんたちまで巻き込んだのか?」

「叔父さんとりりかは自発的にです。前科が科せられたところで、もう怖くないそうですから。りりかは、誘発役になるか抑える側になるかは、この男の態度次第だったでしょうね」

「あ~~。間違いなく二人揃って前科つきになったな。裏口で正解かよ」

「ジャッジさんは優しいですね」

あいつ(、、、)を心配してくれてる人たちにを案ずるのは当然だろ? それにこんなふざけたことで前科が科せられたなんて知ったら、また落ち込むぞ」

「あははは。黙っててくださいよ。……ただでさえ俺ら自己嫌悪に陥ってるんですから」

「分からなくはない。俺も柊 レイモンドの方に用事がある」

「了解しました。まぁ、俺としては古瀬 周一郎さんと二人きりで話ができればいいんで」

 少しばかり狂ったような笑いを浮かべるイッセンが、周一郎を見つめてきた。

「あんたの家でもいいよ。それともホテル? どこでもいい。あんたと二人きりで話がしたい」

「断る」

「断るなら、ここであんたが流血するぐらい殴るつもりだけど」

「……脅迫か?」

「好きに取ればいい。警察に逮捕されるのはもう、覚悟してるし。親にもそう言ってきたし」

 何故、そこまでするというのか。それが顔に出ていたのだろう。イッセンが耳元でとある人物の名前を出す。

「分かった? さて、どうする?」

「大学構内で話そう」

 ホテルに連れて行くのも嫌だ。

「シュウ!」

「じゃあ、俺らも大学構内で話すとするか? 柊 レイモンド」

 ジャッジのその言葉を受けて、四人で大学構内へと戻った。そして、二箇所空いている場所を確保した。


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